広報誌 SOUTHERN CROSS

 



1PET検査について

PET検査について


がんがない正常例の画像を最初にお見せします。図1は私が2年前に受けたPET(ペット)の画像です。
通常PET検査は白黒ですが、コンピュータで色をつけてご覧頂くことが多いです(図2
全身をPET撮影すると、異常でなくても赤く映るところがあります。
赤いところがすべてがんというわけではありません。代表的なところは脳です。また、扁桃腺、心臓、肝臓、腎臓や膀胱のなかの尿が赤くなることがあります。
そのほか、大腸、胃や唾液腺、精巣卵巣、子宮内部、こういったところが赤く色づくことがあります。
ですから、PET画像を見るときは、そういうところを注意しながら診断していきます。
PETとは、ポジトロン・エミッション・トモグラフィーの略語で、日本語では、陽電子放出断層撮影、またはポジトロン放出断層撮影と言います。
検査にあたっては、ポジトロンという放射線を放出する検査薬を体のなかに注射します。薬が体に分布すると、この検査薬が病気に集まってきますので、集まったところから、放射線がたくさん出てくることになります。
その状態で全身をカメラで撮影します。すると、病気のところからより強い放射線が出るので、光って見える、という仕組みになります。
PET検査とCT検査を比較すると、PET検査では放射線を出す検査薬を注射し、薬が体に行き渡ったところで検査、薬から出てきた放射線をペットカメラで撮影します。
それに反してCT検査は、体の外側から放射線を当てて撮影します。


PETで使う放射線とは


PETで撮影する放射線というのは、ガンマ線です。ポジトロンを直接撮影しているわけではありません。
PETで使う放射線を出す薬が体に入ると、そこからポジトロン(陽電子)というものが、ポンと飛び出してきます。
この飛び出る幅は、4ミリくらいだと言われています。
すると、近場にある電子と結合して消滅します。消滅したときに、2本のガンマ線を放出します。このガンマ線を計
測することで、画像をつくっていきます。これがペットの仕組みです(図3)。
体のなかにはいって4ミリ動く、というところが重要なところで、そのためにペットの画像は少し粗い画像になることが知られています。
図4はPETを撮影する装置のカバーを外したところです。リング状の部分の内側にガンマ線の検出器が数千個あります。
この検出器がガンマ線を検出して、コンピュータで画像をつくって写真になる、という仕組みです。
PETで見つけられる病気の大きさはどのくらいか、ということですが、さきほど、ポジトロンが飛び出して4ミリ動くとお話しましたが、そうしたことも含めて、検出限界は4ミリと言われています。
世界の最高峰の機器だと2ミリだと言われていますが、そうした数値は実験室のなかのものであって、私たちの体のなかで見えるのはだいたい1センチだと言われています。
その理由は、人間の体は動くからです。
呼吸をしても動くし、何もしなくても胃や大腸は動いています。そうした動きのため、ある程度の大きさがないと見えないわけです。
条件が良ければ、5ミリくらいのがんも見えますが、おおよそは1センチくらいだということになります。

PETで使う薬について


そのなかで一番多く使われているのは、FDG(フルオロデオキシグルコース)という薬です。
当院ではこのほかに放射線炭素で標識したメチオニンという薬も使っていますが、90%以上は、FDGです。全世界的にもそうだと思います。こうした薬剤を使うことで、PET検査でがんが光って映るわけです。
FDGの最大の特徴は、放射性のフッ素がついた疑似ブドウ糖であり、ブドウ糖に似ているというところです。分子式で表すと、OHというところだけが違っています(図5)。
FDGは体のなかに入ると、ブドウ糖と同じように栄養素として細胞のなかに入っていきます。
細胞のなかに入ると、普通、ブドウ糖は分解されて、炭酸ガスと水に変わってしまうんですが、FDGは分解されずにいつまでも細胞のなかに留まっています。そこで放射線を出し続けるので、取り込んだ細胞が光って見えることになります。
この代表的なものが脳になります。脳というのは、ブドウ糖を使って働いていますので、FDGをたくさん取り込みます。ですから、正常な画像の脳は赤く光って見えます。
がん細胞というのは、ブドウ糖を食べて増殖していく性質があります。正常な細胞に比べて3倍から8倍、ブドウ糖の消費が高いと言われています(図6)。
つまり、それだけFDGの取り込みが強く、それだけ放射線を出すということになります。FDGを用いたPETは、この性質を利用してがんを見つけるわけです。

