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日本でもっとも多く発生しているがん「胃がん」

胃がんは、ピロリ菌を除去することでその発生リスクを大幅に抑えることができます。

そして、胃がんが発生したとしても、早期発見できれば、高い確率で胃がんを克服することが可能です。

ピロリ菌を除菌すると胃がんにならない

 ピロリ菌を発見したバリー・マーシャルというオーストラリアの微生物学者に2005年、ノーベル生理学・医学賞が与えられました。
 ピロリ菌の 「ピロリ」 は、「幽門」を意味する言葉です。ピロリ菌が胃の下部にある幽門に多く存在したことからこうした名前が付けられました。

 ピロリ菌の発見とその後の研究は、胃の医療にとって非常に重要なものとなりました。その一つは、治療後に再発が繰り返されることの多かった胃潰瘍に対して、ピロリ菌を除菌することで、病気の完治が見込めるようになったことです。
  胃がんとの関係でも大きな発見がありました。日本で行なわれたある研究では、2800人の男女を8年間に渡って追跡調査した結果、ピロリ菌感染者からは36名の胃がん患者が発生したのに対して、ピロリ菌の非感染者からは一人も胃がん患者が起きなかったのです。
  これまで胃がんは、生活習慣やストレスにその原因があるとされていました。しかし、ピロリ菌の研究が進むにつれて現在では、ピロリ菌の感染と生活習慣やストレスといった問題が複合したときに胃がんが起こるのではないかと考えられるようになりました。

胃がんを予防する

 胃がんに対処していくためには、まずは胃がんを予防することが大切ですが、残念ながら100%胃がんを予防することはできません。しかし、ピロリ菌の除菌と生活習
慣の改善、ストレス対策によって、胃がんになるリスクを大幅に減らすことができます。
  ところで、ピロリ菌の感染についてですが、実は感染経路がはっきりとは分かっていません。ただし注目しておきたい点があります。それは、ピロリ菌の感染は、ほぼ幼少期に起こること、そして衛生環境によって感染者の数に大きな違いがあることです。

 実際に日本では、上下水道の衛生が十分ではなかった時代に幼少期を送った50歳以上の人にピロリ菌の感染者が多くみられます。現在50歳を過ぎている人は、この点に十分な注意をしてください。

早期発見がなによりも重要

 胃がんは、胃の粘膜に発生するがんです。
 胃の粘膜は内側から「粘膜・粘膜下層・固有筋層・奨膜」という四つの層で構成されています。がん細胞が、粘膜下層まででとどまっていれば「早期胃がん」、固有筋層を超えているものは「進行胃がん」と分けられます。

早期胃がんか進行胃がんかは、胃がんになった方にとってたいへんに大きな意味を持ちます。というのは、進行度合いによって四段階に分けられる胃がんのステージのうち、早期胃がんはステージⅠに相当し、5年実測生存率(がんの治療を始めた人の中で5年後に生存している人の割合)が90%近くになるからです。こうしたことから、胃がんに対しては、まず早期発見がなによりも重要であるといえるでしょう。
  ここで問題になるのは、早期胃がんは自覚症状に乏しいということです。実際には胃がんになると、胃の不快感や食欲不振といったさまざまな症状が現れます。しかし、こうした症状は日常的に起こる他の胃の不調と区別がつきにくいため、ついつい放置されてしまいがちなのです。

胃がんを早期発見する

 先述したように、胃がんは、早期発見がなされた場合と進行してしまった場合とでは、大きな違いが現われます。
  胃がんを早期発見するには、定期検診が欠かせません。胃がんはとても早く進行することがあるので、1年に一度、胃部X線検査を欠かさないようにしましょう。 もしバリウムや胃カメラによる検査が苦手という方は、医師に相談してください。胃部X線検査の代わりとすることはできませんが、ピロリ菌に感染しているかどうかを検査することで、胃がんのリスクを調べる方法もあります。
  現在、胃がんの治療には、腹壁の切開を必要としない 「内視鏡手術」が取り入れられるようになりました。内視鏡手術は、身体への負担が少ないとても優れた手術法です。ただし、内視鏡手術が可能なのは、早期胃がんでいくつかの条件が満たされている場合に限られます。こうしたことからも、胃がんの早期発見に努めることは非常に大切であるといえるでしょう

-すぐに役立つ暮らしの健康情報-こんにちわ 2015年07月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載