広報誌 健康倶楽部/2011年10月号
風邪と肺炎は似ているようで異なる病気です。肺炎の症状は風邪の症状に似ているために発見が遅れがちになるので、注意が必要です。
特に高齢者や慢性的な病気を持っている人は命にかかわる場合もあります。
細菌性肺炎の場合、喉の痛みや鼻水、鼻づまり、咳、頭痛などの風邪の症状が始まりますから「風邪と思って油断していたら肺炎だった」という場合があります。 肺炎の場合は、38度以上の高熱や、これまでになかったような強い咳や、濃い色の痰が出るなどするので、注意深く観察します。また、風邪は通常3日〜4日で症状が軽減しますが、肺炎の場合は長引きます。
息苦しさや胸が痛いというような症状も感じることがあります。
日本では肺炎は死亡原因の第4位です。肺炎の年齢別死亡率を見ても、65歳以上の高齢者がその90%以上を占めているのです。
◆ 加齢により生理機能が低下し、咳・痰・発熱などの症状を欠くことが多く、発見の遅れにつながることがあります。
◆ 高齢者は様々な基礎疾患を持っていることが多く、肺炎が重症化しやすいといえます。
◆ 排泄機能の低下や薬物の代謝が低下するため、治療薬の副作用が生じやすくなります。
手洗い、うがい、マスクの着用を励行し、糖尿病や高血圧などの基礎疾患をしっかりコントロールすることが大切です。
また、高齢者は、誤嚥の予防も大切になります。食べ物を飲み込みやすくする工夫をしたり、口腔内を清潔にすることを心がけて下さい。
ほとんどの場合、肺炎であるという診断は胸部X線によって確定され、肺炎を引き起こしている病原菌を特定するためには、痰や血液などの検査も行われます。しかし、正確な病原菌を特定できないケースも多くあります。
肺炎の治療は、軽症及び中等症例で脱水を伴っていない場合は外来での治療で様子を見ますが、脱水を伴っていたり、重症の場合は、入院の必要があります。
一般的には、適切な抗菌薬での治療で快方に向かいますが、免疫力が低下している人や、高齢者などは症状が重くなり、死亡するケースもあります。
肺炎球菌ワクチンは、高齢者の肺炎の原因となる病原体の中でもっとも頻度の高い肺炎球菌という細菌を狙った予防ワクチンです。ですから肺炎球菌以外の微生物による肺炎の予防効果はありません。我が国では高齢者の重症市中肺炎の約50%、院内肺炎の10%が肺炎球菌によるものです。
近年、抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増加していますが、肺炎球菌ワクチンはこのような耐性菌にも効果があります。
肺炎球菌ワクチンの安全性は高く、重篤な副反応は極めてまれです。よくみられる副反応には、接種部位のかゆみ、疼痛、発赤、腫脹、関節痛、筋肉痛、発熱などです。
このワクチンの接種については、かかりつけの医師に相談して下さい。