PET—CT画像の実例


CTとPETによる大腸がんの撮影画像を図7に示しました。お腹の正面から見ています。
心臓、肝臓があり、矢印のところにがんが映っています。

図7aの画像がCT、図7cがPET、図7bが両者を融合させたPET—CT画像です。
CTの白い部分は骨盤です。大腸が走行しており、そのなかにがんが映っているですが、慣れていないと、なかなか見つけるのは大変ですね。がんは矢印のところにあります。もやもやとした固まりに見えるのが、がんです。
それに対してPETは、FDGが放射線を出すので、分かりやすい画像が得られます。
ただ、注意して頂きたいのは、画像の細かさという点です。CT検査では、肝臓も心臓も血管もきれいに映っています。胃も、骨も、きれいに映っています。ところが、PETはぼんやりとした感じにしか見えません。これが検出能4ミリという限界です。
ですから、PET検査というのは、細胞が悪さをしているかどうかということは分かるのですが、細かさという点ではCTやMRIには及びません。
現在は両者の複合機、PET—CTが主流になっています。
南東北医療クリニックにある4台の装置もPET—CTです。
PET—CTだと、大腸にがんがあるというのがよく分かりますし、肝臓や心臓、骨の輪郭もきれいに分かります。今は、こうしたもので診断します。

PETが高額になる理由


放射性物質には半減期があります。その物質に決まった時間で半分になっていくという特徴です。
PETで使うFDGも放射性物質ですから、半減期があり、110分です。元々あった量は110分で半分になります。次の110分で4分の1に減っていきます。330分なら8分の1になり、だいたい、一昼夜置くと全部なくなってしまいます。
このように、FDGという薬はどんどんなくなっていきます。半減期が短いので、作り置きができません。ですから、PET検査薬には在庫という概念がありません。
当施設では、施設内で検査薬をつくっています。そのためにはサイクロトロン、合成機器、検定機器など、非常に高額な設備が必要です。
外部の工場でつくってもらうデリバリーという方法もあるのですが、その検査薬の金額も高額です。
撮影するPET—CT装置も高額ですから、こうしたものも含めて、どうしてもPET検査は高額にならざるを得ないという側面があります。

PETによる被ばくリスク


被ばくのリスクについても触れておきたいと思います。
現在のPET検査は、CTと複合したPET—CTで行うのが主流ですから、PET検査でどの程度被ばくするかと言うと、PETとCTの被ばくを合わせた量、ということになります。
PET検査の被ばくは、1回あたり3・5ミリシーベルトと言われています。
CT検査も、技師や撮影方法によって大きな幅がありますが、5〜14ミリシーベルトと言われています。
ですから、合計すると8・5〜17・5ミリシーベルトを1回に浴びることになります。
ちなみに、われわれは自然界から放射線を年間2・4ミリシーベルト受けていると言われています。
この検査で受ける被ばくがどの程度のリスクを持っているか、ということですが、国立がん研究センターが参考になる数値をまとめています。
これは、広島と長崎の被ばくされた方のデータをもとにつくられたがんのリスクに関するものですが、それによれば100ミリシーベルト未満では、がんのリスクを検出することは不可能とされています。
100〜200ミリシーベルトの場合で、1・08倍という数字が与えられています。
これはどのようなリスクかというと、野菜不足の方よりはちょっと高いけれど、肥満、運動不足の方よりも低い、という数字です。
PET検査による放射線のリスクはそうしたところにあり、ほかのリスク要因と比較して考えることができるということは、覚えておいても良いかもしれません。




