広報誌 健康倶楽部/2010年5月号
閉経前後の10年間くらいは更年期といわれ、この時期は約80%の女性が何らかの不快な症状を訴えることが多くなります。
疲労感、倦怠感、ほてり、のぼせ、肩こり、汁をかきやすい、手足の冷え、しびれ、頭痛、腰痛、不眠、うつ状態、無気力などの症状に悩まされる人が多いようです。
原因は、卵巣の機能が40歳ごろから衰え、卵巣が分泌する卵胞ホルモン(エストロゲン)が減少するためです。エストロゲンは、排卵、月経、妊娠、出産などに関わるな女性ホルモンで、脳の中枢から出される性腺刺激ホルモンの指令を受け分泌され、ホルモンのバランスを保つようにコントロールされています。ところが、40歳を過ぎる頃からエストロゲンが急速に減少すると、これを回復させようと脳の中枢は賢明に性腺刺激ホルモンを分泌します、脳の中枢は他にも甲状腺や副腎のホルモンを調整したり、自律神経や免疫などの機能を制御しているため、性腺刺激ホルモンの過剰分泌でホルモンのバランスが乱されます。その結果、前述のような不定愁訴に悩まされるのです。
卵胞ホルモン(エストロゲン)は、粘膜や皮膚の潤いを保つ作用があるので、欠乏すると皮膚の乾燥やシワ、たるみなど、肌の老化が加速します。閉経後は膣粘膜の乾燥による性交痛や出血が見られることもあります。また、膀胱や尿路の粘膜も萎縮するため、頻尿や排尿困難になる人もいます。
エストロゲンが不足すると、骨がもろくなったり血管が弱くなるので、閉経後10年もたった頃、骨粗鬆症や動脈硬化が現れる人も多くなります。ですから、更年期には、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが不足しないようにしなければなりません。
更年期を快適に乗り切るためには、毎日の食事で栄養が偏らないように規則正しく取ることが大切です。特に大豆に含まれるイソフラボンは、エストロゲンとよく似た働きをするので、更年期の不快症状を緩和してくれます。豆乳や豆腐などを積極的に取りましょう。又、ビタミンEは血行を促し、ホルモンバランスを伴える働きがあります。ナッツ類やかぼちゃに多く含まれています。
更年期は子どもも成長し、独立したり、親の介護や死など今までの生活と異なる出来事が多くなるので不定愁訴を、悪化させるストレス要因も多い年代です。悩みを相談できる友達や趣味をもったりして楽しく前向きに暮すことも、予防に繋がります。
更年期の症状がつらい場合は我慢せず婦人科を受診しましょう。更年期症状を緩和する治療法として最近注目されているのが、ホルモン補充療法(HRT)といわれるもので、錠剤以外にも張ったり塗ったりして使用する薬も出ています。ただし、副作用が起こる可能性もあるので医師と十分に相談することが必要です。
ホルモン補充療法は、減少する女性ホルモンの一種であるエストロゲンなどを補う治療法で1970年代から欧米を中心に広まり2000年以降国内でも浸透するようになりました。
ホルモン補充療法ガイドライン2009年度版によると、
ホルモン補充療法の主な効果は
ホルモン補充療法で起こる可能性のある主な副作用は
などです、ホルモン補充療法の効果は個人差が大きいので、よく医師と相談しましょう。