女性特有の病気が心配

 女性のからだは、出産機能が備わっているために、一生の間に大きく変化していきます。思春期に卵巣の機能が目覚め、卵巣ホルモンによって女性らしい体つきになり、初潮があります。18歳以上になると、排卵や月経のリズム、ホルモンのバランスが安定し、20歳ぐらいで生殖機能が完成し、それ以降、妊娠出産に適したからだになります。  
 30代後半から卵胞ホルモンの減少が始まり、更年期になると卵胞ホルモンが急激に減少し、排卵、月経が止まります。  
 平均50歳で閉経になり、生殖機能が終了します。このように女性のからだは大きく変化をするため、その変化とともに女性特有の病気にかかってしまうことがあるのです。  
 ここでは婦人科にかかる病気を説明します。一人で悩まず「おかしいな」と思ったら医師に相談してほしいと思います。
 
 
 【おりもの】
 おりものとは、膣、子宮頸管、子宮体部などからの分泌物で、女性ホルモンの影響を受けて分泌されます。  
 おりものから膣炎や子宮ガンといった病気の有無などがわかるので日頃からその状態をチェックしておけばいつもと違う変化をみつけやすく早期に異常を発見することが可能です。

※正常なおりもの  
透明または乳白色で乾燥すると薄黄色になります。 無臭または少し甘酸っぱいようなにおいがあり、量は個人差がありますが、下着につく程度の量で、排卵期や生理直前には増えます。  
 
 
 
カンジダ膣炎
 真菌の一種のカンジダは普段からある程度はからだの中にいる菌です。病気や疲労、妊娠などで抵抗力が低下している時や、ホルモンのバランスがくずれたときなどに増殖し、炎症を起こします。又、セックスの相手がカンジダに感染している場合に移ることがあります。  
 
〜症状〜
 外陰部が痛がゆくなり、カッテージチーズのような白いおりものが増えます。放置すると外陰部にまで炎症が及び、外陰部が赤くはれ上がったりただれたりします。
 
〜治療〜
 膣内を洗浄し、膣座薬を入れます。2〜3日で症状は治まりますが、これで完治したわけではないので、医師の指示に従い完治するまで1〜2週間は治療を続けましょう。  
 膣炎を繰り返してしまう人は、通気性の良いスカートやむれない綿100%の下着をつけ、常に清潔にしましょう。おりものシートを使う人がいますが、むれやすいため、おりものがさほど多くない時は使用せず、下着をこまめに替えるほうが良いでしょう。
 
 
細菌性膣炎
 膣付近の皮膚にいる大腸菌やブドウ球菌、溶連菌などの一般細菌によって起こる膣炎で、抵抗力が弱っている時や何らかの原因で膣内の自浄作用が弱まっているときに下痢などをきっかけに発症することが多いです。又、タンポンの出し忘れなども原因となることがあります。
     
〜症状〜
 黄色〜茶褐色、黄緑色のおりものが増え、膣内が赤くはれ上がりますが、かゆみはあまりありません。タンポンの出し忘れなどは悪臭がします。 
 
〜治療〜
 膣の洗浄、膣座薬、抗生剤の投与が行われます。普段から手をよく洗い、セックスの前もパートナーにも手を洗うように気をつけて下さい。排便後に便が膣周辺に残らないように清潔にします。ガードルなどは使用せず、通気性の良い下着やスカートなどの服装にすること。  
子宮筋腫
 子宮筋腫とは子宮の壁にできる良性の腫瘍です。腫瘍は1個から多いときは20個近くできているときがあり、大きさも大豆ほどのものから子どもの頭くらいの大きなものまで様々です。成人女性の5人に1人は筋腫を持っているといわれています。原因ははっきりとしませんが、遺伝的な要素や卵胞ホルモンの影響などが考えられています。  
 子宮筋腫は良性の腫瘍なので時間が経過すると悪性化するということはありませんが、なかには子宮肉腫とまぎらわしいものがあるので、定期的な検査をするほうが良いでしょう。子宮筋腫があるかないかは問診と内診でほぼわかるのですが、診断を確定するには超音波検査(エコー)やMRIを行います。  
 筋腫の大きさや位置などが把握できます。
 
