広報誌 南東北

 

肥満を再度考える -食事を見直そう-

高血圧リスク高める腹部肥満 食物繊維、短鎖脂肪酸で抑制

「野菜先」で糖吸収遅らせる作戦 白米を玄米か麦飯に転換も一策
 肥満は生活習慣病の要因といわれます。わが国の死因第2位の心疾患、第3位の脳血管疾患はどちらも動脈硬化や脂質異常症が危険因子ですが、その全てに肥満が関わっています。 2月19日(金)に総合南東北病院で開かれた2月医学健康講座で同病院の菅野惠心臓・循環器センター長(心臓血管外科)が「食事で若返り」と題して講演した内容を要約し、食生活の見直しなど肥満予防策について考えます。
 突然ですが自分の腹囲や肥満指数のBMI値を知っていますか。肥満は糖尿病だけでなく腎臓病や高血圧、心筋梗塞、痛風、悪性腫瘍、認知症など11もの病気が関係しています。アルツハイマーの66%は肥満だといわれます。
 肥満は喫煙と並ぶ最も重要な原因でありながら最も見過ごされてきた疾患。若年時(60歳未満)に発症した循環器外科疾患は肥満が関連、それも男性の腹部大動脈瘤は、例外なく喫煙の腹部肥満者です。 それらの糖処理能力を調べると糖尿病は極々小数。昔から糖尿病に大動脈瘤が少ないのは謎でしたが、インスリンによるもので分泌のピークが後から遅れて出てくる型でした。 日本人は欧州人より「インスリン分泌が少ない」といわれたが、それはウソ。後から出てくるのが多いんです。インスリンの出過ぎは毒です。高血糖だけでなく、高インスリン血症もまた問題です。
 肥満はBMI値(体重を身長の2乗で割る)で22.0が標準だが、決して長生きするわけではありません。日本人の体格の変化をBMIでみると男性は昭和30年代前半から数値が上昇傾向だが、 20代女性は戦後間もなくから下がり続けています。男性は外食が多かったのでしょう。
 内臓脂肪面積も大事。日本人のその面積は100を超える時、男性の腹囲は85cmぐらいが平均なので腹囲で推測できます。ただ腹囲が84cmでも内臓脂肪面積が100超の場合もあり、BMI23以下でも決して安全ではありません。 内臓脂肪が小さい時はホルモン分泌器官として糖尿病抑制の働きをするが、大きくなると動脈硬化や高インスリン状態を作り、高血圧などの悪さをします。BMIが25未満でも腹部肥満があれば高血圧を生じることが多いのです。
 健康的に痩せるメカニズムでは植物繊維が非常に大事。食物繊維は消化管の中で消化されず大腸まで達します。腸内で発酵する短鎖脂肪酸が食欲を抑え、それが脂肪の肥大化を防ぐなどの機能が明らかになっています。 小腸のある種の細胞が反応し分泌される「痩せるホルモン」のGLP-1は脳に働いて食欲を抑制。青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサ塩酸)などオメガ3系の不飽和脂肪酸は肥満を抑えます。 エゴマやクルミもαリノレン酸が多く、特にクルミはオメガ3系で断トツの含有量。これら3系の脂肪酸は肥満を抑制しインスリン感受性を改善します。 ある実験でラードが多い脂肪食と魚油が多い脂肪食をマウスに食べさせた結果、ラード組は太ってインスリンが高くなり、魚油組は痩せました。腸内細菌の違いだそうです。
 では太るのはカロリーか炭水化物(糖質)か。摂取カロリーと消費カロリーの差で太るのとホルモン説(インスリン)があります。筋肉に使われない場合は脂肪に蓄えられます。 ホルモン説有力の基になったイスラエルのダイレクト試験は、BMI27以上の肥満者を3組に分けて減量食を比較したもので結果は「カロリーは気にせず糖質だけを控える」方が「油を控えてカロリーも控える」方より痩せました。 やはり糖質なんです。食べ過ぎていた糖を控え、昔の日本人の糖の摂り方に戻した方がいいようです。一般家庭が3食白米になったのは1950年代後半。それ以前3食白米は裕福な家庭でした。 これから摂り入れなければならないのは植物繊維、オメガ3系・6系の脂肪酸です。
 生活習慣病の共通項目は血管の病気、食の異常による肥満。多くの人が「自分は異常と認識していない」ことで、もう1つの問題は目立たない腹部だけ肥満です。糖質過剰の問題は避けて通れません。 全くの私見だが、2004年に全国12位だった福島県の肥満者は8年後に4位に急増しています。肥満の患者さんに聞くと「米大好き」でご飯から食べる人が多いようです。 今の白米は精米が進み、食後血糖値がサラダ先や玄米食より早く30分でピーク、つまり砂糖並みの場合があります。糖質吸収の速さはGI(グライセミックインデックス)で表すが白パンが90~100、白米70~80、玄米50~60。 茶碗1杯の白米が角砂糖14個分で白米1杯ごとに糖リスクは11%増えます。糖質の吸収を遅らせる作戦が必要です。
 つまり「野菜先」ダイエットです。最初に野菜を食べ、次いでタンパク質、そしてご飯やイモ、カボチャ、饅頭でもいいですが糖質、いってみれば懐石料理的食べ方です。 膵臓に負担を掛けないためにも白米を麦か玄米に変えるのもいいです。それが福島県の農業を支える最良の方法かもしれません。福島県人にお勧めです。 とにかく自分に合った方法を見つけ、食後血糖変動を少なく、糖質過剰摂取を確認することです。


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