広報誌 健康倶楽部/2010年7月号

夏になると気になる“わきが”

 汗に特有の不快なにおいを発する症状をわきがと呼んでいます。わきの下、外陰部、おへその周囲、乳輪などにあるアポクリン腺という汗の出る腺から分泌した汗の一種が細菌などに汚染されてにおいを発するもので生理的な現象なのですが、そのにおいが異臭のため、人によっては嫌います。  

 わきの下には汗を出す二つの汗器官が密集しています。一つはエクリン腺といい、皮膚の表面に開口部をもち、暑いときは大量の汗を出し、寒いときは微量の汗しか出さないという作用で体温を調節したり、皮脂と混ざり合って皮脂膜をつくる作用などをしています。もう一つはアポクリン腺です。開口部は毛根部に開いています。わきの下、外陰部、おへその周囲、乳輪に限られ、数もごくわずかです。アポクリン腺から分泌されるのは、エクリン腺から分泌される汗とは、性質が違っています。黄色みを帯びた乳液状をした液体で、エクリン腺が出る汗ほど多量に出るわけではありません。

 アポクリン腺から分泌する汗は思春期前後から分泌し始め、壮年期に盛んになり、老年期になると衰退することや、女性では月経前後や妊娠中などに分泌が盛んになることがあります。

 分泌されてから数時間たつと異臭がし始め、時間がたてばたつほど強くなります。分泌された直後は全く無臭ですが、分泌されたあと、毛根付近に常在する細菌類の影響を受けて異臭を放つものと考えられています。

 また、精神活動が盛んになると分泌量が多くなります。精神的な興奮、快感、緊張などがあると、下着やシャツのその部分が黄色に染まるほど分泌することがあります。

 わきがを気にしすぎると精神の緊張がおき、かえってアポクリン腺の分泌を促し、異臭を増大させるので、気を楽にし、気にしないことも大切です。

 

わきがの治療

 社会の生活にまで支障をきたすような場合は、アポクリン腺の摘出手術や電気分解によってアポクリン腺の開口部を塞ぐ方法もあるので、医師とよく相談して下さい。  

 軽症の場合は、塗り薬でかなり軽減できます。市販の制汗剤の外用もある程度効果があります。

 

生活上の注意

・局所を常に清潔に保ち、下着は毎日とりかえる

・汗をかいたらウェットティッシュやぬれタオルで清拭する

・にんにくなどのにおいの強い香辛料などは避ける

・わき毛を抜くことも有効です

 

 わきがに有効な石鹸があるのをご存じでしょうか?トルマリンを配合したものやハーブを練りこんだものなどがたくさん販売されています。  

 どれが一番効果的かは、使用する人の体質や臭いの質によるため一概には言えませんが、わきが対策石鹸を選ぶときのポイントは、できるだけ制汗作用の高いものを選び、殺菌作用の強いものは避けるようにしたほうがよいでしょう。これは皮膚の善玉菌を殺しすぎると、悪玉菌が繁殖しやすくなるからです。そして善玉菌のほうが殺菌剤に弱いという傾向があると言われています。石鹸選びと並んで大切なのが、石鹸を使うときの洗い方です。わきがの人は自分の臭いを気にしていますから、ついつい無意識にゴシゴシと力を入れてしつこくわきの下を洗ってしまいがちですが、これは皮膚を傷つけ、バイキンが繁殖する温床となり、かえって悪臭を発する危険性があります。そして殺菌作用の高い石鹸は皮膚への刺激も強く、かぶれや湿疹などの原因にもなる場合がありますので注意しましょう。

 

漢方療法

・防己黄耆湯 

色白で筋肉がやわらかく、俗に言う水太りの体質で疲れやすく、尿量が少なく、汗をよくかく人に用います。

 

・桂枝加黄耆湯

一般に体質が虚弱な人に起こる全身性多汗症に用います。

 

・竜胆瀉肝湯 

比較的体力の ある人で、皮膚の色が黒っぽく、腹直筋が緊張し、肝機能に障害があったり、泌尿器、生殖器などに疾患があるような人のわきがに用いてよいことがあります。

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