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PETがん検査Q&A

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PETがん検査について

PET検査およびPET/CT検査とは?

PET(ペット、ポジトロン断層撮影)検査とは、ポジトロン(陽電子)という放射線を出す物質(放射性同位元素)を含んだくすり 注)(放射性薬剤)を注射し、そこから出る放射線をPET装置で検出することによってくすりの体内分布を画像化して病気を診断する検査法で、生体機能の「はたらき」を画像化します。

一方、X線CT(X線断層撮影)は、身体の外からX線をあてて通り抜けたX線を測定し、X線の影、すなわち臓器の「かたち」を画像化する検査です。

PET/CT装置はPETとX線CTを連結した装置で、くすりの投与後に、PET画像とX線CT画像を撮影します。PETで「はたらき」を、X線CTで「かたち」を画像化し、両者を組み合わせた情報が得られます。

PET検査に使用する放射性薬剤をくすりと表記しますが、必ずしも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧称:薬事法)上の医薬品を意味するものではありません。

ポジトロンとは?

ポジトロンとは、陽電子といって正(プラス)の電荷をもった電子のことです。通常、「電子」は負(マイナス)の電荷をもっていますが、ポジトロンはそれとは反対の電荷をもっているわけです。そこで、正の電荷をもつポジトロンと負の電荷をもつ普通の電子は、互いに引き寄せ合う性質があるために、ポジトロンはすぐに電子と結合します。この結合の瞬間に、ポジトロンも電子も消滅してしまいますが、この時、2本の放射線を正反対の方向へ放出します。この放射線をQ1に示している写真のような「PET装置」で検出することによって、ポジトロンを出す放射性同位元素の体内分布の様子を画像にするのです。

PET検査で使う放射性同位元素はどのようなものがありますか?

表のように、PET検査で使う放射性同位元素は、炭素、酸素、窒素といった身体を構成している元素です。わたしたちの身体に関係するさまざまな物質に放射性同位元素をつけることができます。PET検査で最もよく使われる18F-フルオロデオキシグルコース(18F-FDG)というくすりは、ブドウ糖に似た物質に放射性の18F(フッ素)をつけたもので、注射すると、ブドウ糖をよく使う、がん、脳、心筋などに集まります。

一方、どんな放射性同位元素も放射線を出し自然に放射能が減っていきます。放射能が半分になる時間を半減期といいます。PET検査で使う放射性同位元素は半減期が短いためすぐに減ってしまうので、原則として病院内にサイクロトロンという機械を設置して院内で製造されます。18F-FDGと一部の18F-アミロイドイメージング製剤は製薬会社から放射性医薬品として販売もされているので、PET施設はくすりを購入して使用することもできます。

18F-FDGを用いたPET検査は、全身でブドウ糖がどのように使われているかをみる検査ですので、検査の数時間前から食事や糖分の入った飲み物は避けていただきます。

PET検査で使う放射性同位元素

名称 半減期
11C(炭素) 20分
13N(窒素) 10分
15O(酸素) 2分
18F(フッ素) 110分

PET検査に用いられるくすりにはどのようなものがありますか?

人体に必要とされている酸素、水、糖、アミノ酸、脂肪酸、核酸の原料、神経伝達物質などに、ポジトロン核種を標識*した化合物が、PET検査に用いられるくすりです。

検査の目的に適したくすりを、静脈注射や呼吸により体内に取り込むことによって、脳、心臓、がんなどに集積した部分から出る放射線をPET装置で検出することで診断します。

ポジトロンという放射線を出す放射性同位元素をポジトロン核種と呼んでいます。「標識」とは、目印になるポジトロン核種を化合物の一部に組み込んだり、置き換えたりすることです。標識された化合物からは放射線が出ますので、これをPET装置で検出することができるのです。

PET検査に用いられる代表的なくすり

くすり 剤形 検査目的
8F-フルオロデオキシグルコース(FDG) 注射剤 悪性腫瘍、てんかん、虚血性心疾患、心サルコイドーシス、大型血管炎の検査
3N-アンモニア 注射剤 心筋血流量の検査
15O-酸素ガス 吸入剤 脳酸素消費量の検査
15O-一酸化炭素ガス 吸入剤 脳血液量の検査
15O-二酸化炭素ガス 吸入剤 脳血流量の検査
15O-水 注射剤 脳、心筋血流量の検査
11C-メチオニン 注射剤 腫瘍検査
11C-酢酸 注射剤 腫瘍検査、心筋機能検査
11C-コリン 注射剤 腫瘍検査
11C-ピーアイビー(PiB) 注射剤 認知症の検査
11C-ラクロプライド 注射剤 脳ドーパミン神経機能の検査
11C-フルマゼニル 注射剤 てんかん、脳神経細胞障害の検査
18F-フルテメタモル 注射剤 脳内アミロイドベータプラークの検査
18F-フロルベタピル 注射剤 脳内アミロイドベータプラークの検査
18F-フロルベタベン 注射剤 脳内アミロイドベータプラークの検査
18F-フッ化ナトリウム 注射剤 骨疾患の検査

PET検査に用いられるくすりはどのようにしてつくられるのですか?