2「がん」について


がんとは何か

がんとは、細胞の遺伝子の変異によって起こる病気です。
細胞の増殖をコントロールできなくなると、異常な細胞の集団が生じ、がんになる、ということです。
がんの原因は、ある程度分かってきています。食べ物や嗜好など、生活習慣と密接な関係があり、代表的なものがタバコ、アルコール、脂肪・塩分の摂りすぎなどです。あるいはある種のウイルスや細胞の感染によるもので、ピロリ菌感染による胃がんなどがそうです。
遺伝するがんは、がん全体の5%以下だと言われています。
生活習慣や感染が原因のがんは、男性のがんの約53%、女性のがんの約27%を占めると言われています。
そうした点を踏まえて、がん予防が提唱されています。禁煙、食生活の見直し、適正体重、運動、節酒という5つの健康習慣を実践することで、がんになるリスクは低くなります。
推計では、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低下するとされています(図8)。


がんの罹患率と死亡率

がんの死亡率は年々上昇しているのが、図9で分かると思います。
別のデータになりますが、がんの罹患率、つまり、がんにかかった人の総数は、1980年から2008年の28年間で、男性が3倍近く、女性も倍以上になっています。
2013年には、がんで36万人が亡くなり、2011年には85万人が罹患されました。
ただ、がんは増えてはいますが、年齢で調整した死亡率のグラフ(図10)を見てみると、死亡率はどんどん減っています。つまり、がんは治りやすくなっていると言えるかもしれません。
その理由としては、治療法の進歩が多大な貢献をしていることは論を待ちませんが、私たちが進めているがん検診によって、早期の治りやすいがんが見つかっているということも関係しているのではないかと考えられます。
がんについては、いろいろな統計がまとめられています。
都道府県別に見た死亡データでは、福島県は、死亡率の低い方から見て男性24位、女性31位で、男女合わせると28位、平均よりも若干下ということになります。1位は長野県でした。
次に、がんと診断された人が、その後、ほかのがんと診断されるケース、つまり2次がんと言いますが、がんに2回かかる人はどれくらいいるかについても見てみると、大阪府で調べられたデータでは、13%。だいたい8人に1人は2回かかると言われています。

「健診」と「検診」

「健診」と「検診」という言葉がありますが、両者の意味は違っています。
健診とは、健康であるかどうかを確かめるものです。法律によって定められた法定健診はこちらです。
それに対して個人の自由意思で受ける任意検診というものがあり、これはより多彩な検査項目が自由に選べますが、自費負担です。任意で受ける検診のことを〝ドック〟と言っています。
検診という言葉には、特定の病気を早期に発見するという意味が込められています。代表的なものが脳ドック、がん検診、がんドックなどです。

がん検診について

がん検診のメリット、デメリットについて考えてみたいと思います。
デメリットは、検診によってがんが100%見つかるわけではない、ということです。100%見つかる検診というものは、この世に存在しません。
また、がんがない場合にも、がんの疑いと診断されることがあります。検診によって命に関わらないがんを余計に見つけてしまうことがあります。
検査にともなう偶発症も考えられます。つまり、かえって健康被害をもたらすことがないとは言えない、ということです。 さまざまな心的影響もあり得ます。がんドックを受ける方のなかには、心配で前日寝られなかったという方もおられます。
メリットとしては、がんによる死亡リスクの減少が期待できます。
早期に見つかるだけでなく、がんになる前の前がん病変を発見できるというメリットもあります。そして、異常なしの判定が下ることで得られる安心のメこういったメリット、デメリットを秤にかけた上で受診を考えてほしいと思います。

対策型検診

対策型がん検診というのは、ある一定のがんの死亡率を下げるということを目標に国が定めた公共政策で、特定の集団を対象としています。地域住民や職域を対象とし、住民型がん検診とも呼ばれています。
対策型がん検診では、検査、死亡率の減少効果が確立され、有効であるとされた検査が行われています。
無料、または少額の自己負担で受けることができます。
国で進める有効ながん検診としての対策型がん検診は5つで、図11に掲げた通り、胃、子宮頚部、乳房、肺、大腸を対象としています。実際にがんが発見された例を図12に示しました。


