健康情報 こんにちわ

 

相手の笑顔はわかる ―認知症の不思議―

認知症と診断された患者に対して家族や紹介者のなかには、患者本人は何もわかっていない、認知や判断能力がまったく失われていると考えてしまう人もいらっしゃるようです。
しかし、はたして本当に何もわからなくなってしまうのでしょうか?

認知症患者は何もわからない?

 認知症の高齢者は、自身の体力・知力の衰えから不安になり、また、感情をコントロールする機能が低下することから、ささいなことで泣いたり怒ったりします。さらに進行すると子どもや孫さえわからず、名前も忘れてしまうことすらあります。「そうなったらもう、何もわからないんだよ」と、認知症の人の家族や介護者は言います。
 確かに認知症が進むといろいろなことを忘れてしまったり、他者の表情から気持ちを読み取る能力が低下してしまいます。世話をする側も、笑顔でやさしく接しても何もわかってくれないと、がっかりしてしまうこともあるでしょう。
 ところが数年前に発表された研究によると、そうではなさそうです。

認知症であっても笑顔はわかる!

 その研究によれば、進行したアルツハイマー病の患者さんに、「笑顔」「泣き顔」「怒った顔」などの写真を見せて「この人はどんな表情だろうか?」と尋ねたところ、「笑顔」についてのみ、患者の大部分の人が認識できたといいます。
 相手の「今、楽しくてうれしい」という気持ちを笑顔から読み取る能力は、最後まで衰えないことがわかってきたのです。ということは、認知症の人に対しても介護者が楽しそうな笑顔で接することが、とても大切だということになります。  介護者が笑顔を失ってしまうと、患者もまた、不安な表情を浮かべます。介護する人の笑顔が患者のうれしい気分と笑顔を引き出すのです。何よりのクスリです。

-すぐに役立つ暮らしの健康情報-こんにちわ 2014年06月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載