広報誌 健康倶楽部/2010年4月号

神経痛(三叉神経痛・肋間神経痛・坐骨神経痛)

 神経痛とは特定の末梢神経の支配領域に急に起こる激しい痛みのことを言いま す。痛みは針で刺されたような鋭い痛みで不規則な感覚でくり返し起こります。

 

<神経痛の特徴>

@痛む部位が1本の末梢神経の支配領域に一致している

A鋭く激しい痛みが突然おこり、持続時間が数秒〜数分と短く、 いったん痛みが治まっても再発をくり返す

B痛みの治まっているときに、痛みの生じる末梢神経の部位を指で押すと痛みがおこる

C痛みが治まっているときに、痛みの生じる皮膚や粘膜を指で刺激すると痛みが誘発される

D咳きやくしゃみをしたり、特定の姿勢をとったりすると痛みが誘発される

E中年以降の人に発症が多い

神経痛は原因のわかる「症候性神経痛」と原因がわからない「突発性神経痛」とに分類されています。

「症候性神経痛」は診察や検査で、末梢神経を刺激して痛みをおこしている病変(骨の変形や帯状疱疹など)、腫瘍、外傷などが見つかる神経痛で本 人が自覚していなくても、精密検査を行ってみると、筋肉の萎縮や運動障害、発疹、しびれ、こわばりなどの障害が明らかにされるケースが少なくありません。一方、「突発性神経痛」は、検査を行っても痛みをおこす病変が見つからない神経痛です。

三叉神経痛

三叉神経痛 三叉神経は、第5脳神経といい、知覚枝と運動枝から成り、神経痛と関連するのは、知覚神経の部分でその神経節は目の奥に相当する場所にあります。 顔面が痛むことから、俗に顔面神経痛とも呼ばれているようですが、顔面神経は顔の筋肉を動かす運動神経であって、この神経が刺激されても痛みを感 じることはありません。

 痛みの発生で最も多い訴えの部分は頬の部分を中心とした領域です。次いで、目の下の部分や目の上にあたる前頭部などです。

 神経痛の中でも三叉神経痛が最も多く、男性より女性の患者がやや多く、40〜50代に発病することが少なくありません。

 症状としては、鋭い痛みが顔面の片側に突然起こります。くしゃみ、あくび、会話、洗面、冷風といったことが刺激となって突然痛み出すことが多いようです。

 三叉神経痛の治療は、脳腫癌や脳動脈癌の圧迫など原因がはっきりしている場合はそれに対する治療を行います。手術や高周波電流を流す治療などがあります。

肋間神経痛

 肋間神経は、肋骨の間を走っていて、背中(胸髄)から出て、胸腹部に分布する末梢神経(胸髄神経)で、右側と左側のそれぞれに12本計24本あります。上部(首に近いほう)の7対は肋骨に沿い、肋骨に向かって伸びています。下部(腹部のほう)5対は、前下方に向かって伸び、腹部に分布します。  

 この肋間神経に沿って痛むのが肋間神経痛です。症状は背骨から片側の1本の肋骨に沿って激しい痛みが突然起こります。肋骨に沿った部位や腹直筋の上で押すと痛みのおこる圧痛点が存在することが少なくありません。帯状疱疹ウイルスやコサッキーウイルスによる感染や風邪などでもおこる場合があります。その他、狭心症や胸膜炎などの内臓疾患の放散痛としてあらわれることもあります。

 深呼吸をしたり、咳、くしゃみ、大声などで痛みが誘発されるほか、痛みの無い側へからだを曲げ、肋間神経を伸ばすようにしても痛みが誘発されます。

坐骨神経痛

坐骨神経痛 坐骨神経は人体中で最大最長の末梢神経で、鉛筆の太さくらいもあり、1m以上もある長い神経です。腰椎下部と仙骨上部に始まり、骨盤を貫通して大腿後面に沿って下行し、ひざの後で分かれて下腿の前後面に分布します。 このため、この神経が刺激されると片側のでん部、大腿の後面、ふくらはぎが痛み、踵やくるぶしのほうまで痛みが響くことがあります。原因は色々あって、椎間板ヘルニア、腰椎症、腫瘍などでも起こることもあるので必ず専門医の検査を受けて原因を明らかにし、治療することが大切です。  

 症状としては安静にしても多少痛みが続いていることが多いものです。咳やくしゃみなどで痛みが下方にまで響き、からだを曲げたりすると痛みが強くなります。また、脚のしびれ、知覚のにぶさ、腱反射の異常などがみられる場合もあります。

 神経痛が疑われる時は、内科か神経内科を受診するとよいでしょう。骨に原因がある時は整形外科の担当になります。原因を明らかにし、それを治療することが先決ですが、一般的に次のような治療が行われます。

薬物療法

 解熱鎮痛薬、非ステロイド抗炎症、筋弛緩薬、抗けいれん薬、ビタミン剤などの使用で痛みを和らげます。

安静保護療法

 痛むときは無理をせず休養をとります。痛みが和らぐ姿勢を保ち、安静を心がけます。痛む部位を冷やさないようにし、コーヒー、アルコール、香辛料などの刺激の強いものやタバコなどは避けたほうが良いでしょう。

理学療法

 おもに整形外科で行われる治療法で、痛みの原因が存在する部位の負担を取り除く牽引療法や、痛む部位を固定して安静を保つコルセットや頸推カラーの装着のほか、痛む部位を温める赤外線照射などが行われます。

神経ブロック

 痛みのおこる末梢神経に麻酔薬を注入し、痛みを止める治療法です。ペインクリニックを実施している医療機関で受けられます。

鍼灸療法

 鍼や灸でいわゆるツボを刺激し、痛みを抑える治療法で、人によってはかなりの効果があるといわれています。

手術

 椎間板ヘルニア、背椎や脊髄の腫瘍などは、手術は第一の治療法ですが、手術が必要かどうかは医師とよく相談しましょう。

 

【家庭でオススメの温浴】

神経痛に冷えは大敵です。体を温め血行を良くすると、筋力や関節がやわらぎ、痛む部位へ酸素や栄養素がどんどん送られ、老廃物や痛みを起こす物質が取り去られ、結果として炎症がおさまります。

手軽に家庭で温泉のような効果を得る入浴

温浴

【手軽に家庭で温泉のような効果を得る入浴】

・塩湯

浴槽に粗塩をひとつかみ入れ、入浴します。塩化マグネシウムや塩化カルシウムが皮膚の表面に付着し、水分の蒸発を防いで体温が外に発散するのを抑える働きをするので、湯冷めを防いで入浴後も体がいつまでも温かいのが特徴です。

・柑橘湯

ミカン、レモン、ゆずなどの柑橘類の皮を、ガーゼなどで包んで風呂の水と一緒に沸 かします。柑橘類の皮にも保温効果を高める働きがあります。

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