広報誌 南東北

 

狭心症の話 動脈硬化リスク高いメタボ

生活習慣の改善が第一 減塩、魚の積極摂取、禁煙

 先進国の多くで死因トップの心臓病。食生活の欧米化に伴い日本でもがんに次いで2番目を占め、近年特に狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患が増えています。1月16日⑤に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院の小野正博心臓・循環器センター副センター長(循環器内科)が「狭心症の話」と題して講演した内容を要約し、治療法や予防法などを復習します。
 厚労省の人口動態統計(平成23年・10万人対)によると日本人の死因1位は昭和56年からトップのがん。2位は心疾患、3位が肺炎、4位が脳血管疾患です。うち心疾患は同60年に脳卒中など脳血管疾患を抜き2位となり同23年には全死亡の15・5%。世界の冠動脈疾患死亡率は東欧・北欧が上位で西欧・北米と続き日本は北米の5分の1の最下位。総コレステロール値は日本に住む日本人よりハワイ、それよりカリフォルニア州の日系人の方が高数値で死亡率もこれに比例し、民族や人種ではなく生活習慣によることを裏付けています。
 男性の平均寿命が平成7年まで全国順位1ケタ台(女性は現在も1位)の長寿県・沖縄が同12年に26位に後退、心臓病死が増えました。戦後米軍の進駐で真っ先に食生活が欧米化した影響です。日米を比較すると日本人のエネルギー摂取は総カロリーがほぼ同じなのに2000年までの40年間でブドウ糖が約7割減、蛋白質は微増、脂肪が3・7倍に増加。平均コレステロール値は男女とも220(㎎/dl)前後だった米国が、40年間で200前後に減少、日本は逆に180から200前後に上昇、特に女性が増えています。食生活の欧米化で育った年代が50~60歳になって心筋梗塞や狭心症に罹患した10数年前の沖縄が今、日本全国に広がりつつあります。
 冠動脈は心臓の筋肉、心筋に酸素と栄養素を供給する血管。3本あり心臓の周りを王冠のように巡ることからそう呼びます。この冠動脈の内壁に動脈硬化が起き血管が狭くなって血液が十分に送られず酸素不足に陥ります。酸素不足が一時的なのが狭心症。血栓などで冠動脈の血流が完全に途絶し、その先の心筋が壊死に陥る状態が心筋梗塞で前日まで健康そのものでも前兆なしで突然やってきます。
 狭心症の症状は胸が締め付けられる、押さえつけられるような痛み(みぞおち・左肩・あご・のどなどの痛み、動悸・めまい・呼吸困難が現れることもある)に襲われるが、普通は5~10分以内で治り回復します。冷や汗をかいたら心臓に何か起きた現れと疑ってみるべきです。治療しないで放っておくと冠動脈の内側にコレステロールなどがたまったプラークという血管の壁のコブができて狭窄がひどくなり心筋梗塞を起こし、命を落とす事もあります。
 狭心症や心筋梗塞にならないためには早期発見が一番。検査や診断も進歩し大腿部の付け根から入れていた心臓カテーテルは今、手首の橈骨(とうこつ)動脈からが主流。血管合併症の危険性が低く、患者さんの負担が軽くなりました。コンピューター断層撮影検査ではX線検出器を64列配置したMDCTがあり1回転で64枚、4回転で冠動脈画像を全て撮れ、カテーテルしなくても診断できます。
 カテーテル治療は風船で血管を広げていたのに代わり金属を用いた経皮的冠動脈ステント留置術が開発されました。しかし15%前後は網の隙間を縫って再狭窄が起こるので予防のため10年位前から抗がん剤を塗った薬剤溶出性ステントを使うのが主流。半永久的です。問題は金属が体に残ること。一定期間過ぎたらステントに代わる〝足場〟が消える生体吸収性スキャーフォールドが実験中で来年あたり登場するかもしれません。
 動脈硬化の最大の原因はだれも避けられない加齢です。2つ目は家族歴。男がなりやすく女性は閉経後に多い。3つ目は生活習慣で高血圧や糖尿病、肥満の人は動脈硬化が起こりやすい。水道管と同じでステンレスの方がさびにくい。血圧が上がれば冠動脈疾患の死亡リスクは高い。血圧も血糖値もコレステロールも低いほどいいのは確かで「ロアー・イズ・ベター」です。
 治療薬のスタチンはコレステロール低下に効果的だし、リポタンパクや特定保健食品など動脈硬化予防の研究開発も進んでいます。北極イヌイットの虚血性心疾患死亡率が低いのは不飽和脂肪酸を多く含む海の魚類やアザラシ肉などの食生活にあるといわれます。魚油EPAやDHAは中性脂肪を低下させます。わが国のEPA消費量が年々減っているのとは逆に動脈硬化性疾患死亡率は高くなり、いかにEPAが重要か分かります。
 内臓脂肪面積が100平方㎝超のメタボの人は心臓病や糖尿病の発症リスクが高く生活習慣の修正が必要です。①減塩②野菜・果物・魚の積極摂取③BMI25以下④適度な運動⑤節酒⑥禁煙―です。減塩6gというが、和食がいいのに塩だけ欧米に合わせるのはおかしい。10gまでならいいと思う。きちんとした生活習慣を10~20年守り続けられるかどうか。血圧高い人は早く薬治療を始めた方が長寿の例もあります。冠動脈疾患を予防するのは生活習慣が第一だが①リスクの自覚②禁煙③CTなどによる冠動脈検査④適切な薬物介入―です。


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