広報誌 南東北

 

重要な「セルフケア」口腔内は常に清潔に

治療前から実行でトラブル予防 肺炎などの二次感染防止にも


口腔ケアの大切さを指導する飯村歯科衛生士

口腔ケアの用品も目的によっていろいろ
 近年、がん治療の過程で発生しやすい口腔粘膜炎(口内炎)などの病気予防に、治療開始前からの口腔ケア実施が口内トラブル防止に効果あることが認識されつつあります。12月17日に南東北がん陽子線治療センターで開かれた「がんサロン」のミニ勉強会で、南東北医療クリニック口腔外科の飯村由佳歯科衛生士が「がん治療を受ける患者さんを支えるための口腔ケア」と題して話した内容を要約し、口腔ケアの大切さや自分でケアする方法などを探ります。
 口腔ケアとは、単に歯を掃除して虫歯や歯周病を予防するだけでなく、口そのものが持つ機能の低下や口腔内の病気発生を予防すること、また口腔内の病気から引き起こされる恐れのある全身疾患の予防をすることまでを指す。
 がん治療現場では、抗がん剤が多く使用され、口の中にできたがんに対して放射線治療も行なわれる。これらはがんに対し高い攻撃力がある一方、正常な細胞へも少なからず影響を与える。そのため治療が始まると口腔粘膜炎や味覚障害、口の中の乾燥などトラブルに悩むことも多く、実際に抗がん剤や放射線による治療では高い確率で口腔粘膜炎が発生する。
 しかし治療前から口腔ケアに取り組むと①口腔内の痛みなど病態の悪化を防ぎ食事が摂れるようになる②口腔内の細菌繁殖を少なくし、肺炎などの二次感染を防ぐ③唾液の分泌を促し、自浄作用を促進する④口腔内に残った食べカスや歯垢を取り除き、虫歯や歯周病を予防する⑤口腔内の不快感を除去し食欲が増進する―などの効果が期待できる。当院ではがん患者が治療を開始する前から口腔内トラブルの生じそうな箇所の治療や清掃などの専門的な口腔ケアを積極的に行なっている。
 医療者による専門的なケアと並んで重要なのが患者自身で行なう「セルフケア」。患者の状況に応じて介護者(家族など)の協力と連携も欠かせない。ケアで重要なのは口腔内を清潔に保つことで、口の中をよく観察し状態を把握することが大切。歯や舌などの汚れ具合、口の中の乾燥度合い、虫歯の有無や口腔粘膜の状態、痰が付着していないか―などが注意点だ。
 清掃で一番有効な道具は歯ブラシ。ヘッド(先端部分)の長さが「人差し指と中指の幅より少し短め」で形状の小さいものがよく、毛は長さが短めで硬さは普通か、やわらかめがお勧め。磨くときは歯ブラシを鉛筆と同じように持ち、毛先を歯の面に垂直に当て、軽い力で小刻みに磨く。粘膜の汚れを取る際はスポンジブラシを使うとよい。また舌に汚れが目立つ時には専用のブラシを使用。歯ブラシは舌の表面を傷つけるので使わない。口の中が乾燥している時にはジェル状の保湿剤などを指先かスポンジブラシに少しつけ、薄く延ばすようにして口内に塗ると乾燥を防げる。入れ歯(義歯)は必ず口から外し、歯ブラシか入れ歯専用のブラシを使いぬるめの流水で磨く。熱湯は入れ歯を変形させるのでかけない。市販の入れ歯洗浄剤に浸けるだけでは汚れを落としきれない。歯が無くても口の中は汚れるのでガーゼやスポンジブラシを使ってやさしくこするように清掃し、清潔を保ってほしい。
 家族などが介助してケアを行う時は、患者が安全で疲れにくい姿勢の確保が大切。可能ならしっかり座らせるか、15~40度の角度に体を起こした状態にする。上半身を起こせない時には、体または頭を横に向け、唾液などの水分を頻繁に取り除きつつ、奥歯から前歯に向けて磨き、誤嚥(飲食物や唾液が誤って気管に入ってしまうこと)を防ぐように心がける。
 口腔ケアのことで相談したい場合は南東北医療クリニックの口腔外科へ気軽に声をかけてほしい。
 当院では、患者同士や家族が交流を深め、がんの情報交換や気になること、困ったことを気兼ねなく話せる場として「がんサロン」を毎月1回開催しています。会場は総合南東北病院に隣接する南東北がん陽子線治療センター4階ラウンジで参加無料。次回は2月18日④でテーマは「がん放射線療法の副作用」です。

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