広報誌 南東北

 

薬の一生 ~吸収から排泄まで~

知っておきたい薬の効め 使用時の〝決まり事〟にも注意

 〝薬が効く〟というのは、ごく当たり前のことのように思いますが、そこに至るまでには多くの段階があります。まず体内に入り、入った後に目的の臓器で効率的に効果を現す必要があります。いつまでも体の中に残っていては害があるので速やかに出て行ってもらうことも大事です。人間の体にはたくさんの機能が備わっていますので、それらともうまく折り合いをつけていかないといけません。
 人体での薬の一生を見ると1番ポピュラーな飲み薬は口から入り、胃や小腸で溶けて吸収され、血液中に入ります(吸収)。そして血液に乗って肝臓を通って全身に運ばれ(分布)、それぞれの持ち場で効き目を発揮します。しかし薬はずっと体の中にいるわけではありません。実は効果が出始めると同時に、体の外にどんどん追い出されていきます。もともと人間の体には、『異物』である薬を分解して無害なものに変え、早く排泄しようという機能が備わっています。この分解・変化のプロセスを『代謝』といい、主に肝臓で行われています。壊された薬の多くは腎臓から尿の中に捨てられます(排泄)。
 これが典型的な薬の一生ですが、中には吸収されずに消化管の中だけで効くように肝臓で代謝を受けず、そのまま排泄されるように尿だけでなく便の中にも出されるように改良されたのもあります。また注射や座薬などの薬の形が違えばルートも変わります。薬がどうやって効果を発揮するのか、使用するときのたくさんの決まりごとは何のためにあるのか、ちょっと深いところをのぞいてみると、薬を少し身近に感じられるようになるかもしれません。

(参考:医学芸術社「臨床で出合う薬の基本をマスターしよう」 薬剤科 海老沼 加小里)

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