広報誌 南東北

 

【特別寄稿】持続可能な医療を目指して


総合東京院
リハビリテーション科センター長
宮野 佐年
 最近の医学の話題は、オーダーメードのがん治療や再生医療であり、iPS細胞の実用化などリハ医療にも大きな関連があります。 悪性腫瘍や難病、障害を持つ多くの人たちも今後に大きな期待を寄せています。
 ところが最近の超高齢化や医療技術の進歩による医療費は年々著しく高騰しております。 厚労省の統計でも医療給付費は2014年の40兆円から2025年には54.4兆円に膨らみ、介護費用は8.4兆円から21兆円になると予測されています。
 これらの財源が確保できなければ、世界に誇る日本の医療制度は持続可能ではありません。 ヒトは病気や怪我をしたら病院に行き、治療し、そして医療費がかかります。
 現在の医療費は非常に高額となっており、世界の先進国はそれぞれ公助の制度として、医療保障制度を作っています。 ドイツ、フランス、日本は社会保障方式をとっており、イギリス、スウェーデンは国民保険方式です。
 アメリカは65歳以上の高齢者と一部の低所得者を対象とした保障制度があるのみで他は民間保険です。
 ドイツは医療保障を社会保険として設立し、保険料を主要な財源とし、それぞれ独立採算制で収支が厳しく管理されています。
 イギリスでは第二次世界大戦後に全国民に対して国営の医療保障制度が作られ、ゆりかごから墓場までと世界がうらやむ制度でしたが、 1980年代に入り経済の停滞により、医師や病院へのアクセスが極端に悪くなっています。
 フランスの医療制度は患者からの選択の自由、公助、互助の精神を重視し、皆保険制度を実施しており、 この制度を補完するものとして80%の国民が、保険の効かない医療を受けることができるように民間保険に加入しています。いわゆる混合診療を実施しています。 またフランスの高齢者に対する医療制度では、現役時代に加入していた医療保険制度に継続して加入しており、給付水準も若い人と同じ扱いです。
 どこの国の制度が最も良いかは一概に言えませんが、日本の医療制度は、健康寿命、乳児死亡率、がん患者の死亡率、医師や病院へのアクセス、 患者からの選択の自由、医療費の負担額、GDPにおける医療費の比率などから、日本の医療制度は世界でも、トップレベルであることは間違いありません。
 しかし、この日本の医療制度を今後も持続するには、厚労省の試算では毎年2.5兆円以上の医療費・介護費の増加を維持しなければなりません。
 医療の質を落とさず、保険料も上げず、税負担も上げずに日本の医療制度を持続させるには、病気に罹らないか、 フランスのように一部に民間保険を併用するしかないと思われます。 病気に罹らないようにするには、国民は自分の健康は自分で守るということを再認識し、健康を維持・増進するために、 食生活や運動などの生活習慣を見直すことが必要です。また、疾病の予防に医療保険が使えるようにして、疾病の早期診断・治療に資するようにします。 医療保険を使わない高齢者に対しては、保険料の一部を還付するなども1つの方法です。
 日本の医療制度を持続可能にするには、国民すべてが健康の維持・増進に励み、疾病の予防に努めるとともに、 医療制度の若干の変更と多少の医療費の負担増を受け入れる覚悟が必要と思われます。

8月の健康講座は8月25日(木)に変更 松下先生が「骨折が治らないといわれたら…」講演

 総合南東北病院の8月医学健康講座は、8月25日(木)午後2時から同病院北棟1階NABEホールで開かれます。 同病院の松下隆外傷センター長が「骨折が治らないといわれたら…」と題し講演します。 講座は原則的に毎月第3金曜日午後2時からの開催ですが、今回は講師の都合により日時を変更して開催します。   外傷センターは、病気ではなく、外傷(ケガ)治療のセンターで、同病院の外傷センターは昨年4月、 適切な外傷救急医療の実現と難治性骨折―後遺障害の機能再建を目標に掲げて開設。 今年3月末までに手足の骨折や難治性骨折はじめ全身のケガを対象に505件の手術を行っています。
 松下センター長は、これらの実績を踏まえ同外傷センターが目指す治療方法や機能回復の取り組みなどについて分かり易く解説します。 入場は無料。送迎バスは、郡山駅午後1時発、医療クリニック前同3時半発をご利用ください。


患者さんからの礼状

-とてもうれしい ボランティアの協力-
 医療クリニック、泉崎ディサービス・病院を利用して約3年になります。3か所とも職員の応対がとても快く、ありがたいです。 職員の言葉遣い、親身に相談に応じていただけるのは病人の薬です。 私は外出時に杖を使い、クリニックでは安全を考えシルバーカーや車イスを利用していますが、ボランティアさんの協力は、とてもうれしいです。 皆さん快く丁寧に誘導、優しい声かけは、クリニックでの気持ちよい1日です。(OK、女性)

-ありがとう。安心して治療に入れます-
 陽子線センターに着いて本人が車から降りるのに苦労していると何人もの方がすぐ車のところに来て手伝ってくれました。 あのように何人もの方が来てくださったのは初めてで、心が熱くなりました。 PETの受付でも数人の方全員がそろって「こんにちは」と声をかけてくださいました。すばらしい病院だと思いました。 医師の説明も完璧ですし、看護師や受付の対応も丁寧で安心して治療に入れます。ありがとうございます。(青森県、YT、男性、患者の家族)

6月の手術件数

 6月の手術件数は754件でした。内訳は眼科259件、外科97件、形成外科73件、外傷センター69件、整形外科52件、耳鼻科42件、脳神経外科39件、泌尿器科38件、心臓血管外科25件、婦人科13件、放射線治療科(陽子線)12件、呼吸器外科10件、放射線科5件、歯科口腔外科5件、周産期センター4件、消化器内科4件、麻酔科1件、呼吸器内科1件、循環器科1件です。

6月の救急車台数

 6月の救急車台数は437台。時間外の受診患者さんは1142人でした。

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