広報誌 南東北

 

高血圧症・糖尿病の予防 野菜―タンパク質―炭水化物の順

低GI値食で健康維持 よく噛み、ゆっくり、食物繊維を多く

 予備軍を含め糖尿病患者は2050万人、高血圧症は3000万人いると推定され年々増えています。6月19日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で樋口健弥同病院総合医療センター所長(総合診療科)が「食材と食べる順序~高血圧症・糖尿病予防のために」と題して講演した内容から予防法を学びます。
 食にまつわることわざは医食同源、腹八分目に医者いらず―などいろいろある。我々の体内を巡る血液は約5ℓで糖質量は紅茶スプーン一杯、たった5g。ご飯の糖分は軽く一膳(100g)でスプーン8杯、普通(150g)で12・5杯、どんぶり用(300g)で実に25杯分にもなる。食べ過ぎが悪いのは肥満から高中性脂肪、脂肪肝、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患などへとリスクが高まるからだ。ご飯など炭水化物からブドウ糖が作られエネルギー源になるが、余ったブドウ糖は中性脂肪になる。肉と動物性脂肪がいけないのではない。痩せればリスク要因は減る。
 食材の食べ順で太るのと太りにくい食べ方がある。同じ食事の家族内でも同様だ。野菜―タンパク質―炭水化物の順で食事の「野菜先」は血糖値の変動幅がわずかだが、炭水化物―タンパク質―野菜の「従来法」は、食事直後に血糖値が急上昇。ヘモグロビンA1cも1~2年後、野菜先の方が従来法より有意に低下する。同じ食事でも「野菜先」の食事の方が有効だ。血糖上昇が抑えられたのは野菜に含まれる食物繊維が糖質、脂肪、コレステロールの消化吸収を遅らせ、食後の血糖上昇を抑制したと考えられる。
 食材には食後すぐ血糖値が上がるものとそうでないのがある。炭水化物など食べ物は胃や小腸で消化、ブドウ糖として血管内に吸収され肝臓に運ばれる。糖分が血液中に増えると膵臓からインスリンを分泌。インスリンは脂肪合成を高め、脂肪分解を抑える。つまり組織で脂肪が蓄積されやすく太りやすくなる。炭水化物が消化され糖に変化する速さを表す数値をグリセミック指数、GI値というが、インスリンの分泌が少ない、分泌タイミングが遅い、作用の低下―などでうまく血糖処理ができないと血糖値が下がらなくなる。食後数時間過ぎて血糖値が下がらない状態が慢性的に続くのが糖尿病だ。
 健康維持には食後の血糖値が急上昇しない低GI値の食事や質が大事だ。食べる順番はまずサラダなどの野菜。酢は糖の吸収を抑える効果もありドレッシングもいい。次は味噌汁や納豆などの大豆食品、3番目が主食となる動物性たんぱく質、最後にご飯やパンだ。血糖値を上げないためには①よく噛む②ゆっくり③食物繊維を多く―だ。
 生野菜か温野菜か。ビタミンA・D・E・Kなど脂溶性ビタミンは温野菜、水溶性のビタミンCは生野菜がいい。A・C・Eには抗酸化作用がある。Aが豊富なのはニンジン、ホウレンソウ、小松菜などの緑黄野菜。Cは赤ピーマンやパセリ、ブロッコリーなど。Eはカボチャやモロヘイヤなどで血行を良くし脂質の酸化を抑制する。野菜ジュースには抗酸化作用を期待できない。新鮮な野菜食品がいい。
 「夜に食べると太る」は本当だ。BMAL―1(ビーマルワン)は脂肪細胞を作るときの重要なたんぱく質の一種。脂肪をため込む作用があり、体内リズムと密接な関係を持ち時間帯によって増減する。特に午後10時から午前2時ごろが最高で夜食べると太ることが分子レベルで分かった。朝・昼食を摂り過ぎても栄養分が脂肪に変わりにくく太らない。従来の食事を朝夕入れ替え朝5・昼3・夕2の栄養割合に変えるのがいい。食事は食べる順を意識してよく噛み、ゆっくりだ。



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