広報誌 SOUTHERN CROSS

 



どの家庭にもかけがえのない家族の思い出があり、おいしい食の記憶があります。
 家族みんなが笑顔で食卓を囲む。一家団らんの大切な時間を彩るごちそうたち。そんな楽しい食の思い出を子供たちに伝えていきたい、と料理教室を始めた女性がいます。料理研究家の佐藤久子さんです。
 佐藤さんは郡山市在住。40年来地元で編み物教室を開いてきましたが、ある日、書店できれいな飾り巻き寿司の本を見て感激。ちょうどお孫さんが産まれたばかりの頃で、「この巻き寿司を孫につくってあげたらどんなに喜ぶだろう」と思い立ち、寿司職人養成スクール「東京すしアカデミー」の門を叩きました。そして、江戸前伝統の細工寿司や房総地方の太巻き祭り寿司の技術の継承と普及に取り組んでいた川澄健先生の教室に通い続けます。
「飾り巻き寿司には技能認定制度があって、3級くらい取れればと思っていましたが、習っているうちに楽しくて面白くなり、すっかり虜になってしまいました」と久子さん。いつの間にか2級、1級そして、最高位のマスターインストラクターの資格まで取得してしまいます。何と福島県ではじめて、全国でも数人という、いわば免許皆伝、師範格の資格です。
 その後、久子さんは編み物教室とともに手巻き飾り寿司の教室も開き、工夫を重ねるうちにこだわりの自家製漬け物を使ったオリジナルの巻き寿司も誕生。
 漬け物は久子さんの得意技のひとつでしたから、料理レシピはいつの間にかバリエーションも豊かに広がり、巻き寿司だけでなく、漬け物を使ったもうひと品のおばんざいとして話題になっていきました。
 いつの間にか、地元テレビの料理コーナーにも講師として出演、新たな出会いと交流も生まれ、依頼されて九州で料理教室を開催することも。
 福島県は、東日本大震災でとても大きな被害を受けましたが、佐藤さんは安全、安心な食材を使い、大切な家族の団らんを守り、少しでも皆が元気な気持ちになれるようにと、震災後も直後から飾り巻き寿司の教室を開いてきました。
 「飾り巻きの講座で、みんなが喜んでくれることが、何よりも楽しいんです」
 佐藤さん持ち前の明るさが、私たちを元気づけてくれます。



漬け床も手作り べったら漬け

「家にあるちょっとした食材も、工夫次第でおいしいもうひと品のおばんざいになるんですよ」
 レストラン「エルマール」で開かれた佐藤久子さんのお料理教室は、そんな嬉しい話しから始まりました。
 会場は若い女性からベテラン主婦の皆さんまで、年齢もさまざま。和気あいあいとした雰囲気です。
 「まずは漬け物ですが、べったら漬けの簡単な作り方をご紹介しますね」と佐藤さん。
 漬け物の基本はなんといっても漬け物の素(もと)。作り方は、研いだもち米をお粥にして蒸らし、白ザラメと塩を混ぜて出来上がり。これが漬け床になります。この漬け床さえ常備すれば、自宅で旬の野菜を先生秘伝のお漬物にして楽しめそう。
 あとは、良く洗ったきゅうり、人参、大根など、野菜の水気を切ってから漬け床に漬け込みます。だいたい丸一日すれば食べ頃で、食べるときには、洗わないでいただきます。


色鮮やかな漬け物の野菜サラダ

 次に教えていただいたのは、サラダ感覚でいただくセロリと鱈の即席漬けのレシピ。野菜をたくさん食べられると大好評のひと品です。
 セロリは筋を取り、食べやすく斜め切りにし、塩ひとつまみを入れて軽く揉み、セロリと鱈のつまみを混ぜます。
 調味料は酢、砂糖、醤油で作り、材料と混ぜ合わせて味をなじませ、軽い重石をかけ、4~5時間置きますと、召し上がれるセロリの漬け物のできあがりです。料理教室では、これにきゅうりのべったら漬け、赤や黄のパプリカ、レタスと生ハムをあしらって完成。目にもあざやかな簡単漬け物サラダができあがりました。


香り豊かなセロリの葉の混ぜご飯


 ところで、香りの良いセロリですが、葉っぱの部分はほとんどの方が捨ててしまうのではないでしょうか。
 佐藤先生はこれを捨てずにおいしく食べるセロリの葉のご飯も紹介してくださいました。
 みずみずしいセロリの葉を塩もみして味をつけ、炊き上がったご飯に加えて混ぜ合わせたらできあがり。
 「もったいない精神を発揮して捨てるところも使ってみると、いろいろな料理にも利用できますよ」と佐藤先生。教室では、ほかにも茄子の漬け物を色鮮やかに漬ける秘訣も伝授しています。
 簡単でシンプルにがモットーの色鮮やかな料理レシピは、お子さんやお孫さんと一緒に作るのが楽しみになりますよ。
 料理ができあがったら、あとはみんなでおいしくいただきます。目で楽しみ、舌で楽しむ、さわやかな香りの野菜料理。野菜嫌いの子どもたちも、思わず箸をのばしてみたくなるはず。




ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療装置を設置する「南東北BNCT研究センター」の建設工事が、最終段階を迎えています。
 BNCTとは、エネルギーの低い中性子線をガン組織に照射し、ガン組織に取り込ませたホウ素化合物との反応を利用してガン細胞をピンポイントで破壊する治療法です。
 X線などを使う既存の装置と比べて正常な細胞への影響は少なく、副作用もきわめて少ない最先端の放射線がん治療法で、手術や既存の治療法では難しい悪性脳腫瘍、再発がん、進行がんにも有効とされています。
 通常の手術、放射線治療、抗がん剤治療が1~2か月間の入院・外来治療を要するのに対し、BNCTでは原則1回の照射で終了、実質治療期間は1日となります。
 このように、これまでの放射線治療とはまったく異なる新しい原理を利用したBNCTは、がん治療に革命的なブレイクスルーをもたらすものとして臨床への応用が期待されてきました。
 一般財団法人脳神経疾患研究所では、2012年6月に福島県から「BNCTによるがん治療機器の開発・実証計画」の採択を受け、建設中のBNCTセンターには、すでに加速装置「サイクロトロン」の搬入も進められており、今後、建屋の完成を待って性能確認試験を開始、2018年(平成30年)度からの治療開始を目指します。
 すでに成果をあげている陽子線治療とともに、BNCTの臨床応用は全世界のがん治療患者の朗報となるものとして大きな期待が寄せられています。
 BNCT 導入は国内初、病院でBNCT 治療を行うのは世界ではじめてとなります。





 南東北病院 渡邉一夫理事長監修による「切らずに治すがん治療」と題した本が出版されています。  その内容は、主に進化した放射線治療の実際として「陽子線治療」「サイバーナイフ治療」「ガンマナイフ治療」など取り上げ、細胞レベルでがんを攻撃する「BNCT治療」(陽子線治療センター西側に建設中)についても紹介されています。  陽子線治療やサイバーナイフ治療は、マスコミなどでも取り上げられることが増え、切らないがん治療という言葉も、よく耳にするようになりました。しかし、実際は、どのようなものなのか、どこでその治療が受けられるのか、どんな場合の治療に有効なのか、費用はどれくらいかかるのかなど、よくわからないことも多いのではないでしょうか。  そこで、現在行われている治療の実際について、渡邉理事長がポイントをおさえ、わかりやすく解説しています。 がんは命を奪う恐ろしい病気です。体のダメージを少なくする治療、通院で受けられる治療がどんなものなのか、そのメリットデメリットを交え、万一がんになったときのために、知っておきたい情報満載です