水と人の関係
 
毎日水を飲まなくてはならないのか
 人体の60%は水。生物が生きていくために、水はなくてはならない物質です。
 例えば、体内で起こる化学反応はすべて、水に溶けて初めて進行します。また、栄養物やホルモンなどを溶かし、血液などの形で体全体に運搬するのも水です。このほか、体温を一定に保つ上でも水は重要な役割を果たしているのです。
 では、1日に必要な水分は大体どれくらいなのでしょうか?
 一般的な大人は1日に約2000〜2500mlの水分を体外に排出しています。したがって、毎日その分を補給してやる必要があるのです。なお、幼児の場合は体重あたりの水分の出入りは大人よりも多く、体重10kgの幼児で1日1リットルもの量が出入りしています。
体内での水の働き
便秘予防 脳梗塞・心筋梗塞予防
 朝起き抜けにコップ1杯の水を飲むと便秘に効果があるといわれるのは、水には腸を刺激して排便を促す作用があるためです。また、体内の水分が足りないと、便が硬くなって便秘の原因に。  ドロドロの血液を粘度の低いサラサラの状態にし、血栓や血管のつまりを防止して、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを回避させます。
リラックス・緊張緩和 脳の老化防止
 怒りで興奮しているときは、コップ1杯の水を飲んでみましょう。気分が随分落ち着きます。このように副交感神経に作用して気持ちをリラックスさせる鎮静作用があります。  脳では、水分がリンパ液や脳脊髄液として、エネルギー源や潤滑油などの重要な役割を果たしています。水分の補給は脳をみずみずしく保ち、老化防止に役立ちます。
肌の潤いキープ 風邪予防
 十分な水分摂取は、細胞内の水分を保持して乾燥を防止し、言葉通り「みずみずしい」肌を作ります。また、たくさん水分をとって汗をかく事は、肌を荒らす要因となる有害物質を排出し、肌荒れや吹き出物を予防して、美肌キープに大いに役立ちます。  水分が足りないと、せっかく食事をとっても栄養素が十分に消化・吸収できず、風邪をひきやすいなど、体調不良に陥りやすくなってしまいます。
体温調整 膀胱炎や結石の予防
 人間の体には、内部の状態をいつも一定に保つ恒常機能(ホメオスタシス)が備わっています。例えば、暑いときに汗をかくのも、体温を維持しようとする恒常機能の働きによるもの。恒常機能を正常に保つために、水分は必要不可欠です。  水分を十分に補給して尿量を増やしていれば、体内の有害物質や老廃物を洗い流してくれるので、体が健やかな状態に保たれ、尿道や膀胱に細菌がたまることで起きる膀胱炎や、腎臓結石、尿路結石などの疾病の予防にもつながります。
  食欲抑制・新陳代謝促進
   人間の食欲は、水を飲んで胃液が薄められると抑えられるので、食事中や空腹時に水を飲めば、食べ過ぎ防止・間食防止に役立ちます。
 さらに、水分の十分な摂取は新陳代謝を促進します。
水を飲む生活
肥満が気になる人
 普段外食が多い人や肥満気味の人、高血圧や高脂血症の人など、血液濃度が高いことが心配される人は、まめに水分補給しましょう。特に重要なのは、睡眠中の発汗により血液濃度が高くなっている朝や、同じく発汗により水分を喪失する運動や入浴時です。
 1日で何度かに分けて(1回コップ1杯、約150ml)、最終的には1・2リットルの水分補給を心がけましょう。
 
長時間座りっぱなしの人
 デスクワークなどで、毎日長時間座ったままの人は要注意!血液が停滞して脚部に血栓ができ、その一部が腕に移動して血管をふさいでしまうエコノミークラス症候群(肺動脈血栓塞栓症)の危険にさらされていますよ。
 予防には、立ち上がって体を動かすほかに、充分な水分摂取も重要です。アルコールやコーヒーには利尿作用があり、脱水症状を引き起こす可能性があるので、控えめにしましょう。
スポーツをする人、汗をよくかく人
 汗をかくと、水分だけでなく、汗に含まれている塩分やカルシウムも体内から失われます。そのため、汗で失った水分を補給する際には、それらミネラル成分が含まれているミネラルウォーターやスポーツドリンクが有効です。
 長時間の運動で大量の水分が失われると、熱中症や熱けいれんを起こす危険があるので注意が必要です。ただし、一度に大量に補給するのは、かえって脱水症状を進行させることになり、逆効果なので水分は失った分だけ補給しましょう。
便秘の人
 寝る前と、起きてすぐにコップ1杯の水を飲む習慣をつけると、腸が刺激され、便通の規則正しいリズムが生まれます。それでも駄目な場合は、カルシウムやマグネシウムの含有量の多い、硬度の高いミネラルウォーターを試してみましょう。
 硬水には、ぜん動運動を促進させる効果があります。ただし、水の硬度が高すぎると腸への刺激が強く、下痢を引き起こす場合もあるので、まずは中程度の硬度(50〜100mg/l)から試し、自分の体に合った水を選ぶようにしましょう。
ダイエットしたい人
 ダイエット中は食事制限することで、体内に入る水分が不足しがちです。水分が足りないと、活発な代謝ができず、体脂肪の燃焼効率も低下してしまいます。ダイエット中は、普段より多く、2リットル以上の水分補給を心がけましょう。水分には食欲抑制効果もありますから、「間食したくなったら水を飲む」といった活用も重要です。水ならノンカロリーだし、不要な分は尿として体外に排出されてしまいます。ミネラルウォーターなら、食事制限で不足しがちなミネラル分を補うこともできます。
 ミネラルウォーターの選び方
 現在、様々なミネラルウォーターが市販されていますが、それぞれミネラル含有量や硬度、pH値など、その性質が異なっています。
 自分の体調、症状、目的にあわせて選ぶことが賢い水分補給の決め手になるのです。
CHECK POINT  
栄養成分表示
 水に溶け込んでいるミネラル成分はいろいろあり、商品によってその含有量が異なります。カルシウムが多いものはストレス緩和や骨の健康に、マグネシウムは脳梗塞や心筋梗塞の予防、ナトリウムは汗をたくさんかいたときに欠かせません。
硬度
 カルシウムとマグネシウムの含有量を数値化したもの。硬度50〜100が中程度。それ以上のものは硬度の高い水=硬水と呼ばれ、なれない人には重い苦味のような味が感じられ、腸を適度に刺激する一方で、下痢を引き起こす場合もあります。それ以下のものは、軟水と呼ばれ、癖のない味が特徴です。
pH
 pH7が中性で、小さくなるほど酸性が強く、大きくなるほどアルカリ性が強くなります。pH6の弱酸性からpH7・5の弱アルカリ性が舌になじみやすいとか。人間の健康時の体液はpH7・35〜7・45に保たれているので、弱アルカリ性の水は吸収がスムーズだと考えられます。
弱アルカリ性の水
 舌になじみやすく、ミネラル成分と一緒に無理なく体内に吸収されます。
硬水
 カルシウムとマグネシウムの含有量が多めで、便秘改善やダイエットのサポートに。
軟水
 カルシウムとマグネシウムの含有量が少なめで、口当たりがなめらか。
発泡水
 炭酸ガスの溶け込んだ水は、食欲を刺激するとともに、疲労物質の排出を助けます。

国民生活センター 『くらしの豆知識2006年』 より
 
 
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