PET検査用のくすりは、それを標識しているポジトロン核種の半減期(寿命)がきわめて短いので、病院内にある専用の施設でつくられます。ただし、18Fの半減期は約2時間であることから、18F-FDGは病院内でつくられる以外に、製薬会社からも供給されています。いずれの場合においても、サイクロトロンと呼ばれる装置でポジトロン核種を製造し、できたポジトロン核種を種々の方法でくすりの元となる化合物に標識して、目的の「くすり」をつくります。そして、純度や安全性などの品質を試験し、合格したくすりをPET検査に用いているのです。

PET検査は健康保険で受診できるのですか?

健康保険で受診できるPET検査の代表は18F-FDGのPET検査で、肺癌、大腸癌などのがん4 4 (早期胃癌は除く)と心疾患(心筋梗塞、狭心症、心サルコイドーシス)、てんかんおよび大型血管炎の診断が対象となっています。それぞれについて健康保険の適用を受けるための具体的な条件が定められています。詳細は検査担当医におたずねください。

認知症の検査や人間ドック等の健康診断で行われる18F-FDGのPET検査は健康保険の対象外です。

18F-FDG以外では15O標識ガスによる脳のPET検査、13N標識アンモニアによる心臓のPET検査も健康保険で受診できます。現在、18F-FDGと15O標識ガス、13N標識アンモニア以外のくすりを用いたPET検査は健康保険の適用対象ではありません。詳細は検査担当医におたずねください。

がんのPET検査では何がわかるのですか?

がん細胞は、増殖するために正常細胞よりたくさんのブドウ糖(グルコース)を必要とします。このためグルコースの代謝を診断するくすり418F-FDGを静脈注射すると、がんの病巣にたくさん集まります。集まったところから出る放射線をPET装置で体の外から検出することにより、がんの病巣を画像で診断することができます。

がんのPET検査は、①病巣が悪性か良性かの診断、②転移があるかどうか、あるとすればどこまで広がっているか、③治療後の再発がないかどうか、④病巣が治療に反応しているかどうかを調べることができ、治療法や治療範囲を決めるのに大変役立ちます。特に予想外の病巣が見つかることがありますので、治療方法・治療範囲を正しく決めることができます。

PET検査前の注意事項は?

PET検査の前は4〜6時間の絶食が必要です。午前中に検査予定の場合は、朝食をとらないでください。午後予定の場合は時間に合わせて朝食をとり、昼食は食べないでください。お菓子や甘い飲み物もとらないでください。なお、心サルコイドーシスのPET検査の前には12〜18時間の絶食が必要です。

糖尿病以外の常用薬は飲んでかまいません。

水や緑茶など砂糖の入らない飲み物は十分とってください。18F-FDGを注射する前後は、十分に水分をとって、余分な18F-FDGを尿に排泄しやすくします。

撮影前には排尿していただきます。筋肉を使うと、18F-FDGが筋肉に集まってしまうので、18F-FDGを注射した後は安静にして、撮影まで約1時間待機します。

胃や大腸のバリウム透視は、PET検査、とくにPET/CT検査の障害になるため、PET検査前2〜3日は避けてください。

ペースメーカーを装着しておられる方は、PET/CT検査によって影響を受ける可能性がありますので、お申し出ください。

その他、細かいことは医師の指示にしたがってください。

PET検査でわかるがんは?

PET検査が役に立つことが広く認められ、平成22年4月から18F-FDGを用いたPET検査は早期胃癌を除くすべての悪性腫瘍の診断が健康保険の適用対象となりました。ただし、健康保険の適用を受けるための具体的な条件が定められていますので、詳細は担当医におたずねください。

また、健康保険の適用対象とはなっていませんが、悪性腫瘍以外でも炎症性疾患や不明熱などの診断に役に立つと報告されています。

PET検査でわからないがんは?

