広報誌 健康倶楽部/2010年7月号

若い女性に多い「バセドウ病」

 バセドウ病は20〜30歳代の若い女性に多い病気です。 ちょうど就職、結婚、妊娠、出産など人生の大きな節目となるできごとが重なる年代で、それが病気の発症に深くかかわっていたり、治療を受けるうえで大きな不安材料になったりしています。なかには、バセドウ病になると治らない、子どもを産めないなどと心配する人もいますが、これは大変な誤解です。病気について正しく理解して適切な治療を受ければ、子どもも産めますし、普通に生活することができます。

 

 バセドウ病は、免疫の異常によって起こる自己免疫疾患です。私たちの体には、外敵から身を守る免疫機能が備わっていて、細菌やウイルスなどが侵入したとき、抗体をつくって排除しようとします。自己免疫疾患では、何らかの理由でこの免疫システムに異常が起こり、自分の体の成分も敵とみなし、自分自身を攻撃する抗体をつくり出してしまうのです。  

 バセドウ病の典型的な症状は、首(甲状腺)が腫れる、目つきが鋭くなる、食欲はあるのに体重が減るなどです。その他、どうき、不整脈、頻脈、高血圧、イライラ、のぼせ、多汗、疲れやすい、のどの渇きなどもよくみられる症状です。

 バセドウ病の治療法には薬物療法、アイソトープ療法、手術療法の3つがありますが、特に事情がない限りは薬物療法が第一選択になります。

 手術療法は、甲状腺を少しだけ残して切り取る治療法です。早く治したい人、甲状腺の腫れの大きい人、抗甲状腺薬が使えずアイソトープ療法も希望しない人などが対象になります。

 

抗甲状腺剤の内科療法

病気の軽い人や甲状腺腫が小さい人などですが1年〜数年間の服用が必要です。

長所*外来治療 *治療効果が可逆性 *妊娠・授乳が可能

短所*治療期間が長い *實解率が低い *副作用(白血球減少症、薬疹)

適応*年齢の制限はない *甲状腺腫の小さい人 *薬を規則的に服用できる人

 

甲状腺亜全摘術の外科療法

甲状腺腫が大きく、早く確実に治したい人ですが、入院が必要で傷跡が残ります。

長所*短期に實解が得られる *永久實解率が高い

短所*入院が必要 *手術瘢痕が残る *術後の反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症はまれ

適応*若年者から中年者 *薬の副作用がある人 *甲状腺腫が大きい人

    *甲状腺腫瘍の合併している人 *社会的事情(早期に確実に實解希望の人)

 

アイソトープの放射線療法

50歳以上で甲状腺腫が小さい人ですが、将来甲状腺機能低下症になる可能性があります。

長所*治療が簡単 *永久實解率が高い

短所*妊娠中、授乳中は不可 *晩発性甲状腺機能低下症の発生が多い

適応*50歳以上の人 *手術後に再発した人 *3ケ月以内に妊娠の可能性のない人

 

生活リズムを規則正しく、過労やストレスをためず、たばこは吸わない

 バセドウ病は、もともと遺伝的になりやすい素因をもっている人が、精神的に大きな打撃を受けたときなどに、それをきっかけに免疫異常を起こして発症しやすくなることがわかっています。遺伝的な素因と環境的な因子が組み合わさって発症すると考えられるわけです。それだけに、精神的なストレスが過剰にならないように注意することが大切です。  

 さらに、抗甲状腺薬での治療中にイライラするようなできごとが多いと、治療効果が低くなることもわかっています。過剰な精神的ストレスは発症の引き金になり、日常的なイライラは治療を妨げたり、再発のきっかけになりやすいというわけです。

 バセドウ病の発症を防いだり治療効果を高めるには、まず、十分な睡眠をとって生活リズムを規則正しくすることです。体の疲れや精神的なストレスをため込まないように、また、過度の運動で過労に陥らないように注意しましょう。音楽を聴く、本を読む、絵を描く、森林浴をするといったリラックス法もおすすめです。

 また、喫煙はバセドウ病発症のリスクを高めるだけでなく、治療を長引かせ、再発率を高めることがわかっています。とくに女性への影響は大きいので、たばこを吸っている人は禁煙しましょう。

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