任意型検診

任意型検診は、人間ドック型とも言われます。個々人が自由意思で判断して受けるものです。
検診のうち、対策型検診以外のものすべてを言い、個人ががんの死亡リスクを減少させるという目的で受けます。
死亡率減少効果が必ずしも確立しているとは限らない検診である、ということになっていますが、良い検査であることは確かで、決して検査が劣っているということではありません。
任意型は原則として全額自己負担、ということになります。会社からサポートされることも多いと聞いています。
では、任意型がん検診にはどういうものがあるか、と言うと、実にいろいろなものがあります。
胃がん検診では、内視鏡を使った検査があります。これは対策型で行われることもあります。
そのほか、エコー検査を使った乳がん検診、CTを使った肺がん検診、内視鏡、X線や、CTコロノグラフィーというものを使った大腸がん検診、超音波を使った甲状腺がん検診、腫瘍マーカーによる検診などがあります。
PETがん検診も、任意型検診のなかに位置づけられます。
がん検診に使われる検査は、ありとあらゆる検査が使われます。
がん発見に有効と考えられる検診のなかからひとつふたつを選び、あるいは複数組み合わせて、より精度の高い適切ながん検診を組み立てていきます。

PETがんドックについて

PETがんドックの特徴は、大きく3つあります。
1つ目は、PET検査を取り入れて、がんの早期発見を目的とした検診であるということです。
任意型検診であるため、PETがんドックと称されることもあります。任意型ですから、原則全額自費になります。
次に2つ目、これが最大の特徴かもしれませんが、検査対象は広く、全身を対象とします。
ただし、全身と言っても、極端にがんが少ない下肢、太ももから下というのは、通常省かれます。
3つ目としては、PETがんドックはPET検査だけをするのではなく、総合がん検診というかたちをとることがほとんどだということです。
多くの場合、PET検査の利点と欠点、これを考慮して複数の検査を組み合わせます。
それぞれの検査がお互いの弱点を補うわけです。
PET検査の場合も、苦手な部分や欠点は、ほかの検査で補うということが当然大事になってくるわけです。

PETがんドックの実績

南東北医療クリニックで行われたPETがんドックの実績をご紹介しますと、平成16年の4月から、平成26年の3月まで、受診された方は延べ 29、756人です。
このうちがんが見つかった方は、427名で、発見率は1・42%です。
発見されたがんの内訳をまとめた資料を図13に示しました。表のなかの、人数と発見率は、当施設のデータとなります。
日本対がん協会が公表している発見率、厚生労働省の公表している対策型の発見率も掲載し、比較できるようにしました。
肺がんは、当院ではCT検査も合わせてやっていることもあり、高い発見率になっています。大腸がんも遜色ありません。
乳がん、胃がん、子宮頸がんは、対策型検診に比べると発見率が若干低いのが分かります。つまり、こうしたところがPETがんドックの弱点として考えられるわけです。
その一方で、甲状腺がん、頭頚部がん、肝・胆・膵・腎臓のがん、卵巣がん、悪性リンパ腫などは、対策型がん検診では検診項目に すら含まれていません。
体の幅広いところを検診できるPETの利点というものが、こうした数字からも理解できるかと思います。

