広報誌 南東北

 

腰痛・膝痛のお話 ―原因特定できない腰痛85% 腰の負担減らす工夫・改善が重要―

骨太にする食生活、転ばない筋力づくり 膝痛には関節機能の維持が一番の予防

 腰痛や膝痛は当人しか分からない痛み。自覚症状のある人の中で腰痛を訴える人は男性のトップ、女性も2番目でまさに国民病といわれるゆえんです。2月19日㈭に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で鹿山悟南東北医療クリニック副院長(整形外科)が「腰痛・膝痛のお話」と題して講演した内容を要約して治療法・予防法を探ります。
頭から背中、腰、足を繋ぐ背骨(脊椎)は頸骨から尾骨まで堆骨が重なった集合体。人間が2本足歩行になってバランスよく体を支えるため緩やかなS字カーブに変化してきた。腰椎は第1から第5まであり前に動いたり、後ろに反らしたりする繋ぎ目。特に骨盤との繋ぎ目の第5腰椎の負担が最も大きく、この周辺に病気が生じる原因が多い。
 腰背部痛の原因は脊椎そのものの疾患はじめ外傷や変形・分離症、腫瘍、リウマチなどの炎症、筋肉の痛み、骨粗しょう症による骨のつぶれ、大動脈瘤や尿路結石、十二指腸潰瘍、膵炎など内臓の病気や肺がんの一部など腰以外から来る痛みなど様々だ。
 腰痛患者の中で原因を特定し病名が付けられるのは15%ぐらい。85%は原因がはっきりと特定が不可能な、診断が難しい非特異的腰痛だ。これらの多くは椎間板や椎間・仙腸関節、背筋などの腰部組織に痛みの原因がある可能性が高い。例えばレントゲン撮影や検査でも「ここですよ」と特定するのは難しい。
 でも治療できないわけではない。例えば重い物を持上げようとして腰椎捻挫が起こる急性腰痛症、いわゆる「ぎっくり腰」は、息がとまるほどの激痛があるが、数日から1週間程度で痛みは軽快する。寝込んでは筋力が弱くなるので休むのはせいぜい2~3日。動ける程度の痛みなら普通の生活を続けた方が早く回復する。過剰な安静はよくない。
治療には筋肉の衰弱を防ぐためベッドでの運動療法や消炎鎮痛剤などの薬物療法、急な動きを抑えるためのコルセット、神経ブロックなどを組み合わせて行う。傷ついた筋肉や関節などの修復を待つということが治療の原則だ。
 原因が特定できず腰が重い、だるい、鈍い痛みなどが3カ月以上続く慢性腰痛症、いわゆる腰痛症は仕事の疲労や日常のストレス、冷えなどで症状が悪化することもある。運動療法や薬物療法が基本。これに整形外科や心療内科など複数の医師が連携するリエゾン療法、腰痛に対するとらえ方を変え生活改善する認知行動療法などがある。
 運動といっても特別な運動をすることではない。日常生活で腰に負担をかけないよう心がけること。例えば重い物を持ち上げる時はなるべく体に近づけ重心を低く、床から持ち上げる時は膝を曲げ、腰を下す。高い所に上げる時は台を使う。長時間立つ台所作業では片足を台に上げる―など。坐り方や靴の履き方などでも腰の負担を減らすよう考えることが大切だ。薬だけでは痛みはとれない。腰に負担をかけない動作の工夫、生活改善が腰痛の治療にもなる。
 骨粗しょう症は低骨量で骨組織が変化しスカスカの脆い骨となり、ちょっと転んだだけで骨折しやすく腰痛の原因になる。代表的なのは太ももの大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折。慢性腰痛がある時は骨腫瘍や脊椎炎などないか一度MRIで確認した方がいい。骨粗しょう症による骨折は寝たきりの原因(9・2%)になる。圧迫骨折はまず安静。痛みが取れるまで約3か月かかる。手術はいらないがきちんと治療する必要がある。
 骨粗しょう症の治療には食事・運動指導、薬物療法がある。食事はカルシウム(一日600㎎以上)、ビタミンD・K、タンパク質の積極的摂取など。牛乳や魚類、野菜、納豆などをバランスよく摂ると成人病予防にもなる。運動は階段の昇降や散歩、背筋の強化など転ばない筋力をつけること。治療薬の開発もこの10年進んでおり、薬は止めない、続けることが大切だ。
 腰痛とも関連ある膝痛の中で一番多いのが変形性膝関節症。ついで関節リウマチ、骨折や靱帯・軟骨・半月板損傷など外傷と続く。変形性膝関節症は軟骨がすり減り、骨と骨がぶつかって関節の変形が生じて炎症を起こす病気だ。年齢とともに増えるが、男性より女性、それも60~70代が多い。なりやすいのはO脚ぎみ、肥満の方。日本人は足の内側の軟骨が減りやすい。膝を動かした時に痛みが走ったり、膝の曲げ伸ばしが辛く正座できない、膝に水がたまり腫れる―などの症状が起こる。
治療は、ホットパックで温める温熱療法、筋力訓練、膝を良く曲げる可動域訓練などがある。サポーターや膝装具の使用、かっこ悪いかもしれないが杖を活用するのもいい。薬物療法では塗り・貼り薬、内服薬のほかヒアルロン酸やステロイド剤などの注射など症状に合わせ対処する。また人工関節置換術もあるが、膝を悪くしないためには関節に負担をかけない、関節本来の機能を維持する予防が大切だ。



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