広報誌 健康倶楽部/2010年7月号

C型肝炎についての正しい知識

 日本でのC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)は150万人以上存在すると推定されていますが、自分自身が感染していることを自覚していないC型肝炎ウイルス持続感染者が多く、さらに感染者の中から肝硬変や肝がんへ移行する可能性もあります。  

 C型肝炎に関する正しい知識をもつことで、病気の早期発見や重症化を予防することができます。また感染者に対する言われなき差別や偏見の除去にもつながります。

 C型肝炎は、C型肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気です。C型肝炎ウイルスは、主として感染している人の血液が他の人の血液の中に入ることによって感染します。具体的には次のような場合に感染が起こることがあります。

 

※C型肝炎ウイルスが含まれている血液の輸血等を行った場合

※注射針・注射器をC型肝炎ウイルスに感染している人と共用した場合

※C型肝炎ウイルス陽性の血液を傷のある手で触ったり、針刺し事故を起こした場合(特に保健医療従事者は注意が必要)

※C型肝炎ウイルスに感染している人が使用した器具を適切な消毒を行わずそのまま用いて刺青やピアスの穴あけなどをした場合

※C型肝炎ウイルスに感染している人と性交渉をもった場合(ただし、まれ)

※C型肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた子ども(ただし、少ない)

 

常識的な社会生活を心がけていれば日常生活の場でC型肝炎ウイルスに感染することはほとんどないと考えられています。

なお、次のような場合はC型肝炎ウイルスには感染しません。

・C型肝炎ウイルスに感染している人と握手した場合

・C型肝炎ウイルスに感染している人と抱き合った場合

・C型肝炎ウイルスに感染している人とキスした場合

・C型肝炎ウイルスに感染している人の隣に座った場合

・C型肝炎ウイルスに感染している人と食器を共用した場合

・C型肝炎ウイルスに感染している人と一緒に入浴した場合 などです。

 

 日本では、平成元年(1989年)11月に全国の日赤血液センターにおいて、C型肝炎ウイルス(HCV)感染予防のための検査(HCV ClOO−3抗体検査)が世界に先がけて導入されました。そして、その後の研究の急速な進歩にあわせて、平成4年(1992年)2月からは、より制度の高い検査(HCV抗体検査)にいち早く切り替えられたことから輸血によるC型肝炎ウイルスの感染はほとんどみられなくなりました。  

 さらに平成11年(1990年)10月からは抗酸増幅検査(NAT)によるHCV RVAの検出が全面的に導入され、血液の安全性は一段と向上しています。

 平成4年(1992年)以前に輸血や臓器移植手術を受けたことがある方は当時はC型肝炎ウイルスに汚染された血液か否かを高感度で検査する方法がなかったことから、C型肝炎に感染している可能性があります。

 また、平成6年(1994年)以前にフィブリノゲン製剤の投与を受けた方(フィブリン糊としての使用を含む)、または、昭和63年(1988年)以前に血液凝固第[、第\因子製剤の投与を受けた方は、これらの製剤の原料(血液)のウイルスの検査、C型肝炎ウイルスの除去、不活化が十分なされていないものもあったので、C型肝炎ウイルスに感染している可能性があります。フィブリノゲン製剤は、産科の疾患、その他で出血が多かった方や、大きな手術をされた方に使われた可能性があります。

 前記に該当する方は、かかりつけ医に相談の上、C型肝炎ウイルスの検査を受けることをお勧めします。

 

C型肝炎ウイルスの感染を調べるには

 C型肝炎ウイルスの感染を見つけるためには、血液検査でウイルスマーカー検査をします。肝炎のウイルスマーカー検査では、肝炎ウイルスがつくるたんぱく(抗原)とそのたんぱくに対する抗体、ウイルスの遺伝子などを調べることによって現在や過去の肝炎ウイルスの感染状況を知ることができます。  

 C型肝炎ウイルスに感染すると体の免疫反応が起こり、HCV抗体がつくられるのでこれが陽性であれば感染したことがわかります。

 

C型肝炎の症状

 C型肝炎のウイルスに感染すると、全身倦怠感や食欲不振、悪心嘔吐などの症状が現れます。これらに引き続いて黄疸が出現することもあります。他覚症状として肝臓の腫大がみられることがあります。これが急性肝炎の症状ですが、一般にC型急性肝炎ではA型あるいはB型に比べて症状が軽いため、ほとんどの人では自覚症状がないと言われています。また慢性肝炎の場合にも多くの人で自覚症状がない場合が多いと言われています。

 

C型肝炎になると肝硬変や肝がんに進行する可能性が

 C型肝炎ウイルスに初めて感染した場合、70%前後の人が持続感染の状態に陥り(キャリア化)、その後慢性肝炎になる人も多く、さらに一部の人では肝硬変、肝がんへと進行するといわれています。  

 C型肝炎ウイルスに持続感染している40歳以上の百人を選び出すと、選び出した時点で65〜70人が慢性肝炎と診断されます。また、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)百人が適切な治療を受けずに70歳まで過ごした場合、10〜16人が肝硬変に20〜25人が肝がんに進行すると予測されています。

 しかし、適切な治療を行うことで病気の進展を止めたり、遅くしたりすることができるので、C型肝炎ウイルスに感染していることが分かった人は必ず定期的に医療機関を受診することが大切です。

 

C型肝炎の治療

 C型肝炎の治療法には、大きく分けて、抗ウイルス療法(さまざまな種類のインターフェロンを用いた治療法、インターフェロンとリバピリンの併用療法など)と肝庇護療法の二つの方法があります。  

 インターフェロン治療の適否は、全身状態、C型肝炎の病期、活動度の他に血液中のウイルスの量や遺伝子型などによって左右されます。

 抗ウイルス療法により十分な効果が得られなかった場合でも、肝庇護療法で肝炎の活動度を抑えることで、慢性肝炎から肝硬変への進展を抑えたり、遅らせたりすることができます。肝硬変がある程度以上進んだ段階では、肝庇護療法を行いながら定期的にエコー検査などを行い、肝がんの早期発見、早期治療を目指すことになります。

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