ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)とは?
難治性がんの新しい治療法 浸潤がん、多発病変、再発がん、放射線抵抗性がん、手術不適応のがん、放射線治療不適応のがんなどが適応となることが期待されます。
QOL(生活の質)の維持に有利な治療法 - 治療は1回のみの照射(照射時間約30~50分)で完了
- 切らずに治療が可能
- 正常細胞へあまりダメージを与えないで、がん細胞を選択的に破壊
- 治療前に薬剤取込検査による適応判断が可能
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細胞単位のピンポイント治療 通常の放射線の3倍の生物効果を持つアルファ線とリチウム粒子がホウ素を取り込んだがん細胞のみのDNAを壊す。
(圖片來源:日商住友重機械工業株式會社)
BNCTの原理
BNCTに用いる“中性子”は組織を通り抜けやすく、体にほとんど影響を与えません。しかし細胞の中にホウ素が存在するとホウ素が中性子を捕捉して核反応を起こし放射線、つまりアルファ線とリチウム粒子という“粒子線”を発生します。
この“粒子線”の飛程は非常に短い(数マイクロメートル)ので、ホウ素を取り込んだ細胞の中にしかダメージをあたえません。従って、ホウ素薬剤をがん細胞に積極的に取り込ませることによりがん細胞のみを選択的に死滅させることが可能となります。
BNCTの歴史と開発
米国で戦前から戦後にかけて原理が生まれ、その後世界各地の原子炉で中性子を発生させて治療が試みられてきました。
BNCTのB、すなわちBoronとはホウ素のことです。ホウ素は無害の物質で目薬やうがい薬の成分としても知られている金属と非金属の中間の性質を持つ物質です。
がん細胞に取り込まれるホウ素を含む薬の開発とともに、日本はこの分野ではその最先端を歩み続けてきました。
夢のがん治療として、BNCTの病院での実施が切望されています。一方、現在、多くの原子炉は閉炉となり、原子炉を用いてBNCTを受けることは日本でも困難になりつつあります。
そのような背景から、病院に設置可能な「加速器」を用いた中性子発生装置が開発され、2014年、医療機関として初めて総合南東北病院に隣接する当センターに導入されました。
BNCTの治療効果、可能性と臨床応用の予定
BNCTは、正常細胞への影響が少なく、がん細胞だけを破壊します。下の写真はBNCTで耳下腺がんを治療した実例です。(大阪大学歯学部、加藤逸郎先生提供)
再発したがん組織が巨大化し、その一部は皮膚の外に露出しています。
がんがすっきり治って、さらに皮膚は元に戻っています!がん細胞のみが破壊され消失しています。照射の影響を受けていない皮膚組織は増殖し、正常な状態に戻っています。
BNCTの可能性
BNCTはこれまでの放射線治療と全く異なる画期的な治療法です。がん治療では、以前受けた治療の影響で、次の治療が実施できないということがしばしばあります。BNCTは細胞選択的治療であるため、正常細胞への影響が極めて少なくてすみます。患者さんはこれまでの治療歴に影響されず、非常に安全で効果の高い治療を受けることができるのです。
BNCT治療開始までの道程