急性膵炎(すいえん)の患者さんは年々増え続けていますが、特に男性に多い病気で、中高年層が最も多く、膵臓が腫れるだけで安易に回復する比較的軽症なものから、多臓器不全といって、心臓や肺、腎臓など重要な臓器が一度期に障害を受けるような、死に至ってしまう重症まで様々です。
 医療技術が発達し、死亡率はかなり下がってきていますが、重症にならないうちに早期発見、早期治療が重要です。  
 膵臓は、みぞおちとへその間に位置しており、形は左右に細長く、長さ約10cm〜15cm、厚さ約2cmで、30歳代のピーク時で約100g〜120gに達したあと、 徐々に減少していきます。  
 膵臓は、主に二つの異なる働きをしています。  
 一つは、血糖値を下げるホルモン(インスリン)や、血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)を生産し、血糖をコントロールしています。これを「内分泌機能」といいます。  
 もう一つの働きは、私たちが食べ物を食べた時の消化に必要な消化酵素〔炭水化物を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼ〕 などを含んだ「膵液」という消化液を分泌することです。これを「外分泌機能」といいます。  
 又、膵液には、胃酸を中和させる働きもあります。このように膵臓は皆さんにはあまり馴染みのない臓器かもしれませんが、胃や肝臓、腸などと同じように私たちのからだにとって非常に大切な役割を果たしているのです。
 
急性膵炎ってどんな病気?
 膵臓は、食べ物の消化に必要な色々な酵素を分泌していますが、膵臓が正常に働いているときは、それらの消化酵素が膵臓自体を消化してしまわないように安全に働いているのですが、何かの原因でうまく機能しなくなったときに、膵臓は自分で自分を消化し始めてしまうのです。この現象が起こると、膵臓に浮腫(むくみ)、出血、壊死などの急性炎症が起こるのです。  
 炎症を起こした膵臓からは、他の臓器に悪影響を及ぼす様々な物質が多量に出され、血液中に流れ込みます。 そのために、心臓、肺、肝臓、腎臓、消化器官などに障害が及んで機能しなくなることがあるのです。  
 急性膵炎の原因となることで一番多いのは、アルコール(お酒の飲み過ぎ)です。次に多いとされているのは胆石で、胆石が膵液の出口をふさいでしまうために起こるのです。原因不明のものもあり、それを「突発性」と呼んでいます。
 飲酒を続けていると、膵臓の分泌がアルコールによって刺激され、多量の膵液によって膵管の内圧が高くなり、膵炎が起こるという可能性と、アルコールそのものが体内で分解されるときに発生する物質が、膵臓の細胞を直接傷害する可能性があるのです。  
 胆石は、肝臓でつくられる胆汁の通り道にできる結石ですが、この胆石が胆管の中を移動して、膵液の出口をふさいでしまうと急性膵炎が起こります。
 
急性膵炎の症状
 まず、ほとんどの患者さんは腹痛を訴えます。上腹部に激しい痛みを訴える人が多く、しかし痛みの程度は個人差があるのも事実です。軽い痛みから、じっとしていられないほどの激痛までさまざまです。痛みは持続性で、痛む箇所もみぞおちからへそまで広い範囲におよんだり、痛む箇所が特定できなかったりする場合もあります。  
 上腹痛の次に多いのが吐き気と嘔吐です。吐いても腹痛は続きます。痛みを背部に感じる人もいますし、発熱を伴う人もいます。  
 他には、食欲不振や膨満感などの症状も訴えます。  
 このような症状は、徐々に出てくることもあれば、食事や飲酒の数時間後に突然激しい腹痛が現れることもあります。  
 痛みが楽になる場合もありますが、時間とともに重症になることもあるので、上腹部が痛んだり、背中に痛みを感じる場合は早めに内科、消化器科を受診することをお勧めします。  
 急性膵炎の多くは、軽症から中等症で、絶食と絶飲と輸液により順調に回復していくのですが、発症から2〜3日は経過を十分に観察しながら適切な治療をしますので、たいていの場合入院が必要となります。
 
 
膵臓を悪くしないためには
 膵臓にとって大きな負担になるのが、暴飲暴食や刺激の強い食べ物や飲み物などです。普段から満腹まで食べている人や、アルコールを飲む人は注意です。
 
 
ポイント
 脂肪食の過剰摂取は、膵炎のリスクが高くなります。栄養バランスのとれた食事をすること。脂身の多い肉や、揚げ物などはできるだけ控えましょう。  
 どれだけ飲酒をすれば発病するというような基準はないのですが、やはり一般的に飲みすぎは身体にとって良いことは一つもありません。お酒はほどほどに、「禁酒」と言われたら絶対に飲まないように。  
 急性膵炎や膵臓ガンは、発見が遅れると命にかかわります。早期発見と治療のためには定期的に健康診断を受けるようにして下さい。人間ドックも年に1回は受けることを お勧めします。
 
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