広報誌 南東北

 

こどもの胸痛と失神 ~胸痛の大多数は「突発性」 多いストレスなどの〝成長痛〟~

姿勢がらみの失神、多くは良性 運動関連で前兆なしは要注意

 子どもが「胸が痛い」と訴えた時、親は心臓病などの疾患の前兆かと心配になります。学校の検診で子どもの不整脈が見つかることも多いとの報告もあり、気になるのは当然です。 8月21日(金)に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院の中澤誠小児・生涯心臓疾患研究所長(小児科)が「こどもの胸痛と失神」と題して講演した内容を要約し子どもの胸痛・失神などの対処法について考えます。
 胸痛の症例を紹介しますとまず8歳の男の子。「朝起きたら胸が痛かった。押されるような痛みが今も。胸の上の方と右・左も。体を捻った時や着替えの時に痛い」。 よく聞くと鉄棒の授業が始まり、上手くできないので放課後に猛特訓した。胸の表が痛いのは心臓ではない。中の心臓までには皮膚と筋肉と骨があり肋間筋・大胸筋を痛めたようだ。 あまりやったことがないのに急に一生懸命走って足の筋肉が痛くなるのと同じ理屈だ。
 14歳のサッカー少年。練習の時に左胸が重く感じた。その後何でもないので試合に出場。シュートしようと全力疾走したら左胸に今まで感じたことがない激しい衝撃があり倒れた。 間もなく意識は戻った。先生と両親が心配し病院へ。心電図は正常だが、トレッドミルで走る検査したら波形が変化、心筋虚血という心臓の筋肉に酸素が不足の状態。 左心室への血液量が不足し狭心症を起こす。このままだと心臓のポンプが働かなくなり、突然死につながる冠状動脈起始異常があると分かった。
 痩せ形の17歳男子。数日前から風邪気味で痰が絡んだので強く咳をしたら左胸が強烈に痛く息が苦しくなり救急外来へ。呼吸が浅く速い。大きく呼吸しても左胸が膨らまない、呼吸音も聞こえない。 レントゲンで見たら肺の一部が破れ、空気が漏れている自然気胸の状態だった。
 13歳の女の子。最近胸の真ん中や右、左上が2~3秒チクチク、ズキスギするという。部活はサッカー部。練習や試合では何ともなく、失神したこともない。筋肉の痛みでもない。 診察ではレントゲンや心電図、エコーも正常、運動負荷テストも陰性で原因が見当たらない特発性胸痛だった。「機能的胸痛」ともいい結構多い。10歳ごろから思春期、特に女子に多いのが特徴。 部位は左が25%、真ん中が半分。週に2回以上「ズキーン」「グーッ」と押されるような痛みがあるのが3分の2。痛みが短いのは病気がなく、長い場合は病気がある可能性あり。 要因がないというが、3割近くは家族の死や重篤な病気、事故、家族の離散、転校、ストレスなどを体験している。思春期以降はほとんどない。胸の周りは神経も一緒に成長するので成長痛ともいえる。
 次は失神の話。母と叔母に片頭痛がある11歳の女子。朝シャワーを浴びた後目がチカチカし、数十秒意識をなくした。身体所見、脳波は正常。日ごろ朝は苦手、乗り物酔い、立ちくらみが時にあった。 寝て起きる起立試験をしたら臥床時90の血圧が起立5分後70に降下、起立性調節障害(神経調節性失神)だった。
 14歳の男子。気温35度、湿度68%の炎天下でサッカー練習中、イオン飲料を飲んだが、あまりに暑いので頭から水をかぶった後しばらくして突然倒れた。意識がなく口から泡を吹き救急病院へ。 診察の結果、皮膚は冷たく、瞳孔は縮瞳、心拍数190/分。ラジエーター効果が薄く熱が放散できないうつ熱による強度の熱中症による失神だった。
 子どもの失神は様々ある。神経疾患では脳炎や髄膜炎、代謝性では水中毒、過呼吸症候群など。水中毒は汗をかいて水ばかり飲んでいると塩分が薄くなるのでスポーツ飲料などを補給するといい。 またアレルギーでは食物アレルギー、循環器系の神経調節性失神、薬物・一酸化炭素などの中毒、ヒステリーなどもある。
 まとめると子どもの胸痛は①多くは特発性。成長期のストレスに関するのが多い②動きが激しく胸の筋肉や骨・軟骨によるのも多い③本当の病気は少ないがあれば重大。 失神は①姿勢と関連の場合は良性が多い②運動に関連するもので前兆なしは要注意③感染症に引き続き起こるものは医師への受診必要―。心配なら一度医師に相談してほしい。


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