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クモ膜下出血

レスリング女子でオリンピックを含む世界大会14連覇という偉業を達成し、国民栄誉賞にも輝いた吉田沙保里選手の父親が、今年3月、クモ膜下出血により亡くなられました。61歳という若さでした。
クモ膜下出血は発症すると、3~5割といわれるほど、死亡率が高いことが特徴です。クモ膜下出血には、決定的な予防法がありません。そこで、脳ドックや脳神経外科を受診して、あらかじめ病気に備えておくことが重要になります。

健康なんでも……

 クモ膜下出血は脳卒中の一つです。脳卒中には、クモ膜下出血のほかに脳出血、脳梗塞がありますが、クモ膜下出血には、ほかの二つと大きく異なる点があります。
 脳出血、脳梗塞は、血管が硬くなることや血管の詰まりが原因となります。これらは、生活習慣とも深い関わりがあります。
 それに対してクモ膜下出血は、脳を覆うくも膜とよばれる組織の下の血管にできた瘤(脳動脈瘤)が破裂することで起こります。しかし、この脳動脈痛がなぜ生成されるのか、はっきりした原因は分かっていません。このため健康的な生活を送っている人でも、クモ膜下出血を発症する可能性があるのです。
 ちなみに、クモ膜下出血につながる恐れのある脳動脈癌は、40歳以上では5%以上の人にあるというデータがあります。また、クモ膜下出血は、遺伝との関係が指摘されています。血縁関係のある近親者にクモ膜下出血の患者がいる人は、クモ膜下出血を発症する可能性が高くなるので注意が必要です。


至急、救急車を!

 クモ膜下出血は、ある日突然起こります。クモ膜下出血を発症すると、クモ膜下腔に血液がたまり、脳を保護している髄膜を刺激します。このため「金づちで殴られたような」と形容されるほどの激しい痛みとともに、吐き気や意識障害といった症状が起こります。
 こうした症状が起きたときは、すぐに救急車を呼びましょう。
 ところで、今までに経験のないような激しい頭痛が起きたが、短時間で治まったというエピソードがみられます。これは「警告発作」とよばれるものです。出血が比較的少なかったことが考えられますが、本格的なクモ膜下出血が起こる前兆ともいえます。そのまま放置しておいては危険です。必ず、医療機関で検査を受けてください。




クモ膜下出血の治療

 クモ膜下出血には残念なことに、病気の性質上、決定的な予防法はありません。  クモ膜下出血に備えるには、「警告発作」のような激しい頭痛を経験したことのある人はもちろん、経験したことがなくても不安な人は、まず、脳ドックや脳神経外科を受診して定期的に脳の状態を確認しておくことが必要です。  仮に、脳動脈癌が見つかった場合、癌の大きさや形の他、さまざまな条件によって癌の破裂リスクが検討されます。  薬物によって脳動脈癌を治療することは、現在のところできません。そこで、痛が破裂するリスクが低い場合は経過観察を続け、破裂リスクが大きい場合は手術療法が検討されます。  手術療法には、「関頭クリッピング術」と「血管内治療」があります。前者は、頭蓋骨の一部を外し、金属製のクリップで脳動脈癌の根元をはさみ止血を行なうもの。後者は、脚部からカテーテル (細い管)を通し、カテーテルからプラチナ製のコイルや特殊な薬剤を送り出し、脳動脈癌に詰めて止血するもの。病気の状態によって、どちらかの手術が選択されます。

-すぐに役立つ暮らしの健康情報-こんにちわ 2014年05月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載