広報誌 南東北

 

最新のがん治療BNCT治験開始

30年までに目標24症例


記者会見で概要説明する渡邉理事長(中央)ら
 脳神経疾患研究所の南東北BNCT研究センターが核分裂を利用したがん治療法「ホウ素中性子捕捉療法」の有効性を検証する第Ⅱ相治験を始めました。 民間医療機関での治験は世界で初めて。渡邉一夫理事長らが2月25日に記者会見し概要を説明しました。30年までに24症例を目標に行い、薬事承認申請を目指します。


BNCT治療室
 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、ホウ素を含む薬剤を患者に投与、がん細胞に取り込ませたうえ加速器で発生させた低エネルギーの中性子を照射。 核反応によりアルファ粒子とリチウム粒子が発生、がん細胞だけを内部から破壊する全く新しいがん治療法です。 中性子は永年、京都大学原子炉実験所を中心に原子炉から取り出して研究してきましたが、小型加速器の開発により病院などでも治療可能な状況に進展。 しかも正常細胞を殆ど傷つけないことから転移や再発がんに有効ではないかと期待されています。
 平成20年に陽子線によるがん治療システム導入で成果を上げている当財団は、BNCTが次世代の再発・難治性がん治療を担えると判断。 東日本大震災の復興事業として福島県の公募に応じ、24年から「BNCTによるがん治療機器の開発・実証計画事業」に乗り出しました。総事業費は約70億円、うち43億円が国・県の助成金。 平成26年秋までに同研究センターの施設(地下2階・地上5階建て)を完成させるとともに京都大学と住友重機械工業が開発した加速装置「サイクロトロン」を設置し、機器の性能試験を続けてきました。 このほど条件が整い、第Ⅱ相治験実施までにこぎつけました。
 今回の治験は、新薬を作るステラファーマ(大阪市)、機器を開発した住友重機械工業の依頼によるもので、すでに京都大学原子炉実験所などで安全性などを確認する第Ⅰ相治験が行われてきました。 第Ⅱ相治験は約1年半にわたり、治療が困難とされる悪性の脳腫瘍の中で最も症例数が多い「再発膠芽(こうが)腫」の有効性を検証します。 治験は国立がんセンター中央病院、京都大学原子炉実験所などとも協力して行い、検証します。症例は24症例を目標にしています。
 記者会見では渡邉理事長はじめ高井良尋南東北BNCT研究センター長、成田善孝国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科長、浅野智之ステラファーマ社長、兼重和人住友重機械工業常務執行役員産業機器事業部長らも同席。 渡邉理事長は「難治性の再発がんにも効果が期待され、実用化できれば世界の患者にとって朗報だ。安全で安心な最先端医療の福島県をアピールできる」と述べました。




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