〜治療〜
 筋腫が小さくてあまり症状が無い場合は、経過観察を行いますが、貧血などの症状があり、生活に支障があるときは、増血剤などの治療をします。筋腫が大きくなった時や、不妊や流産の原因になるとき、過多月経、生理痛、貧血のひどいときは手術によって筋腫を摘出します。  
 子宮筋腫の手術は、子宮全体を摘出する場合と、筋腫の部分だけを切り取る場合があります。出産を希望する女性の場合、筋腫の大きさや部位にもよりますが、筋腫があると、不妊の原因になったり、妊娠しても流産しやすくなったりします。不妊の原因が筋腫にある可能性が高い場合、手術によって筋腫を取り除けば妊娠の可能性を高めることもできます。  
 たとえ筋腫があっても妊娠、出産している人は多く、不安がある人は医師に相談しましょう。
 
 
子宮内膜症
 子宮の内面をおおっている膜を子宮内膜といい、通常、子宮内膜は妊娠しない限り、月経として体外に排出されます。月経が終わると、卵巣から分泌されるホルモンによって増殖して受精卵の着床を待ち受け、着床が無いと、剥離して月経となります。この子宮内膜の組織が何らかの原因で他の場所に飛び火した状態になり、飛び火した場所で増殖と剥離を繰り返してしまいます。剥離した血液の行き場がなくその場に溜まってしまい、周囲の臓器や組織と癒着し、下腹部痛などの症状を起こすものです。
 
〜症状〜
 進行するにつれ、生理痛が激しくなり、周囲の臓器や組織と癒着すると臓器や膜が引き連れたりして、生理以外の日でも下腹痛があります。その他、腰痛、排便痛、下痢、むくみなどの症状を訴える人もいます。又、性交痛がある人も、子宮内膜症を疑わなければいけません。
 
〜治療〜
 子宮内膜症はそれほど怖い病気ではありませんが、なかなか根治しにくい病気でもあります。20〜30代でこれから妊娠の可能性がある人の場合は、多く薬物療法が試みられ、それ以外の人は手術療法が行われています。その辺りのことは主治医とよく話し合うことです。
 
 
子宮頸がん
 子宮の入り口にできるがんで、子宮がん全体の約70%を占め、30〜60代まであらゆる年代に見られますが、40〜50代がもっとも多くなっています。  
 原因は色々考えられているのですが、性交開始年齢が早い人、性交渉のパートナーが多い人、多産の人に多い傾向があります。  
 最近では、子宮頸がん患者からヒトパピローマウイルスが検出されていることから、ウイルスが関与していることが指摘されています。ヒトパピローマウイルス(HPV)は性器に多く存在するウイルスで、セックスで感染しますが、大半の人は免疫力によってウイルスを追い出しますが、一部の人はがん化するようです。
 
〜症状〜
 がんはもろい組織であることから、出血したり、おりものが増えたりします。生理以外の出血(不正性器出血)や、異常なおりもの、性交痛などがあったらすぐに婦人科でがん検診を受けることが大切です。不正性器出血があっても生理不順だと思い違いをしたり、閉経となって実際には生理が終わっているのに、不規則な生理が続いていると勘違いしたりして受診が遅れると、がんの発見が遅れるので注意が必要です。
 
〜治療〜
 治療するにあたり一番重要となってくるのが早期発見です。異常を感じたらためらわないですぐに婦人科を受診すること。子宮頸がんの治療は大きく分けて外科療法(手術)、放射線療法、抗がん剤治療の三つです。がんの進行度によって治療法も異なります。いずれにせよ早期に発見するほど体の負担は少なく済みます。 
 
 
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