広報誌 南東北

 

花粉症の新しい治療

舌下に滴下の舌下免疫療法 副作用少なく症状改善傾向

 花粉症の時期になってきました。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散は全国的に少なめだが、東北地方は早く、やや多めという予測。1月15日(金)に総合南東北病院で開かれた1月医学健康講座で 同病院の今野昭義アレルギー・頭頸部センター所長(耳鼻咽喉科)が「スギ花粉症の新しい治療~舌下免疫療法」と題して講演した内容を要約し、花粉症の治療や予防策を学びます。
 鼻から吸った空気は喉や気管を通り肺にいきますが、鼻は複雑な構造を持ち非常に乾いた、冷たい空気もわずか10~15cmの鼻を通る間にほぼ体温まで加温し、加湿してきれいな空気を肺に送ります。 もう一つ重要な機能は、空気に含まれた様々な異物を取り込むフィルターの役目。刺激物を肺に入れまいとくしゃみで吹き飛ばし、鼻水で流し出し、長く続けば粘膜が腫れ刺激物を遮断します。 くしゃみ、鼻水、鼻づまりは、花粉症や鼻アレルギー症状で実は異物遮断の防御反射なのです。
 鼻腔の内側は血管が密集した粘膜に覆われ、3つのヒダが突出し、粘膜の下に鼻水を作る鼻腺が発達しています。大きな血管の海綿静脈の周りは平滑筋に覆われ、周りに交感神経があり筋肉のしまり具合を常に調節。 筋肉がしまれば中の血液が追い出されて粘膜がしぼんで空気が通りやすく、緩めば血液は熱くなって空気の通るスペースが狭くなります。左右どちらか片方の鼻が詰まるのは、筋肉が交互に常に動いているからです。
 異物は粘膜の粘液や線毛で取り込まれるが、1μ以下の異物は肺の方まで運ばれ、10μ以上は鼻の粘膜を覆う粘液に捕まります。スギ花粉は30μだから大部分は鼻と目で捕まり、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が起きます。
 体内に進入する異物に対し防御、増殖させないように体に有利に働くのが免疫。逆に反応が過剰に働いて自らの細胞を傷つけ、体に不利に働くのがアレルギー反応です。
 鼻アレルギーにはダニやペットの毛、フケなどの通年性と花粉などの季節性の2種類あります。花粉の飛散数や時期は地域で違うが、福島の場合スギ花粉は2月下旬ごろから。 全国的にはスギ花粉の後ハンノキやヒノキ、シラカバ、夏はイネ科、秋はヨモギやブタクサなどが飛散します。花粉症の原因植物は血液検査で分かります。 軽いスギ花粉は100km近く飛び、重い草はそう飛びません。温室でかかる花粉症の職業病もあります。
 症状は①くしゃみ、鼻水、鼻づまり②目のかゆみ・痛み、流涙③喉のかゆみ・痛み、咳―など。花粉症の主な原因は抗原抗体反応で、花粉などの原因物質(抗原)が鼻粘膜に付くと体内にIGE抗体ができ肥満細胞と結合。 再び原因物質が侵入すると情報が肥満細胞に伝わりヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、それが過剰に血管や神経を刺激すると鼻腺から鼻汁が出てくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状が出ます。 症状はIGE抗体量や原因物質の経路、肥満細胞の反応部位により起こる場所が決まります。くしゃみ・鼻水には抗ヒスタミン、鼻づまりにはロイコトリエンが効きます。
 治療は①抗原の回避・除去②薬治療③免疫療法④粘膜の切開やレーザーで焼く手術―など。抗原の回避はマスクやメガネなど限界もあります。日本人のアレルギー患者は通年性が23%、 スギ花粉が27%で複数のアレルギー保持を含むと全体で39%、実に10人に4人がアレルギー性鼻炎を持っています。ただ年代別では幼児から20代まではダニなどによる通年性。これが30代で逆転しスギ花粉が多くなります。 スギ花粉は自然治癒しないので若い時発症すると70~80代まで治りません。最近、複数のアレルギーを持つ人が増えているのも問題です。

痛みなく自宅で服用、薬剤減 1日1回、3~5年で治癒へ
 薬で効くのはステロイドですが、鼻噴霧用を処方通り使ってくれたのは4分の1、特に女性の使用が少ない。鼻に入れる文化がないのか敬遠されているのが現状です。
 注目されるのがアレルゲン免疫療法。スギ花粉症には、以前から皮下注射がありましたが、1昨年10月から「舌下免疫療法」が始まっています。 当院で30~40人、全国で3~4万人が治療を受けていますが、副作用が報告されたのはこれまで3例だけです。
 アレルギーの原因となるスギ花粉エキスを口内に計画的に投与、体をアレルギーの原因物質にならすことで症状を和らげる療法です。1日1回エキスを舌の下に滴下し2分保持し飲み込む。 5分間はうがいや食事もダメ。これを2週間掛けて徐々に増量し、その後は自宅で服用、3~5年続けます。皮下注射と違い痛みがなく、自宅服用で症状改善、薬の削減できるのがメリット。 ただスギ花粉でない人、重い喘息・がん・免疫系疾患がある人は治療を受けられません。服用前後2時間の運動・入浴規制など条件もあります。対象は12歳以上ですが、将来5歳まで引き下げられると思います。 昨年10月から通年性ダニの治験も始まっています。重篤な副作用が絶対ないとはいえませんが、状況や条件などをよく理解したうえで相談してください。


トップページへ戻る