くらしの豆知識
増えているアルコール依存症

 アルコールは大麻や覚醒剤などと同じ依存性薬物の一つです。毎日の飲酒が習慣となり、次第に酒量が増え、それが高じて飲まないとイライラするようになるといった、飲酒行動を自分でコントロールできない状態に陥ります。このように過量の飲酒を長年続けることでアルコール依存症という病気になってしまいます。特に未成年者は、アルコールの影響を受けやすく、15歳から飲み始めて25歳という若さで発症した例があります。
 '03年に行われた飲酒に関する全国調査によると、およそ82万人にアルコール依存症が疑われると推計されています。
 アルコール依存症は心の病気とされています。身体合併症だけを治療しても「また飲めるからだに戻してしまう」という悪循環になります。完治することのない病気であるため、予防のための正しい知識を持つことが重要になります。
 
◆アルコール依存症への過程
 お酒を飲み続けていると、脳がアルコールになれていき、次第に酒に強くなっていきます。そのため、同じ程度の酔い方をするにも多量のアルコールが必要となり、次第に酒量が増えていきます。やがて、脳はアルコールが入った状態でも、普通に機能するように変化していきます。この状態を身体依存症状態と呼びます。ここで酒を断つと、手足の震え、動悸、発汗、イライラ、不眠などの離脱(禁断)症状が見られます。また、依存症はアルコールに強い人の病気というイメージがありますが、もともと強くない人でも、飲み続けているうちに酒に強くなり、依存症となる場合があります。
 
◆治療は困難
 アルコール依存症になると飲む量のコントロールが効かなくなります。適量の飲酒に抑えておこうとしても、体からアルコールを切らさないように、数時間おきに2〜3合程度の酒を飲み続けるのです。こうなってくると、仕事に行かなくなり職を失ったり、家族とうまくいかなくなったり、酒代のために借金をしたりと、社会生活上の様々な問題が生じるようになりますが、それでも飲酒を続けてしまいます。
 また、身体面でも、肝障害や膵炎の他、様々な臓器に影響が出ます。適量飲酒ができない病気のため、治療は生涯、酒を完全に断つしかありませんが、これを続けることは大変困難であり、多くの人が再び飲み始めてしまいます。
  
◆飲酒週間の改善が重要
 このように、いったん依存が形成されてしまうと回復のために大変に努力が必要となるため、早い段階で適切な対応をすることが大切です。それには普段から適量の飲酒を心がけるとともに、飲まない日を作るようにしましょう。期間を決めて禁酒してみることも、自らの飲酒状況について見直す良い機会となります。
 適度に飲もうとしても抑えが利かなくなる、アルコールが原因で健康や仕事に不都合が生じてくる、周囲から飲酒量や生き方について注意される、といった問題が出てきたときは、専門医療機関や保健所に相談してみましょう。
国民生活センター「くらしの豆知識2007」より
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