くらしの豆知識
趣味と生きがい探し

◆趣味が長じて「大家」(たいか)に
 人生が長くなり、趣味を楽しみ、それを社会に生かせる時代になりました。小学校から大学を出るまでに、実際に勉強している時間は5万時間程度です。ところが、60歳でリタイアして80歳までの20年間の自由時間は8万時間強もあるのです。
 ですから、絵画、音楽、陶芸、写真、ビデオ、手芸、演劇、山登り、読書などの1つに絞り込んで趣味を楽しむと、その道の大家になることさえも可能です。 趣味が高じた人々の作品展を見ると感嘆するものが多くあります。そこまでいかなくとも仕事を継続しながら、あるいはいくつかの趣味を楽しむこともできます。
◆生きがいと趣味
 最近の趣味の特徴は、その人の生きがいと趣味が結びついていることでしょう。例えば、団塊の世代が昔のギターを取りだしてビートルズをひき、歌うグループを作り始めています。埼玉県では60歳以上の人だけの劇団が生まれました。これらは、いずれも演ずる自分達と観客との一体感を作っており、一人静かに楽しんでいるのではありません。
 また、竹とんぼがシニアの人達によって復活してきています。これも単なる趣味というよりは、このことによって子供達との交流を行い、子供達に小刀の使い方、化学の初歩を伝える場となっているのです。
 他にも、絵画や踊り、太鼓などをシニアと若者がともに楽しみ交流の場とする、自分の生きがいと趣味を一致させている事例がたくさん生まれ、シニア層が活躍する時代になってきました。
◆趣味は個人的なものか
 長い間、趣味は個人的なレベルのものであって社会とは関係がない、と考えられてきました。これは「産業唯一主義」ともいえる考え方で、商品にならない=売り物にならないものは価値がないという考え方によるものです。母親が編んでくれた格好の悪い手袋よりブランド物のほうを選ぶ、手作りのアクセサリーではなく高級な洗練されたものを選択する、という時代が続いてきました。
 こうした中で、私たちは人間と人間のつながりという大切なものを捨ててきたのではないでしょうか。今、趣味の復活は「人間復活」の潮流と連動しているととらえることもできます。
 そして、もう一つの意味は自己の存在を社会的に主張する、ということなのです。引きこもってひっそりと趣味を楽しむのではなく、趣味の成果をみんなに見せる、あるいは、作成過程を仲間と一緒に楽しむ、というような動きは、自己の存在をアピールしていることにほかなりません。
 高齢社会にあって、一人暮らしの高齢者が多数を占め、家族の形が変わっていく中で、趣味を通した新しい人間関係が形成されつつあるわけです。趣味の社会的な役割が変化してきているといえます。
国民生活センター「くらしの豆知識2007」より
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