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関節の痛みから解放されるために― 人工関節について知ろう! 

関節を人工のものに置き換える、「人工関節置換術」を受ける人は、日本でも年々増加しており、2014年の調査では、10年前のおよそ2倍にあたる20万人近い人がこの手術を受けています。

割合でみると、人工関節置換術の97%は、膝関節(58%)と股関節(39%)で行なわれています。人工関節は、膝関節や股関節の痛みで悩んでいる方には、特に関心を持っていただきたいテーマです。

人工関節置換術とは

 

 股関節や膝、肘、肩の関節が、病気やなんらかの原因で変形・破損した。あるいは、骨と骨との間でクッションの役割をする軟骨が大幅にすり減ってしまった。こうしたケースでは、歩行や日常の動作がままならないほどの強い痛みが長期に渡って続くことがあります。

 関節治療は基本的には、関節組織を温存した状態での治療(保存療法)で進められます。しかし、保存療法では痛みの改善が望めない場合は、人工関節を使用した治療(人工関節置換術)が検討されます。

 人工関節置換術は、痛みの原因となっている部位を取り除き、金属やセラミック、ポリエチレンといった素材で人工的に作られた関節に置き換える手術療法です。この治療法は、直接的にその原因を取り除くので、痛みを取る治療としては、非常に大きな改善効果が見込めます。

 

人工関節置換術の実際(一般的な例)

 人工関節置換術を行なう前には必要とあれば、(むし歯を含めた)感染症を治療してから行なうことになります。関節は細菌に弱いため、感染症には細心の注意が必要となるからです。

 手術の2~3週間前からは、自分の血液を病院で貯血し、手術の際に行なわれる自己血輸血に備えます。

 手術では、変形した関節の骨を削り、そこに人工関節の固定部分を定着させます。この際、人工関節を骨に定着させる方法としては、医療用セメントを使用して固定する方法と、医療用のセメントを使わずに直接骨に固定する方法があります。これらは、骨の強度や様々な条件をもとに決定されます。

 人工関節置換術の手術は、膝関節であれば1~2時間程度、股関節であれば2~3時間程度とされています。

 手術後は、数日で初期のリハビリに入れるほど回復は早く、入院中に行なわれる日常動作の訓練を含めても、約1ヵ月で退院できます。

人工関節置換術の退院後

 退院後は、人工関節の経年変化や人工関節を固定した骨の変化を確認するために、定期的に検査を受ける必要があります。

 ちなみに人工関節の耐用年数は10~20年とされています。耐用年数に幅があるのは、使い方によって大きく変わってくるからです。

 人工関節にすることで、日常生活においては、ほとんどの動作を痛みを感じることなく行なえるようになります。徐々に散歩旅行、軽い運動といったことも楽しめるようになるでしょう。ただ、人工関節はあくまでも人工的に置き換えられた関節なので、その扱いには十分に注意しなければなりません。

 

人工関節置換術の費用

 人工関節置換術には、健康保険が適用されます。

 また、手術代金だけではなく入院やリハビリの費用を含めて、「高額療養費制度」を活用することができます(高額療養費制度とは、1ヵ月の間の治療費が一定額を超えた場合、その一定額と実際に払ったお金の差額が後で払い戻される制度です)。

 こうした医療制度を利用することで、8~10万円程度の自己負担額で人工関節置換術を受けることもケースによって可能です。

 

-すぐに役立つ暮らしの健康情報-こんにちわ 2017年1月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載