広報誌 健康倶楽部/2011年6月号
近年のペットブームで、屋内でペットと一緒に過ごす時間が増加したり、ペットを人間同様に扱う習慣が一般化していて、人とペットを取り巻く環境は大きく変化しています。
かわいいペットと自分の健康を守るために正しい知識をもちましょう。
犬や猫などのペットと触れ合うことで、癒されたり、血圧が下がるなど、心やからだにとてもいい影響があることが知られています。
しかし、かわいいからといってキスしたり、一緒に寝たりするのは少し危険です。「人獣共通感染症」をご存知でしょうか?
動物から人間にうつる病気のことで、動物由来感染症ともいわれています。なかでも身近なペットからの感染症が増えています。ペットを屋内で飼うことが多くなり、接触する機会が増えたこと、住宅の気密性が高くなって病原菌が繁殖しやすくなったことなどが原因で感染する人が増えています。
犬や猫にかまれたり、ひっかかれたり、なめられて感染する病気です。犬の75%、猫の100%近くが口の中に病原体を持っています。鼻から肺までの呼吸器系の感染が最も多く、約60%を占めます。次に皮膚の化膿症、外耳炎、骨髄炎などの感染症をはじめ、最悪死亡に至った例もあります。
特に、低免疫状態からの日和見感染、糖尿病、アルコール性肝障害の罹患者は重症化しやすいので注意しなければなりません。
予防としては、犬や猫からの咬傷や掻傷を受けないようにすること、人とペット相互で口をなめたり、なめさせたりしないこと、寝室に上げないことなどが大切です。
白癬などともいい、皮膚病にかかっている犬や猫、うさぎ、ハムスターなどのペットと接触することで感染します。発疹、かゆみ、化膿などを起こします。
犬や猫の糞に含まれる虫卵が口に入ることで感染します。人の体内に入った回虫は成虫になれずに体内を移行して内臓や眼などに入り、幼虫移行症と呼ばれるさまざまな障害を引き起こします。
砂場などで泥遊びや、犬や猫と遊んだ後は必ず手を洗いましょう。
猫の糞から感染します。加熱が不十分な豚肉から感染することもあります。抗体をもたない妊婦が初めて感染すると、まれに胎児に影響し、死産や流産を招いたり神経・運動障害を引き起こすこともあります。妊娠している人や妊娠の予定がある人はなるべくペットを飼わないようにするのが望ましいと言えます。
オウムやインコなどの鳥の羽毛や乾燥した糞などを吸い込んだり、口移しで餌を与えたりして感染します。オウム病に感染すると、インフルエンザ様症状がでます。悪寒を伴う高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などから多臓器障害を伴なう劇症型まで多様です。日本では、2001年に鳥獣展示施設で相次いでオウム病の集中発生があり、社会的な問題になりました。鳥の飼育をしている人に咳や発熱が現れた場合はオウム病が疑われるのでそのことを受診先の医師に伝えることが最も重要なポイントです。飼育している鳥が死んでいる場合は、特に疑いが濃くなるので必ず伝えるようにしましょう。
このように人獣共通感染症は、さまざまな種類がありますが、飼育の仕方を間違わなければ必要以上に恐れることはありません。
注意事項を守ってペットを飼うことが大切です。
・ペットとキスをしない
・ペットに食べ物を自分の箸で食べさせたり、口移ししない
・ペットと人の食器を一緒に洗わない
・ペットに触ったり、糞の処理をした後は必ず石けんで手を洗う
・ペットと一緒に寝たり、一緒にお風呂に入らない
・ペットの体はいつも清潔に保ちましょう
・定期的に動物病院で検診を受ける
・糞の始末はこまめに行う
・鳥かごの掃除はマスクをして行う
病気が怖いからペットは飼わないなどと考える必要はないですが、自分のペットがどんな感染症のリスクを持つかを知り、予防策をとることが大切です。