広報誌 南東北

 

甲状腺がん、口・鼻・喉のがん

種類の多い頭頸部がん 早期発見・治療でQOL向上

 頭頸部という聞きなれない言葉。簡単にいうと頭から鎖骨までの範囲を指し、呼吸や食事など人間が生きる上で必要な機能、発声や味覚、聴覚など社会生活に重要な機能が集中しています。この部分に障害が起きると直接QOL(生活の質)に影響が出ます。7月18日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院の今野昭義アレルギー・頭頸部センター所長が「甲状腺がん、口・鼻・喉のがんの早期発見と治療について」と題し講演した内容を要約し予防法などをおさらいします。
 頭頸部がんは頭の脳を除いて顔面から首までの範囲にできるがん。昨年当院で見つかった新患は147人で肺や大腸がんなどに比べずっと少ないが、甲状腺が39件で圧倒的に多い。ついで喉頭がん20件、唾液腺の耳下腺がん19件、舌がん16件、咽頭がん15件、鼻副鼻腔がん14件と続いている。鼻、口、のど(咽頭と喉頭)はそれぞれ繋がっており、呼吸や誤嚥防止、発声などの重要な働きをする。特に喉頭は空気の通り道(気道)を確保し、左右一対の声帯は肺からの呼気で閉じた粘膜を振動させる発声源、食べ物を飲み込む時は喉頭蓋が喉頭や声帯を閉じて誤嚥を防ぐ。粘膜が1㍉でも腫れると振動が変わり、声がかれたりする。風邪の時は二週間ほどで治るが、声がれが一カ月以上も続いたら何らかの疑いありで耳鼻咽喉科を受診した方がいい。
 喉頭がんは二番目に頻度の高いがんで喫煙者が大半。ポリープなら取れば治るが、数年放っておくと最後はがんになる。とにかく禁煙。飲酒も相乗的にリスクが高まる。低いガラガラ声、雑音の入ったザラザラした声の嗄声(させい)が一カ月以上続いたら専門家に診て貰うべき。小さいうちなら放射線と抗がん剤で治る。全体に大きくなったがんは放射線などで小さくして手術するが、食道の入り口まで広がると放射線治療は無理。喉頭を取らねばならない。
 鼻は長さ約10㌢ほどだが、冷たい空気に温度、乾いた空気に湿度を与えるエアコンの役割のほか臭いを感じる働きをしている。狭くできており鼻詰まりが起きやすい。片方が詰まれば片方が開くのが鼻のサイクルだが、片方の鼻詰まりが一カ月以上続くなら何かあると疑っていい。人間の鼻は退化して部屋が多く見える部分が少ない。目と脳の間に洞穴があり、分泌物が溜まって蓄膿症になったり、涙腺も鼻に流れるようにできているが、この穴には異変を知らせる機能がないため腫瘍ができてもすぐに分からない。CT検査と病理診断で突き止められるが鼻づまりに加え血が混じったらCTを撮ってほしい。早期発見が大事だ。
 口腔がんの中で最も多いのが舌がん。初期は自覚症状がない。舌に斑点ができたり、飲み物がしみる、歯と擦れると痛い、口内炎が続くなどの症状ならがんを疑ってもいい。小さいうちに放射線で切り取れば治る。進行すると潰瘍ができ、舌の動きが悪く話しづらく口が開かなくなったりする。舌は半分以上切除すると機能障害が起きるが、半分残っていれば言葉は大丈夫。問題は初期に首のリンパ節に転移しやすいこと。禁煙は言うまでもないが、口腔内衛生に気をつけ、入れ歯が合わなくなってきたようなら要注意。専門家に見てもらうことだ。
 耳下腺は両耳の前方にある唾液を作る臓器の一つ。耳下腺内に顔面神経が走り、顔が曲がると嫌われるが、神経移植すればいい。がんの発生頻度は低い。耳下腺腫瘍の中で約8割が良性。中でも多い多型腺腫は10年ぐらい後にがんになる。手術が第一選択肢。腫瘍の大きさや部位によって異なるが、小さいうちに見つけるのは難しい。
 甲状腺がんは、新陳代謝にかかわるホルモンを分泌するのど仏と胸骨の間にある甲状腺にできたがん。のどが腫れ、しこりができ、声が突然枯れたような時はがんを疑うべき。甲状腺にできる腫瘍の8割は良性で、がんでも進行が比較的遅い。乳頭がんが90%前後で比較的良性、ろ胞がんが数%、髄様がんは少ない。PETで見つかるのは小さいがんが多い。がんと分かったら早めに手術した方がいい。甲状腺の病気には甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドウ病、逆に身体機能が低下し、女性に多い橋本病がある。頸部エコーや血液検査すれば分かり薬物療法でホルモンの量をコントロールできる。がんかどうかは針を刺し細胞を調べれば分かる。とにかく頭頸部がんは早期発見、早期治療が最も大切だ。


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