健康情報　こんにちわ

 

現代社会でも結核は大きな脅威

現代型・都市型結核と呼ばれる結核が増えています。現代の結核の特徴としては、不特定多数の人が長時間過ごす場所での集団発生の報告が多数見られます。また、都市型結核の特徴として、若年層における＊り患率の高さ、住所不定者や外国人の感染の増加などが見られます。
＊り患率＝1年間に発病した　人口10万人あたりの患者数。

結核ってどんな病気？

　結核とは　「結核菌」という細菌が原因となって起こる病気です。
　 まず、肺炎のように臓器の炎症から症状が始まります。
　 結核の90％は肺結核ですが、結核菌は脊椎カリエス、結核性胸膜炎、腎結核など肺以外の臓器に病巣をつくる場合もあります。
　 初期の炎症が進むと、「化膿」のように組織が死んで腐ったような状態になります。その後、死んでドロドロになった組織が気管支を通して肺の外に出ると穴のあいた状態、空洞になります。空洞の中は空気や肺からの栄養もあるので結核菌はどんどん増殖します。空洞をもった結核患者が「感染源」になりやすいのはこのためです。
　 このような病巣からの菌が肺の他の場所に飛び火、あるいはリンパや血液の流れに乗って、他の臓器に結核を拡大することもあります。
　 やがて結核は肺全体、さらに全身に広がり、最後には肺の組織が破壊されて呼吸困難や、他の臓器の機能がおかされることで命までおびやかされることになります。

なぜ今、どんな原因で結核は増え始めた？

　明治時代から昭和20年代まで「国民病」と恐れられた結核は、50年前までは年間10数万人の死亡者が出た病気で、当時の死亡原因の第1位でした。それでも医療の進歩や生活水準の向上により、薬によって完治できる時代になりました。
　 そのため「結核はもう怖くない」、「結核は過去の病気」と考える人が増えました。しかし平成26年には全国で19、615人（人口10万対羅意率15・4）の人が新たに結核を発病、また、全国で2、100人の人が結核で命を落としています。結核は決して「過去」の病気ではなく、「結核は現代の病気」なのです。
　 結核は、感染しても、すぐに発病するとは限りません。普通は免疫の働きで発病を防ぐため、感染した人で一生のうちに発病するのは10人に1～2人程度と言われています。もちろん感染してすぐに発病することもありますが、何十年もの間、じっと休眠状態で、抵抗力が衰えたときに発病するというケースもあります。また、痰のなかに結核菌がなければ他者にうつる恐れはありません。ですから、結核患者だからといって必要以上に避ける必要はありません。
　 現代の結核は、不特定多数の人が長時間過ごす場所での集団発生の報告が多数みられます。一般的に、発病者と4～8時間、狭い空間内で近くにいると感染しやすいとされます。
　 特に、若年層におけるり患率の高さ、住所不定者や外国人の感染の増加など、大都市特有の課題も指摘されています。生活保護法に基づく保護施設や簡易宿泊所で結核患者が複数発生するなどで結核が拡大する「都市型結核」が顕在化しています。若い世代の増加は、偏った食事や、無理なダイエットによる免疫力の低下、さらに定期検診を受けないなども、理由と考えられています。
　 また、高齢者にも増えていますがこの場合考えられる理由としては、昔、結核に感染した人が高齢になり、身体の抵抗力が衰えたことや、その他の病気治療のための投薬などで免疫力が低下し、結核菌が眠りから覚めてふたたび結核を発病することが多くなっているようです。さらに、糖尿病や人工析、大きな手術は結核を発病しやすい要因となります。

 

 

結核にかかりやすい人

乳幼児や思春期

免疫力の弱い乳幼児は感染すると発病、重症化しやすい傾向にあります。また、さまざまなストレスにさらされる思春期も要注意です。

 

遺伝素因

結核に対する抵抗力は遺伝的なものということがわかってきています。

糖尿病や胃潰瘍ほか

糖尿病や胃潰瘍、胃の切除をしたことがある人は、結核を発病しやすいことがわかっています。ほかに、塵肺、腸のバイパス手術、人工透析を受けてる人、血友病の人なども発病しやすいようです。

 

ストレス

ストレスや不規則な生活は発病につながりやすいといわれています。

 

男女の比較

結核発病患者は、中年以前では女性がやや多く、中年以降は男性が多くなっています。

 

エイズ、HIV感染症

アフリカや一部のアジアの国々ではHlV感染による免疫力の低下が結核増加の原因となっています。

 

たばこ、その他

ヘビースモーカー、以前に結核になった人、BCG接種歴がなくてツベルクリン反応が陽性の人、身近に結核にかかった人がいる、などの場合は発病のリスクが高くなります。

結核への関心の薄れによる発覚の遅れと治療

　結核の初期症状をかぜと考えて放置したり、受診結果が見落とされたりして、診断までに時間がかかり、その間に結核が発病してしまうことがあります。診断が遅れ
て重症化し、周囲の人に感染させて、集団感染へとつながった例もあります。
　 かぜやたばこの吸い過ぎと思っても、早めにかかりつけ医を受診しましょう。早期発見で、病気も治りやすく、周囲の人にうつす恐れも低くなります。
　 長引くかぜは要注意です。結核をなくすためには、早期発見、早期治療で、感染を最小限に食い止めることが重要です。そのためにも、結核に対する認識を改めることが求められています。

－すぐに役立つ暮らしの健康情報－こんにちわ 2016年3月号：メディカル・ライフ教育出版　より転載