広報誌 健康倶楽部/2011年5月号

自覚症状がない動脈硬化

 動脈硬化とは、動脈の血管の内側にコレステロールと線維などのプラークがたまって血管が狭くなったり、弾力がなくなってもろくなったりする状態をさします。

 このプラークが突然破裂すると血栓ができて完全に血管がつまり、心筋梗塞や脳梗塞といった怖い病気がおこります。現在、日本人の死亡原因の1位が悪性新生物(がん)2位が心疾患、3位が脳血管疾患、となっています。

 2位と3位は動脈硬化が原因になっている場合が多い病気です。しかし、動脈硬化そのものには、自覚症状がありません。

 ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞を起こして初めて動脈硬化に気づくこともまれではありません。

<動脈硬化を進行させる危険因子は…>

 @脂質異常症

 悪玉コレステロール(LDL)値が高すぎるあるいは善玉コレステロール(HDL)値が低すぎるなどの状態である。

 A高血圧

 高血圧ですと、血管にかかる圧力が高くなり、血管がもろくなります。もろくなった血管の壁に悪玉コレステロールが侵入しやすくなります。

 B糖尿病

 糖尿痛患者では、血糖が血管の壁を傷つけるため、悪玉コレステロールが血管の壁の中に入り込んでしまう。

 C喫煙

 タバコの煙には、様々な有害物質が含まれています。一酸化炭素はHDLコレステロールを減少させ、血管の内皮を傷つけます。ニコチンは血圧の上昇や心拍数を上昇させます。間違いなく血管の機能を低下させるので、喫煙はやめましょう。

 D加齢

 加齢に伴い動脈硬化は進行します。

 Eその他

 先天性の異常、薬の副作用、運動不足、ストレスなど

 

 このようにさまざまな誘因によって、動脈硬化が加速されます。この中でも一番の元凶といわれるのが脂質異常症です。

 脂質異常症とは、血液中の脂質の量の異常です。LDLコレステロールや中性脂肪が多かったり、逆にHDLコレステロールが少ない状態のことです。特に注意したいのは、血液中のLDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロールのバランスが崩れた状態である、高LDLコレステロール血症と低HDLコレステロール血症です。

脂質異常症の診断基準(空腹時採血)

※日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」

 高LDLコレステロール血症  LDL-C     140mg/dl以上
 低HDLコレステロール血症  HDL-C      40mg/dl未満
 高トリグリセライド血症  トリグリセリド 150mg/dl以上

<動脈硬化の検査>

 動脈硬化の状態を調べる検査及び合併症を調べる検査を行って診断します。一般的に次のような検査が行われます。

@問診

 現在の症状、糖尿病、脂質異常、高血圧などの病歴や喫煙の有無、食習慣、運動量、ストレス、家族の病歴など

A血圧測定

 血圧が高いほど動脈硬化の存在する可能性が高くなります。

B血液検査

 血液中のコレステロール、中性脂肪、ヘモグロビンA1C、尿酸などを測定し、脂質異常症、高尿酸血症などの有無を調べます。

C尿検査

 糖尿病や高血圧にともなう腎障害などを調べます。

D心電図検査

 心筋梗塞や狭心症などの波形の異常を調べます。

EX線検査

 胸部や腹部のX線で大動脈の石灰化や瘤化による拡大などがわかることがある

F眼底検査

 眼底検査では動脈を直接観察できます。高血圧や糖尿病があるときは、出血や血管新生などの変化が現れることもあります。

G超音波検査

 頚動脈のプラーク(動脈硬化巣)の厚みや範囲などを測定したり、大動脈瘤の有無、血流の速度などを調べることができます。

HCT

 脳梗塞や脳出血の有無、動脈の石灰化病変などがわがります。

IMRI

 脳梗塞や脳出血の有無などに有用です。CTで異常を認めないような数時間以内に生じた脳梗塞についても診断できます。

<治療の基本は生活習慣の改善>

 動脈硬化を進行させないためには、バランスのとれた食事、運動、禁煙といった生活習慣の改善がとても大切です。薬物治療などを行ったとしても、生活習慣を改善しなければ効果が不十分になってしまいます。食事療法では、過剰にエネルギーを摂取しないように注意し、動物性脂肪を多く摂取しないように気をつけること。また、青背の魚(イワシ、サバ、サンマなど)に含まれる多価不飽和脂肪酸には、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させ、血液を固まりにくくする働きがあるので、積極的にとりましよう。

 コレステロールの吸収を抑える効果がある食物繊維も積極的にとるようにしましょう。

 運動は息が上がらない程度の運動を一日30分以上、出来れば毎日行うことを目標にします。しかし、何らかの病気、特に心臓や血管の病気を持つ人の場合、運動により不都合を生ずる場合があるので、運動する前に医師の診察が必要となります。

<その症状は動脈硬化では?>

◆中高年者で、歩くとふくらはぎや足先が痛んだり、しびれたりするという人は動脈硬化が原因となっている場合があります。ひどくなると動脈硬化によって脚に血が通わなくなってしまうことも。

◆めまいの症状を訴える人の中にも高血圧や動脈硬化からくるものが意外に多く、内耳の方に異常がないのにめまいの症状がある人は、急な血圧の上昇、あるいは下降による脳の循環障害が原因のことも。高血圧や動脈硬化からくるめまいは、脳出血や脳梗塞の前触れの可能性が高いことを知り、十分注意してください。

◆性格や表情が以前と変わっていませんか?これまで温厚だった人が急に短気になったり、怒りっぽくなったりしていませんか。表情が以前と変わったり、忘れっぽくなったりするのも要注意、脳の血流が悪くなっている可能性が大です。

◆視力が低下したり、視野の一部が欠けてしまうことがある病気のひとつに「網膜静脈閉塞症」という病気があります。これは動脈硬化に関する目の代表的な病気で、網膜の静脈の流れが悪くなり、または詰まって出血が起こるがらです。

 

 動脈硬化は老化現象の一つですが、高血圧にも密接に関係してます。特に肥満、運動不足を解消し、食生活を改めるように心がけてください。

 

 

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