広報誌 南東北

 

からだに優しい腰椎手術の話

普及めざましい低侵襲の腰椎手術 一定評価のPELD(経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)

脊椎圧迫骨折にはBKP(バルーン後彎形成術) 術創わずか、麻酔できれば手術可能
 高齢化社会の進展に伴い脊椎の病気で悩む人が増える一方、高齢の人でも受けられる手術法が増えています。 10月21日(金)に総合南東北病院で開かれた同病院の10月医学健康講座で平野仁崇骨髄外科長(脳神経外科)が「からだに優しい腰椎手術の話」と題して講演した内容を要約して 新しい治療法などを学びます。
 脳神経外科は医療法で「脳・脊髄及び末梢神経に関する外科」と定義されます。 欧米や中国では神経外科といい、脳神経外科または脳外科と脳がつくのは日本だけ。 脊髄も範疇です。脳神経外科の脊椎脊髄手術は顕微鏡を使用し、肉眼での手術は殆どありません。 からだに優しい、低侵襲手術とは組織や機能を可能な限り温存して小さな術創でも従来法と遜色ない手術結果が得られる。 入院も短期間(最低1~2日)で済み、早い社会復帰ができる、との概念で間違いないようです。 数年来、積極的に取り組んでいる低侵襲脊椎・脊髄手術を紹介します。
 まず腰椎椎間板ヘルニアですが、これは腰の骨と骨を繋いでいる椎間板という軟骨が、繊維輪を破って脊柱管の方にはみ出てしまう病気。 腰の神経は脚全体に分布しているためヘルニアが神経を圧迫、脚の特定部位に痛みや麻痺を生じます。 生下時に椎間板ヘの血流は豊富ですが、骨格の成長とともに減少、正常の椎間板に血管は入っていません。 初期の変性(老化)は髄核の水分量減少で椎間板の弾性が低下、繊維輪の緩み・断裂、関節可動性の異常、脊柱の骨配列異常と進んでいきます。
 治療は、非ステロイド性鎮痛剤や漢方薬などの薬物療法とコルセットなどによる安静治療が基本ですが、牽引治療などの理学療法が有効なこともあります。 痛みが強い場合は注射やブロック療法を行うが、9割方はこれら保存的な治療で軽快、手術が必要なのは1割未満です。 椎間板ヘルニアになったらすぐ手術ということではありません。 ただ保存的治療がダメで著しい筋力低下や排尿障害、下肢痛が持続する場合などは手術が考えられます。 手術適応は、数カ月の保存的治療がダメな場合や繰り返して完治が望めないなどの場合は患者さんの決断によります。 ただ膀胱・直腸障害などがある場合は、早めに対応した方がいいです。
 かつての手術は背中や腹から切開、顕微鏡で見ながら骨の一部を削り摘出していたが、近年は内視鏡用の筒形開窓器を用い画面を見ながら行う低侵襲手術が普及しています。 当院ではこれに顕微鏡用の器具を導入、直径18mmの筒形開窓器による顕微鏡下手術が標準。 腰の骨固定などの場合は直径22mmを使います。18mmの良い点は、筒を抜いた時筋肉が寄って塞がることです。
 更に負担軽減を進めるため2009年6月から岩沼の関連病院などで「経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(PELD)」を始めました。 うつ伏せの患者さんの腰横からの経椎間孔アプローチで神経に触らない安全な三角形領域を狙って入り内視鏡を見ながらヘルニアを摘出します。 局所麻酔で骨はいじらず、内視鏡内に生理的食塩水を流しながら行います。 皮膚の傷は8mm程度。日帰りでもOK。現在この手術を行っているのは当院と新百合ヶ丘総合病院。 これまで71例のうち局所疼痛で手術中止が2例、追加手術が9例あるが、全例術直後から症状が改善し術後のMRIで減圧を確認できています。 手術時間は30~50分、出血量は微量、術後入院は1~2日。限定的ながらPELDは一定の有効性が認められています。
 腰痛経験者は84%といわれ60歳代では男女とも25%、70歳代女性は35%と高齢化するほど増えています。 本当に老化による脊椎変化だけが原因でしょうか。脊椎圧迫骨折が増えています。主な原因は骨粗しょう症です。適切な診断・治療を受けていない人が多い。 圧迫骨折で肺機能低下や歩行障害、うつ病、更なる骨折のリスクなどが増え「寝たきり」になる人もいるなど生命予後に直結します。
 当院では平成23年からバルーン後彎形成術(BKP)に取り組んでいます。 背中から針を刺入、骨折した椎体に小さな風船のついた器具を入れ、骨セメントを充填して固めて安定させる方法です。 術創は両側に3mm程度。手術時間は30分程です。1手術1錐体が原則ですが、ペチャンコになった扁平堆や麻酔をかけられない場合はBKPの適用が除外されます。 これまで56例(70錐体)行いましたが、女性が多く64.3%が75歳以上でした。麻酔がかけられれば手術ができます。2か所以上でも対応することは可能です。 脳神経外科での脊椎・脊髄疾患治療も内視鏡下手術や種々の経皮的手技の手術が選択できるようになったが、今後更に信頼を得られるよう努力していきたいと思います。


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