3PET検査の実際


PET検査の流れと注意点

実際にPET検査をするには、まず絶食して頂きます。PETではFDGというブドウ糖に似た薬を使いますから、食事で体にブドウ糖が入ってしまうと、検査に支障をきたすためです。
来院して頂いたら、簡単に検査の中身を説明し、検査着に着替えて頂き、血糖値を測ります。耳や指で測ります。それから、PETの薬を注射(静脈注射)し、その後、だいたい1時間から1時間半安静にして頂きます。
膀胱に尿が溜まり、そこにFDGが溜まります。これも検査の妨げになるので、検査前に排尿して頂きます。それから検査装置の上に横になって頂き、撮影になります。
検査はだいたい30分です。ですから、待ち時間を含めて全体で2時間くらいになります。
食事制限は4時間以上です。検診の前の日の夕食は摂って、次の日の朝は食事をせずに検査という流れになります。砂糖入りの飲み物も避けて頂きます。
血糖が高いと、画質が劣化し、がんの見逃しに繋がってしまいます。注意してください。
食事を摂ると、どういう影響が出るかというと、全身の筋肉にFDGが入ってしまい、筋肉しか映らない状況になります。
図14aの画像は食後1時間で検査しました。絶食するのを忘れて、そのまま撮影してしまったわけです。これでは検査にならないので、2日後に検査をし直すと、図14bのように正常な画像になります。矢印のところに乳がんが映っています。
このように、食事を摂ってしまうと、がんが映らなくなりますから、絶食は絶対です。
ところで、糖尿病は血糖が高くなる病気ですが、糖尿病があっても検査はできます。
ただし、高血糖状態になると、早期がんを見落としがちになりますから、空腹時血糖が200を超えたら延期して頂くよう勧めています。ですから、検査前には必ず血糖値を測り、高血糖の場合はその場で検査が中止になる場合があります。

PET検査の利点と欠点

PETの利点は、一度に広い範囲の検査ができる。注射1本で、痛みが少ない。撮影時は寝ているだけですから、体に負担が少ない、などが挙げられます。
PETで見つけるのが得意ながんは、甲状腺がん、大腸がん、肺がん、悪性リンパ腫、頭頸部のがんなどです。
欠点としては、放射線を使うことがあります。また、1センチより小さいものは分からない、高額である、PETで見つけにくいがんもある、などが挙げられます。
PETが苦手ながんは、次の5つに分類でき、それぞれに別の検査を組み合わせることで対応します。
①ブドウ糖をあまり消費しないがん
発育が遅いがんは、ブドウ糖の消費が少ないと言われています。進行が遅くて、あまり悪性度の高くないがんや、肺がんの一部、前立腺がんの一部は苦手です。
こうしたがんは、CT検査、あるいはPSAという前立腺がんに特異的な腫瘍マーカーで補っていきます。
②特定の酵素を持つがん
細胞のなかに入ったFDGをどんどん分解してしまうもので、肝臓のがんや腎臓のがんの一部が含まれます。
ただし、こうしたがんはエコー検査でよく見えますし、MRI、CTで対応できます。
③薄かったり小さかったりするがん
たとえ5センチの広がりがあっても、紙のように薄いがんは見えません。代表的なものが胃がんです。日本人はまだまだ胃がんが多いのですが、PET検査では胃や食道の早期がんが見えないのが最大の弱点だと言われています。
それから、マンモグラフィや子宮がん検診で見えるごく早期のがん、前がん状態、こういったものは見えないと言われています。
こうしたがんは、胃のX線検査など国が進める対策型検診でカバーされます。
④尿の近くのがん
FDGは尿のなかに入ってしまいますから、尿管、尿道、膀胱などにできるがんは、見えにくくなります。尿検査、超音波、CT、MRI検査で補います。
⑤脳
脳はFDGがたくさん集積しますので、脳腫瘍はPETでは見えにくくなります。
PETの利点は、一度に広い範囲の検査ができる。注射1本で、痛みが少ない。撮影時は寝ているだけですから、体に負担が少ない、などが挙げられます。
対策としてMRI検査をしていれば、隠れ脳梗塞も見えますから、非常に有効です。ですから、脳ドックも合わせて受けて頂くのが良いかと思います。

