くらしの豆知識
スリムに生きる

◆ものを買わない
 現代は、ものを持たせられる時代です。テレビのCMや通信販売広告などでは、便利そうな多様な商品を、手を変え品を変え買わせようとしています。その手に乗せられると、家の中にはさして必要もないものが増殖し始めます。
 ところが、現代の日本、特に都市の住人にとってもっとも手に入れにくいのは、ものを入れておくための空間なのです。ものがあふれ始めると、今度はそれを整理するための様々な商品の誘惑が待っているのです。
◆必要なものはわずか
 整理用の家具などを使って狭い空間の利用率をいくら高めたところで、実際は新しい家具が増えているため、さらに息苦しいほど狭くなってしまいます。
 ではどうすればいいのでしょう。
 人間の衣食住に必要なものはごくわずかなのだと見極めることが必要です。ほんの40〜50年前までの私たちは簡素な生活をしていました。掃除はほうき1本で済みました。家具が少ないのでそれで十分でした。電気冷蔵庫のなかった時代は、大きな箱の中に手つかずの食品を大量に保管する習慣はなかったけれど、べつに困りませんでした。買い物には自前の買い物かごを提げて行くのが普通で、家の中に紙やプラスチックの袋があふれることもありませんでした。
 台所には包丁とまな板があれば、ちょっと手間をかけるだけでたいていの用は足りました。
 めったに使わない専用の道具を買い込んで、狭い空間をますます狭くする習慣はなかったのです。
◆回転式の暮らし
 江戸時代の生活をみると、日用に使う材料はほとんどが植物性です。例えば稲作でわらのたくさん取れる米を作り、米は食べた後、排泄物として下肥になりました。下肥は肥料として販売され、1年以内に土に戻りました。米もわらも1年たつとなくなり、これを循環させているのは太陽エネルギーだけでした。電灯の代わりの行灯の油は菜種や綿の実から作られ、循環して土に戻りました。循環型社会がおのずと保たれていたのです。
◆現代をスリムに生きる
 便利になった現在、江戸時代のような農業や暮らしができるわけではありません。でも、使いまわしのできる材料を使い、リサイクルやリユースをして利用する回転式暮らしをすれば、スリムに生きることができるのではないでしょうか。例えば、買い物袋を持って買い物に行く、リターナブル瓶に飲料などを入れる、プラスチックのトレーのない量り売りの食品を購入する、自前の家庭菜園で生ごみを利用して野菜を作る、雨水をためて散水をする、単純な機能の機械類を修理して利用するなどです。
 これは、自分の暮らしは自分で守るということに通じるでしょう。
 スリムというのは日常生活から不必要な部分をそぎ落として簡潔に生きるということに尽きるのではないでしょうか。
国民生活センター「くらしの豆知識2007」より
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