糖尿病コントロール
 糖尿病は今、世界的に重大な健康問題となっています。
 あなたの周りにも、1人や2人糖尿病の人がおられるのではないでしょうか。それくらい多い病気です。40歳以上の10人に1人は糖尿病といわれ、日本では約750万人と推計されていて、糖尿病になる恐れのある「糖尿病予備軍」は約800万人以上いるといわれているのです。
 健康診断で「糖尿病の疑いがある」と診断されても、比較的自覚症状がないので治療せずに放っておくと、ゆっくりと進行し、気づけば合併症を引き起こし、手遅れになりかねない恐ろしい病気なのです。
 糖尿病の疑いがあるといわれた人は、自覚症状がなくても治療をし、合併症を防ぐことが命を守ることにつながります。
肥満は糖尿病の誘因となる
 厚生労働省の調査によると、糖尿病が疑われる人の約53%が過去に肥満であると報告されています。
 糖尿病は、インスリンが分泌されているのにもかかわらず、細胞に問題があり、インスリンの働きがうまくいかないインスリン抵抗性があり、肥満はインスリン抵抗性と深く関わっています。脂肪細胞(肥満)にたくさんの中性脂肪がたまった状態になると、インスリンの効きが悪くなってしまいます。
 また、脂肪細胞から「腫癌壊死因子」などが分泌され、インスリンの働きの邪魔をすることもあるのです。肥満は大敵といっても過言ではありません。
糖尿病または糖尿病予備軍と診断きれたら…
 まず、糖尿病の治療は、
1、食事療法
2、運動療法
3、薬物療法

 の3つが基本となります。
 
 糖尿病は最初自覚症状が少ないため、放って置く人が多いのですが、糖尿病、糖尿病予備軍と診断されたら、治療を開始します。そのままで生活していると必ず病状は進行してしまうからです。
 3つの基本の治療のうち、最も重要な治療は食事療法です。糖尿病は食事で取り入れた糖質をうまく代謝できないために起こる病気なので、食事のエネルギー摂取量を必要最小限に抑えなければいけません。
 日常の生活の中で注意して欲しいことは色々あるのですが、最低限これだけは頭に入れておいて実行していただきたいポイントがあります。
食事は三食バランスよく食べる
肥満にならないように、栄養バランスを考え、きちんと食事をする。無茶なダイエットや、不規則な食事のとり方はいけません。外食は一般的に高カロリーなので注意が必要です。どうしても外食になるときは、和食にして味付けの薄いものを選ぶ。
体を動かす
適度に運動を心掛けて欲しいのですが、日常で習慣付けることがある程度簡単にできる方法が「歩く」ことです。といっても、ダラダラブラブラ歩くわけではなく「歩く」を意識してしっかり歩いて欲しいのです。車を利用している人は、歩く量が少ないので、できるだけ電車、バスなどを利用し、駅の階段を利用したり、散歩の時間をもうけたり「歩く」を実行してください。
タバコは絶対に吸わない
たばこを吸うと血管が収縮し、血流障害から糖尿病に合併しやすい高血圧や動脈硬化などの危険を高めるので、タバコは絶対やめるべきです。
ストレスをためない
ストレスがインスリンの働きを、悪くしているといわれています。ストレスをためないような生活環境が望ましい。睡眠や休息を十分にとるようにしましょう。
風邪をひかないように注意
糖尿病の人は風邪をひくと肺炎など重症化しやすいので注意しなくてはなりません。うがいと手洗いは習慣づけましょう。
糖尿病には不可欠な制限
 糖尿病になると食事療法を始めることになります。ほとんどの人が「物足りない」と感じてしまうことになります。それまで好きなものを好きなだけ食べていた人にとっては、少々辛いことかもしれませんが、命が大事なら食事制限を乗り切らなければなりません。とはいっても、空腹感や物足りなさは最初だけで、だんだんと慣れてきます。調理の仕方を工夫して、カロリーを少なくしたり、ゆっくり食べることで満腹感も感じることができます。
 
ポイント1 油を使いすぎない
 妙め物に使う植物油は大さじ1杯で約90kcalと高カロリーです。揚げ物もできれば避けたいのですがどうしても食べたいときは油を吸った衣の部分は食べないようにするとか工夫してください。
 肉も焼いたりするより、しゃぶしゃぶのように脂肪を落とせるような調理をすると良いでしょう。また、マヨネーズやドレッシングには油が使用されているので、ノンオイルのものを使いましょう。
ポイント2 薄味の和食
 料理の味付けは薄味。味付けが濃いということはそれだけ塩などの調味料が多く使われているからです。薄味がどうしても苦手ならしょうゆの代わりにレモン汁やお酢などを代用しましょう。
 洋食や中華は、油や調味料を多く使っているものが多いので、和食で素材の味を楽しめるものが良いでしょう。
運動療法は慎重に
 まず、運動療法は事前にかならず主治医と相談することが大切です。血糖コントロールが悪い人が運動をすると、かえって血糖が上がってしまうことがあるので、運動は勝手に始めてはいけません。
 運動療法を始めるに当たっては、医師によるメディカルチェックを受け、指導に基づいてはじめなければ危険なのです。
 メディカルチェックは問診に始まり、診察、血糖コントロールの状態などを調べる臨床検査、胸部エックス線検査、心電図、合併症の検査などがあり、すべて踏まえたうえで医師がどの程度の運動が適切なのか判断します。
 メディカルチェックの結果、医師から特に問題が無いと診断されたら、運動をはじめることになりますが、急に激しい運動は健康な人でも負担が大きいので、少しずつ体を慣らしていくことです。やはり最初は軽いストレッチや体操、そしてウオーキングが無難かと思われます。
 運動療法の目的は無理なく長期間続けることでインスリンの働きを良くしたり、筋肉量を増やしてエネルギーを消費しやすくしていくことです。できれば毎日、無理なく続けられることが肝心です。
 運動を始めたら、決して無理をせず、体調が悪いときは運動を中止します。
 
こんな日は運動をしない
天候が悪い日(夏の熱中症に注意が必要)
体調が悪い(風邪気味、血圧が高いなど)
疲れが抜けない日
運動をすぐに中止する
・気分が悪くなる
・動悸、息切れがする
・めまい、たちくらみ
・頭痛
・関節が痛い
などの体調の変化
糖尿病患者のための教育入院
 糖尿病と診断されると、通常は外来で主治医らの指導を受け、治療を開始しますが、合併症に対しての不安や、治療への不安など、様々な問題に直面し、患者さんは戸惑いがちです。
 そんな患者さんの不安を取り除き、正しい知識と自己管理をしてもらうために、教育入院というものがあります。
 入院期間は約2週間程度で、この期間に検査や治療、日常生活での自己管理など指導してもらいます。
 正しい知識と自己管理は、糖尿病の患者さんにとっては大切なことなので、指導を受けるべきです。
 糖尿病の治療は 「主治医まかせ」では治りません。患者自身が生活改善に積極的に取り組み、きちんと治療すれば合併症を防ぐことができるのです。
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