がんドックの実例

がんドックで見つかったがんの実例を紹介します。
図15は早期の大腸がんです。PET検査をすると、大腸に赤い集積が見えました。
図16は、首の前にぽつんと光るところがあります。甲状腺に石灰化というものが見えています。これも早期のがんでした。
図17では、白黒のPET画像の左の肺に光るところがあります。CTでもそこに一致して影がありました。CTとPETのフュージョン画像(融合像)を見ると、CTの影に一致してPET画像の光が確認できました。
この方は陽子線治療を選択しました。27カ月経っていますが、再発はありません。
PETで見えなかったがんのうち、代表的な例として食道の早期がんを図18に示しました。
治療前の内視鏡所見によると、矢印のところにがんがあります。ヨードという検査液をかけると、がんがヨードをはじくので、そこだけ色が薄くなり、がんが見えます。
まだ早期でしたので、内視鏡で食道の壁をはぎ取るという治療を行いました。
この方は、治療前にPET検査をしましたが、食道にがんは見えません。このように、食道の早期がんはPETでは映りにくいのが分かると思います。


PETがんドックとその上手な利用法

PETがんドックを利用する上で覚えておいて頂きたい大事なポイントを、これまでのお話を踏まえて整理しておきます。
まず、体に不調があるときは外来受診をしてください。
ドック、つまり検診というのは、決められた検査を一通り行う、というものですから、個々の症状に合わせた検査はできません。また、体の不調の原因は、がん以外にも考えられます。
次に、PETがんドック以外の国が勧める対策型検診も積極的に活用してほしいと思います。
また、PETの原理と使用する薬剤の性格から、糖尿病の方は、がんの検出率が落ちることがありますから、空腹時血糖が180以下に下がっているかどうかに注意して頂きます。
PETの利点、欠点を知り、PETで見つけるのが苦手ながんはほかの検査で補い、予防にも目を向けてほしいと思います。
弱点を補う検査としては、脳MRI、胃X線・胃カメラ(内視鏡検査)、腹部超音波検査(エコー検査)、便潜血・大腸カメラ、マンモグラフィ・乳腺超音波検査、子宮がん検診、前立腺腫瘍マーカー(PSA)などがあります。
例えば、腹部超音波検査というのは、放射線も使いませんし、非常に簡単で繰り返しできる、有効性の高い検査であり、有益です。
腎臓がんと膵臓がんの早期がんの超音波画像を示しておきます。
図19aでは、腎臓に1センチ強のがんが見えています。膵臓がんは難治性の治りにくいがんの代表例ですが、図19bの矢印のところに黒い固まりが見えます。この方は早期の膵臓がんで、手術をされてから8年経ちますが、再発もなく完治しました。
このように、PETの弱点を補う検査も有効な場合が多くあります。がん以外の病変が見つかることもありますから、お勧めしたいと思います。


南東北医療クリニックのPETがんドック

当施設のPETがんドックを一例として解説します(図20)。検診内容や金額によって大きく4つのコースがあります。
できるだけがんの早期発見に繋がるよう、対策型がん検診も上手に組み合わせてコースを選択してほしいと思います。
Sコースは一番がんの見逃しが少ない検査となっています。
1泊2日ですが、いろいろな検査をPETがんドックで一回ですませたいという方は、このコースを選んで頂くと良いでしょう。年1回のドック受診と、女性の方は、加えて2年に一度の乳がん検診、子宮がん検診を加えて頂ければと思います。
Aコースは対策型がん検診をきちんと受けている、という方向けに用意しているコースです。
1日でできるので便利な一方、胃の内視鏡検査は省いていますから、対策型検診で受けるX線や内視鏡検査で胃の検査は補える、という方が対象となりますね。
2年に一度受けて頂き、腹部超音波検査については毎年受けるようにしてほしいと思います。また、女性の方は、2年に一度の乳がん検診、子宮がん検診を加えてください。
CコースPET検診コースは、任意型のみならず、対策型のがん検診もまめに受けている方向けです。
内視鏡、あるいは甲状腺のエコーも受けていたり、腹部超音波検査も毎年欠かさず受けているという方で、前立腺がん検査のPSA測定も受けたいという方はCコースを、前立腺がん検査も毎年受けているという方はPETとCTを合わせたPET検診コースをお勧めしています。2年に一度は受けて頂くと良いと思います。
いずれにせよ、年に一度はがん検診を受けるよう、心がけて頂きたいと思います。


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