広報誌 健康倶楽部/2012年4月号

動脈硬化にならないための生活改善

動脈の血管壁に血液中のコレステロールが沈着し、血管の内腔が狭くなった状態を「動脈硬化」と言います。動脈硬化は、健康な人でも加齢によって徐々に起こるものですが、「高脂血症」になると動脈硬化が早く進み、とても危険です。血液中に増えすぎたコレステロールは比較的短期間に血管壁にたまります。そのため、線維化する時間が不足して、軟らかく破れやすい粥状硬化になります。最も心臓病と関係が深く、狭心症や心筋梗塞を誘発するのもこのタイプです。粥状硬化は、従来欧米人に多く、日本人には少なかったのですが、ライフスタイルの変化で脂肪の多い食事を口にする機会が多くなって日本人も粥状硬化を起こす人が増加しています。

動脈硬化が進行し、血栓ができて血管が詰まると、血液が流れなくなります。これを「梗塞」といい、血液が流れなくなった組織や臓器は壊死してしまいます。心臓の冠動脈が詰まると心筋梗塞、脳動脈が詰まれば脳梗塞になります。

心筋梗塞などの危険性は、コレステロール値やそのほかの危険因子から総合的に判断するしかありません。いろいろな危険因子の中で高脂血症が最も危険な因子といえます。

心筋梗塞の発症率は、総コレステロール値が150mg/dlを超えると徐々に上がり始め、220mg/dlを超えると急激に上昇します。

また、中性脂肪が多い場合も、血栓ができやすく、動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの危険性が高まります。

高脂血症は、食べ過ぎや運動不足などの生活を続けていると起こしやすくなります。自覚症状がないまま、動脈硬化がかなり進行するので気づかないまま急に心筋梗塞や脳梗塞を起こして命を危険にさらしたり、後遺症を残すことになったりします。血液検査で高脂血症とわかったらすぐに生活習慣を改善し、治療を行うことが大切です。

<まずは「食事」で改善が基本>

動脈硬化の治療として、また動脈硬化を進行させないためにもバランスのとれた食事をとること、適度に運動すること、禁煙することはとても大切なことです。

動脈硬化の最も危険な因子である高脂血症は、多くの場合、食べ物の質や量などが発症の要因となっています。適切な食事療法で血液中の脂質を改善し、総コレステロール値や中性脂肪値を低下させ、高脂血症を治しましょう。

高脂血症の患者さんは、多くの場合、過食に伴う肥満がみられます。食事療法では、いきなり過酷なダイエットをするのではなく、食べ過ぎやアンバランスな食事内容を改善していくことが第一段階です。

<食物繊維とDHA・EPAがオススメ>

高脂血症の食事療法に積極的に取り入れてほしいのが、食物繊維やDHA・EPAが豊富な食品です。食物繊維には、海藻類、こんにゃくなどに含まれる水溶性のものと、きのこや野菜などに含まれる不溶性のものがあります。水溶性のものは腸内でコレステロールの吸収を抑え、胆汁酸を吸着して排泄することで血液中のコレステロールの減少を促します。一方、不溶性の食物繊維は食べると満腹感をもたらすので、食事量を減らせます。

また、DHA・EPAが多く含まれる青背の魚(さんま、さば、いわし、あじ、マグロなど)には中性脂肪を減らしたり、血栓をできにくくする作用があります。

<昔ながらのおふくろの味がオススメ>

根菜類の煮物、煮魚や焼き魚、野菜のおひたし、具沢山の味噌汁、豆腐料理など、食物繊維やDHA・EPAがとれる献立が健康食といえます。素材の味をいかし、薄味でいただくことをおすすめします。

 

 

運動しなければダメ!

世の中が便利になればなるほど人は体を動かす機会が減ります。日本に生活習慣病の人が急激に増えたのは、運動不足も大きな原因のひとつと言えます。ウォーキングのようなあまり激しくない有酸素運動を行うことで中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やすことができ、高脂血症やその先にある動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを予防することができます。ポイントは日常生活でこまめに体を動かすこと。「よく歩く」ことで摂取したエネルギーを消費します。

運動療法の注意点は、必ずメディカルチェックを受け、医師の指導に従って行うようにしましょう。今まで運動らしい運動をしていなかった人がいきなり運動をはじめると、関節を痛めたり、血圧を上昇させたり、持病を悪化させるおそれがあります。

少し汗ばむ程度の有酸素運動を週3回、20分以上継続して行う

 

 

禁煙しなければダメ!

たばこの煙が健康を損なうということはよく知られていることです。たばこの煙には多くの発がん物質を含んでおり、さまざまながんの危険因子となります。それに、喫煙は高脂血症を悪化させ、動脈硬化を促進します。喫煙する人は、喫煙しない人に比べ、冠動脈疾患の危険性が約2倍に増加します。また、喫煙本数が多いほど冠動脈疾患の危険性が高まります。禁煙すると、冠動脈疾患や脳梗塞など、動脈硬化によって起きる病気による死亡率が38〜60%減少するといわれています。たばこに含まれるニコチンは、血液中のカテコールアミンというホルモンの分泌を促し、血糖値を上昇させたり、血圧を上昇させたりします。また、肝臓での中性脂肪やコレステロールの合成を促進させ、血液の粘度を高めて血流を悪くするといわれています。

喫煙している人は、完全に禁煙することが必要です。

 

 

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