広報誌 南東北

 

体にいい油、悪い油

脂肪酸の種類チェック、加工度低い油 酸化が大敵、鮮度の良さ重視

食べてはいけないマーガリン、ショートニング 積極的に摂りたいオリーブ油・亜麻仁油

 米国が3年後からマーガリンなど加工食品に含まれるトランス脂肪酸の全面禁止を発表、日本の食品業界に波紋を投げかけています。 6月12日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院総合医療センターの樋口健弥所長(総合診療科)が「体にいい油、悪い油~油は全て悪いのか」と題し講演した内容を要約し身近な油の摂り方を考えます。
 人間の体には60兆個の細胞がある。細胞や脳は油とタンパク質でできており、脳は60%が油。油を間違って摂ると早く認知症になったり、栄養分が上手く細胞に入らず弊害が起きたりする。 植物性油がヘルシーというのは〝平成の誤解〟で嘘だ。マーガリンやショートニング、ファットスプレッドにはトランス脂肪酸という〝毒〟が含まれ、悪玉コレステロールを増やす。
 油脂とは常温で液体ものが油、固体ものが脂。油はエネルギーが高く太るし、動物脂肪はコレステロールが増えて〝健康に悪い〟として植物油を勧めてきた。 でも炭水化物、タンパク質1gの熱量は4kcal、油は9kcal、ポテトチップス1袋で500kcalもある。最近は動物脂肪か植物油かより脂肪酸の種類で分類するようになってきた。 オレイン酸・リノール酸・αリノレン酸・パルミチン酸などの脂肪酸がいろんな作用を持ち、偏って摂ると病気になることが判ってきたからだ。
 単一脂肪酸の油脂は自然界にはなく、必ず各種脂肪酸が混じっている。「あぶら」の主成分は脂肪酸でグリセリンに3つの脂肪酸が結合。一般的に飽和脂肪酸と一価・多価不飽和脂肪酸の3群に大別、 さらに必須・非必須脂肪酸に分類される。
 飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は動・植物とも体内でできるので非必須脂肪酸と呼び、主に余剰エネルギーの貯蔵として機能する。
 飽和脂肪酸は、ラードやバター、牛脂などで常温では固形。一価不飽和脂肪酸はオレイン酸(オメガ9系)でオリーブオイルや菜種油などが代表。 多価不飽和脂肪酸はリノール酸(オメガ6系)で大豆油やコーン油、αリノレン酸(オメガ3系)でエゴマ油や亜麻仁油、魚油などが代表。 体内で産生できないため植物が産生した油を摂らねばならないので必須脂肪酸と呼ばれる。
 摂取された必須脂肪酸は体内でホルモン様物質に変換される。オメガ6系はγリノレン酸やアラキドン酸、オメガ3系は青魚に多いEPAやDHAへ代謝され、ホルモン様物質が作られる。
 リノール酸とαリノレン酸は相互に補完しないので別々に摂る必要がある。リノール酸からできるホルモン様物質はアレルギー、炎症、血液凝固、血管収縮促進作用が強く体に好ましくないのが多く、 αリノレン酸はこれらを抑制する作用がある。リノール酸はいわばアクセル、αリノレン酸はブレーキ役だ。
 リノール酸の摂り過ぎはアトピーや心疾患、脳血管疾患に影響する。αリノレン酸とバランスよく摂るべきだ。唐揚やフライ、天ぷら、スナック菓子、カップラーメン、ドレッシングなどにはリノール酸が多い。 ノンフライはカロリーが低く、リノール酸はコレステロールを下げるといわれたが間違い。約1週間でコレステロール値は一時下がるが、長期的にみると効果はない。 肝臓でブドウ糖からコレステロールが作られることも知っておくべき。リノール酸は必須脂肪酸だから必要だが、摂り過ぎると喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎などを起こしやすい。 これらにはリノール酸が少なくαリノレン酸が多いエゴマ油、シソ油、EPAとDHAを含む魚油などがよい。熱に弱く揚げ物には向いていない。揚げ物にいいのはラードなどのオレイン酸だ。
 食べてはいけない油はマーガリン、ショートニング、ファットスプレッドとこれらを含む食品。クッキーのサクサク感、フライのパリッとした感触はショートニングだ。 マーガリン類は10年経ってもカビも生えず腐りもしない。マーガリンの原料は大豆、菜種、コーン、パーム油など植物油が60%強、動物性油では魚油のほか豚・牛脂などで主に不飽和脂肪酸。 その不飽和部分に無理やり水素を添加して飽和脂肪酸に変えたのがマーガリン。酸化とは逆の還元をした状態で酸化しないわけだ。
 トランス脂肪酸は米国やカナダなど海外の多くの国が含有量表示を義務付けているが日本は規制がない。食用油は生鮮食料と同じで長く保存できない。トランス脂肪酸抜きの製品もあるが高価だ。 安価で酸化が進まないようにノルマル・ヘキサン(ベンジン)抽出や高温処理し保存剤などを添加するとトランス脂肪酸など有害物質ができる。「植物性油脂」「食用精製加工油脂」などの表示はこの製造法で作られた可能性が高い。
 本当に良い油は、植物油では「コールドプレス=低温圧搾」など加工度の低くできれば国産。割高感はあるが、鮮度の良い、貴重な油を少量の方が、結果として脂の摂りすぎも防げる。 炒めものはオリーブ油、ピーナッツ油、バター、ココナッツ油。揚げ物は米ぬか油、ゴマ油、ラードなどがお勧め。油は使い分けした方がいい。


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