広報誌 南東北

 

大腸がん最近の話題 ~早期なら直腸下部も手術可 普及著しい腹腔鏡下手術~

健診で早期発見、早期治療 予防の要は食生活の改善


福祉センター八山田の完成予想図
 日本人の死因トップはがんですが近年、食生活の欧米化で大腸がんに罹る人が増えています。食生活の改善で予防し早く見つければ100%近く完治もできます。9月19日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で寺西寧院長が「大腸がん最近の話題」と題し講演した内容を要約し予防法などをおさらいします。
 男性の2人に1人、女性の3人に1人はがんで亡くなっています。がんは他の病気に比べなかなか御し難く、治療技術が進めば心臓病や脳血管障害死が減り、がん死亡が増える構図です。一昨年の部位別で罹患数は胃―肺―大腸、死亡は肺―胃―大腸の順。男性は大腸がんが罹患・死亡とも3位だが、女性の罹患1位は乳がんで発見が早く死亡は5番目、1位は大腸がんです。
 福島県も全国とほぼ同じ状況ながら多少胃・大腸・肺がんの罹患割合が多い。郡山市は肺、胃がんに続き大腸がん死亡が3番目。人口10万人当たり33・7人で年130~150人死亡しています。
 米国ミネソタ研究による15年間調査で大腸がんの罹患率は同じでも死亡比率は無検診群を1とすると2年ごと受診群は0・96、毎年受診群は0・65で毎年受診群は死亡が少なく、がん検診の重要性が明らか。郡山市でも大腸がん検診受診が増え、毎年50~60人の大腸がんが見つかっています。数の割に死亡が少ないのは検診で早期がんが見つかり、早い治療で助かるからです。例えば平坦型早期大腸がんが内視鏡で見つかりポリペクトミーという切除術で焼き切れば1か月後には治ります。がんになるのは防げないが早期がんは治りやすいのです。平成19年度に当院で4059人がPET検診を受け、11人が大腸がんでした。1㎝以下が42・8%、1~2㎝が35・7%で2㎝以下が約8割、早期がんと進行がんが半々でした。2㎝以下は集積が難しいというが、早期がんもPETで見つけられます。
 大腸は盲腸から上行・横行・下行・S状結腸、直腸と管が長いためがんの場所により様々な手術方法があります。直腸がんだと多くの人が人工肛門になるのを心配します。我々はなるべく人工肛門にせず肛門機能を温存する努力をします。人工肛門になる場合は腹会陰式直腸切断術、ならない場合は低位前方切除術を行うが、がんから肛門までの長さが問題で人工肛門にするか、つなぐか難しく悩みます。
 排便は、食事をすると反射で腸が動き前日食べた物が刺激で押し出され直腸に便が溜まります。排便中枢を介して大脳に伝わり便意が起こると腹筋の収縮、横隔膜の下降で便を押し下げ内と外の肛門括約筋を緩ませ体外に排出します。外肛門括約筋は自分で締められるが、内括約筋は自分の意志で締められません。この括約筋機能を温存できずに手術で機能が損なわれるとがんはとれても出っ放しになります。だから昔は直腸の下方のがんはつなぐな、といわれました。大腸がんの8割がS状結腸、直腸周辺に集中、肛門に近い直腸は6割近いからです。でも今は手術の技術が進歩、肛門に近い下部直腸がんでも機能温存しての手術も可能になりました。ただ全てではなく早期がんが条件です。
 もう1つの話題は腹腔鏡下大腸がん手術。肛門から離れた小さながんは腹に5カ所ほど穴をあけ内視鏡を見ながら行い、切ったがんは10㎝ほどの傷口から出します。術後腸管麻痺の期間が短く、傷が小さく回復が早いため早期退院が可能。ただ習熟が必要で手術時間も長く出血すると危険で進行がんには不向きなのが欠点。でも最近は腹腔鏡下で手術、自動吻合器を用いて繋ことも可能になりました。当院では年200人前後のうち半分が腹腔鏡下です。
 転移、再発の治療も重要。化学・ホルモン・放射線・手術などがあるが、抗がん剤の進歩は著しく30年ぐらい前に比べ6~7倍効きます。再発で余命4~5カ月と言われたのが今は平均27カ月。化学療法は金もかかるが技術進歩で延命が可能になりました。再発しても完全に取れる手術が可能なら治すことが期待できます。当院にもある陽子線は転移・再発には効果があります。結腸がん手術後に肝転移の人が陽子線で15カ月無再発といった症例もたくさんあります。抗がん剤との併用効果かもしれません。治療はあきらめないことです。
 大腸がんにならないための注意はリスク要因をなくすこと。脂肪・赤身の肉を多く摂る人、肥満・運動不足、ポリープのある人は要注意。野菜は予防にいい。食生活に注意し検診などで早く見つけ早く治療することです。


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