PET検査ですべてのがんがわかるわけではありません。できる場所(臓器)と大きさによって見えないものもあります。

早期胃癌はPET検査では診断できないので、内視鏡(胃カメラ)検査をする必要があります。

前立腺癌・腎癌・膀胱癌は、もともと18F-FDGが集まりにくく、また腎から尿に排泄される18F-FDGと区別が難しく、PET検査で診断は困難なことがあります。肝臓癌も18F-FDGが集まらない例があり、PET検査で見えにくい場合があります。

がんではないかと言われました。PET検査は必要なのですか?

がんが疑われた場合には、PET検査が必要な場合と必要でない場合があります。その違いは、主にどの場所(臓器)の、どのような種類のがんか、そしてどの程度の進行度のがんかによって変わってきます。

まず、がんの種類によってはPET検査でよくわからないものがあります(肝臓癌や早期胃癌など;Q12参照)。したがってこのようながんにはPET検査は原則的に行いません。一方、肺癌や悪性リンパ腫など、転移が多くて全身のチェックが必要とされるがんの場合にはPET検査が有効です。

また、がん4 4 の進行度も関係します。多くのがんはあまり小さいとPET検査では検出できないので、評価には内視鏡や超音波検査、CT、MR検査など他の画像診断で十分です。ところが、ある程度進行したがん4 4 の場合には、リンパ節転移や遠隔転移など広い範囲の病気を調べる必要があり、このような場合にはPETが非常に役立ちます。

このように、PET検査が必要かどうかは様々な要因で判断する必要があり、一概には言えません。検査担当医にご相談することをお勧めします。

PET検査をすると、その他の検査は必要なくなるのですか?

PET検査はさまざまなことがわかる有能な検査法ですが、万能ではないと考えた方がよいと思います。

PET検査でくすりが集まるには、がん細胞がたくさんいなくてはなりません。たとえば、乳癌や前立腺癌の骨への転移の場合は、骨が溶けるのではなく、硬くなることがあります。がん細胞の刺激で骨がつくられて硬くなるのですが、この場合はがん細胞の数が少なくてPET検査ではっきりわからないことがあります。しかし、骨シンチグラムという検査でははっきりとわかります。また肝臓や腎臓のがんの場合は、がん細胞自体にくすりが集まりにくい性質がありますのでPET検査で見つかりにくいことがあります。この場合もMR検査などではっきりとわかります。そのほか小さながんでは、小さすぎてわからないこともあります。PETの専門家の先生は、このようなPET検査の弱点についても、よく知っています。PET検査だけで十分かどうかは、自分勝手に大丈夫と決めつけるのでなく、このような専門家の先生と相談してお決めになることをお勧めします。

PET検査の被ばくはどのくらいあるのですか?

PET検査では、放射線を出すポジトロン核種で標識したくすりを静脈に注射するか、あるいは呼吸によって吸入しますので、わずかですが放射線をあびます(=被ばく)。

たとえば18F-FDGというくすりを注射してPET検査を一回受けると、およそ3.5mSv(ミリシーベルト)になります。これは、人が地球上で普通に暮らしていて、大地や宇宙からの放射線、体内にある放射性元素などによって被ばくする平均的な線量である2.4mSv*の約1.5倍の量です。

また、X線CTを組み込んだPET/CT検査では、X線CTによる被ばく(5mSv〜14mSv程度)が加わります。

PET検査による被ばくではどのような影響があるのですか?

PET検査の3.5mSv(PET/CTの場合は8.5mSv〜17.5mSv程度)という線量では、急性の放射線障害が起きる可能性はいっさいありません。また、将来のがんの発生などを心配されているとしても、この程度の線量ではその可能性はほとんどないといえます。

国際放射線防護委員会によれば、1mSvの被ばくによって20,000人に1人の人が将来がんで死亡する可能性があるとされています。これはどんなに少ない放射線でもがんが発生する可能性があるという仮説に基づいて推定された確率ですが、実際にはこの線量で発がんが確認された例はありません。また、特定の人がそうなるという意味でもありません。結論としてPET(PET/CT)検査で受ける程度の被ばくではほとんど心配ないということになります。

一般に、放射線被ばくはできるだけ少なくするのが原則的な考え方です。しかし、医療の場合には、診療の結果、患者さんが受ける利益(検査によって病気の正確な診断や最適な治療法を選択できるなどの利益)が、放射線の被ばくによる害を上回ると医師が判断した場合には、特定の被ばく線量の限度を設けなくてよいことになっています。

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