広報誌 南東北

 

患者さんとご家族に起こること 「がんサロンほっと」ミニ学習会

家族は「第2の患者さん」 ストレス認め、相談相手をつくろう

 「がん」が分かった時、本人はもちろん家族の衝撃は隠せません。時間とともに不安や恐怖が募り、ストレスが患者さんや家族を苦しめます。 9月16日(水)に南東北がん陽子線治療センターで開かれた「がんサロンほっと」で総合南東北病院緩和ケア対策室の渡邉祝子がん看護専門看護師が 「患者さんとご家族に起こること」と題して話したミニ学習会の内容を要約、心を守るためにできる事を考えます。
 「がん」の宣告や再発、病状の進行を知った時、患者さんは「まさか、どうして、間違いであって」と動揺。そして「がん」の事実に「なぜこんなことに、なぜ自分ばかり」と嘆き、 「無理した結果か」と後悔や不安などを抱えます。普通は2週間ほどで生活に支障がないほどに回復しますが、現実に適応するのが難しく眠れない、何もしたくない、絶望感―などから支援が必要な人もいます。 患者さんは興奮状態が続き頭痛や肩・首筋の凝り、食欲不振、胃痛、動悸、便秘、不眠、高血圧、疲れ―などストレスによる代表的症状に陥りやすくなります。
 さらに物事に集中できず何も手に付かない、趣味も楽しめない、やる気がでない、イライラしやすいといった反応が起きます。状況に適応するまでの心の動きとして当然。 「がん」を認めたくない、受け入れたくない気持ちがあります。「どうして自分だけ」という怒りや自責の念。それでも目の前の現実に向き合う苦しさ・葛藤を繰り返し徐々に状況に適応していくようになります。 ただ1人では難しく、医師や看護師など専門家の支援が必要になります。
 「がん」を知ったご家族の気持ちは患者さんと同じです。「まさか、そんなはずはない」と思い「治療はどうするの」と不安を募らせ、そして「なぜもっと早く気づいてやれなかったのか」と後悔。 医師でないので何もしてやれない無力感を持ちながらも「患者の役に立ちたい」「家族が弱音を吐いてはだめ」と考えます。患者さんと同様の感情を抱き、苦痛を共有しているため「家族は第2の患者さん」ともいわれます。 支援を必要としているのに家族は患者さんを支えることに懸命で自分の心のことまで考える余裕がありません。「1番辛いのは患者」と自分1人で抱え込んでしまいがちです。 ただ分かってほしいのは、家族が患者さんを心配するように、患者さんも家族が気がかりです。私の経験では大半の患者さんは一切「辛い」という言葉をいいません。「家族ががんばっている。辛いなど言えない」わけです。
 心を守るために出来ることは、まず自分にストレスがあることを認め、相談できる人を作り、1人で抱えこまないこと。自分や大切な家族が病気になればストレスを感じ、怒りや不安になるのは自然な心の反応です。 リフレッシュする方法を出来るだけ多く、幅広く持ちましょう。すぐ思い浮かばない時は歌や読書、散歩、人に会うなど何でもいいから好きな10項目を書き出し、自分のための時間を持つようにします。 病気のことを考えると自分を追い詰めてしまいます。究極のストレス解消法はよく眠ること。風呂に入って温まり、好きな音楽を聴き、深呼吸などしてリラックスした状態で眠りましょう。
 何をしても気分が晴れない、今まで楽しめたことが楽しめない、工夫しても一向に元気が出ない―など気になる時は専門家に相談し、一緒に心のケアに取り組みましょう。 医師は薬を使った治療を考え、臨床心理士はリラクセーション、私たちのような専門・認定看護師は日常生活支援・ケアをお手伝いします。1人で抱え込まないでください。
 簡単に出来るリラクセーションをご紹介します。吐くことから始める呼吸法です。楽な姿勢で「吐いて~吸って1回」「吐いて~吸って2回」と10回まで数えたら最初に戻り気分がゆったりしてきたら終わり。 ポイントは吐くこと。寝る前にお勧めです。

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