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上手く使いたいステロイド外用薬 生活環境や食生活の見直しも
アトピー性皮膚炎は、子どもに多い皮膚の病気で、かつては思春期ぐらいになると自然に収まるというイメージがありましたが、
厚労省の調査で50~60歳台にもアトピー性皮膚炎が増えていることが分かってきました。
なぜ成人にも増えてきたのでしょう。その1つにストレスの増加が指摘されています。
患者さんに聞くと、人間関係や生活環境の変化にストレスを感じる人が7割以上に上っています。
アトピー性皮膚炎は肌の状態が悪いほど症状が起こりやすく重症化の恐れも増え、皮膚の状態の悪化が、成人のアトピー性皮膚炎の増加に繋がっているともいえます。
アトピー性皮膚炎は「痒みを伴う湿疹」が皮膚に起こる病気で、この湿疹は「肌が炎症を起こしている状態」であることが注目点です。
湿疹の場所は限定されず、頭皮から足の先まで至る所にできる可能性があり、左右対称に起こりやすいのも特徴の1つです。
アトピー性皮膚炎の要因は「アレルギー」と「皮膚に炎症を起こしやすい体質」(特に乾燥肌)によるものとされていますが、
そのメカニズムは完全には解明されていません。
アレルギーの原因となる「アレルゲン」は、特定の物質に限定されてはいませんが、年齢を問わず約7割の患者さんに見られるのが「ダニ」。
室内の塵や埃などのハウスダストの中にもダニはたくさん含まれているので部屋を清潔に保つことは、アトピー対策として重要です。
また乾燥肌の皮膚は、外からの刺激にとても敏感で少しの刺激で肌荒れや炎症が起こります。
アトピー性皮膚炎は、炎症が起こりやすい皮膚に、過剰な抗アレルギー反応が慢性的に繰り返し起こっていると考えられます。
アトピー性皮膚炎の要因となるアレルギーや体質的な皮膚の弱さを短期的に改善するのは困難です。
このため治療には、皮膚の痒みと炎症を抑える対症療法が行われます。
主に皮膚に塗って使う外用薬と、過剰なアレルギー反応を抑える内服薬、抗ヒスタミン薬が使われます。
特に症状が酷い場合は、期間を限定してステロイド内服薬が使われることもあります。皮膚に塗る外用薬は、皮膚の状態と湿疹のできた部位に合わせて選ばれます。
湿疹の状態が酷く、炎症が強い時はステロイド外用薬が使われます。
そのステロイド外用薬は「強さ」によって5段階に分けられています。その強さは「身体への吸収率」によって決められています。
身体の吸収率は、身体の部位によっても変わっており、例えば手に比べて顔の吸収率はずっと高くなります。
このためステロイド外用薬は、症状のある部位と湿疹の状態に合わせて、何種類か使い分けする必要があります。
ステロイド外用薬を使って良くなったが、すぐ元に戻ってしまった、という例をよく聞きます。
確かにアトピー性皮膚炎には、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返す特徴があります。
でも、すぐに症状が元に戻るというのは、湿疹の炎症が完全に治まる前に薬の塗付を止めているケースがほとんどです。
ステロイド薬は、単なる痒み止めではなく、炎症を抑えるための薬です。
痒みが薄れたからと自己判断で塗付を止めずに、湿疹から炎症が消えるまで使い続ける必要があります。
ステロイド外用薬の塗付を止める時の判断は、必ず医師にしてもらうのが最善です。
ステロイド薬は、医師の指示に従って適切に使っている限り安全な薬です。
自己判断でステロイド外用薬を使ったり使わなかったりするのは、アトピー性皮膚炎をかえって悪化させることになるのでくれぐれも注意してください。