広報誌 南東北

 

"不動の精神"で「坂の上の雲のさらに上」目指せ

新年のごあいさつ 総合南東北病院 理事長・総長 渡邉 一夫


年頭所信を述べる渡邉理事長
 新年おめでとうございます。
 原発事故から3年10か月が過ぎ、あの大変なパニックから少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります。福島県を本拠地としてグループ全職員が結集し、今まで以上に充実した医療・介護・福祉を展開し、市民に安心を与えていることを誇りに思います。
 昨年も不安定な世界情勢が続きました。日本の近隣では中国との尖閣、韓国との竹島問題、それに輪をかけるように日本の集団的自衛権の閣議決定があり現時点でも一触即発という状況にあります。中国経済も崩壊が危ぶまれており、一時安定しているかのような世界経済がいつ脅かされるか分からない状況です。
 また不安を助長しているのが伝染病の拡大。特にエボラ出血熱のパンデミックが起きていることには大変な危機感を覚えます。鳥インフルエンザの流行などもいつ起きるか分かりません。日本では見られなかったデング熱の発生など全世界で多くの市民が恐怖に怯える事態にあります。
 日本の政治では12月14日の解散総選挙で自民党が圧勝しました。解散前のアベノミクスの金融緩和により株高、円安、インフレが加速し景気が好転しているかに思えますが、一部の中央企業の集中的な利益に繋がっているに過ぎません。どうしても「一般市民の声」や「復興」が置き去りになっているように思えてなりません。これから実効性のあるアベノミクスの第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」を新たに放っていくことを期待しています。それをしっかり見極め、我々の医療・介護・福祉分野で、マッチするところをおさえていくことが重要です。
 お金は金融市場に多く流れていますが、「起業をする人」「起業ができる人」があまりにも少ないと聞いています。お金を市場に流すだけでは景気は良くなりません。やはり第一線で活躍する者に新たに挑戦する気持ちがなければならないと思います。我々は今までも、そしてこれからも常にそのチャレンジ精神を持ち続けていきたいと思います。このような金融緩和の状況は、我々も含めチャレンジしようとしている人にとっては絶好のチャンスです。
 先般「成長戦略」の1つとして「東北地方に1校の医学部設置」が閣議決定され、我々南東北グループが立候補しました。残念ながら「教育機関を持たない」「借金が多い」などを理由に落選しましたが、医学教育を行うに当たってのインフラや組織力、提案した内容については今でも一番優位であると思っており悔いはありません。医学部設置については国内外においてまたチャンスがいつか来るはずです。まだまだあきらめていません。
 ただ足元もしっかりとみていかなくてはなりません。そのために南東北グループは、何をすべきか。安定した経営基盤を作ることで利益を出し、最新の機器購入や優秀な職員の採用に繋げることで必ずや良い方向に向かうはずです。
 南東北グループの現況と今後の取り組み方ですが①開院から2年5か月の新百合ヶ丘総合病院の医師が120人を数え、外来患者が1日800人に上り、入院も330床まで埋まって黒字まであと一歩となった②総合東京病院は昨年8月に第1期の増築棟が完成し250床から343床に増床。さらに公募の隣地も確保できそうで今年中には着工、さらに増床して最終的には500床規模で小児医療にも取り組む方針③本院に隣接する南東北BNCT研究センターは昨年9月に建物が完成、今夏から治験を本格始動する④昨年から建設中の本院管理棟は1月中に完成し、医局と管理部門が入る。移動後の空室については、患者さんの利便性を優先して考える⑤昨年10月にオープンした総合南東北福祉センター八山田の隣に学童保育、幼稚園、保育園を併設し、子供と障がい者と老人の一体的な施設を今年中に着工する。また新たな事業として老健と障がい者及び回復期リハビリを合築した施設建設なども検討⑦今年は首都圏などから福島県へ大勢の医師を確保するため全力を挙げる⑧海外から陽子線治療患者を受け入れるため海外への医療施設開設を検討する―。
 以上が直近の現況だが、南東北グループが困難を断ち切り更に上に登り詰めるには、まず優秀な戦略を立て、それを数字で示し、新たな目標を具現化。それを当たり前にできる組織を作ること。次に優秀な人材発掘と能力向上のためのキャリアパスを組み立て、優秀な人材は南東北グループの企画・立案に参画させ、経験を積ませること―です。
 施設の組織力は、一人ひとりの意識から生まれます。各職員が南東北グループの思いと一体となれるよう「理念、ビジョン、ノウハウ」を共有、グループの一員として個々の意識を高めてほしい。社会保障費の予算が枯渇している状況で今後、施設・設備・人員を有効活用するためには医療・介護・福祉の機関が合併・交流し、一極集中化していく国の政策に併せ、グループ内での更なる交流や経営の一体化を進め、経営の安定化を図ることが必要です。人材確保やそのノウハウは非常に重要な財産です。そのノウハウと地域性を加味して、優秀な人〝財〟確保の実践が必要です。
今年のスローガンは、今述べたように①グループの戦略作成と具現化②グループ各施設の組織力の強化とグループの一体化③グループの人材能力の開発と優秀な人材の抜擢④グループの人材確保のノウハウの共有と協働―です。
 今年も南東北グループの魂である「不動の精神」を持って使命感に燃え、奉仕の精神を尽くし大きな目標に向かって「坂の上の雲のさらに上」を目指し昨年にも増して頑張りましょう。本年もどうぞよろしくお願いします。


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