広報誌 健康倶楽部/2012年7月号
胃の粘膜に発赤、浮腫、びらんなどの変化が生じることを胃炎といい、胃の粘膜に深い組織欠損が生じることを胃潰瘍といいます。これらの病変が比較的短期間(急性)に生じ、それに伴って急激に胃痛、腹痛などの症状が現れ、さらに短期間で治癒する傾向のものを急性胃炎・急性胃潰瘍といっていました。一般には胃炎と胃潰瘍の両者は区別して考えられていますが、現在はこれらを一括して急性胃粘膜病変と呼んでいます。急性胃粘膜病変の原因はいろいろあります。
@精神的および身体的ストレス(手術、外傷など)
A薬剤をはじめとする化学物質(解熱鎮痛薬、抗生物質、副腎皮質ホルモン剤、抗がん剤、農薬、洗剤など)
B刺激のある飲食物(香辛料、コーヒー、アルコール、熱いもの)の摂取
C食中毒や特定の食物に対するアレルギー反応
D肝臓や腎臓はじめとする内臓疾患をもっている人
このような様々な原因によって胃液の分泌亢進や粘膜分泌の低下、胃粘膜の血液循環の悪化、さらに粘膜への直接障害が引き起こされ、胃粘膜の障害が起こると考えられています。
胃のあたりを中心とした強い痛みを訴えることが多く、さらに吐き気、嘔吐もしばしば現れます。出血性胃炎や出血を伴う胃潰瘍の場合は吐血や下血がおこることもあります。出血がひどければショック状態に陥ることもあります。
急性胃粘膜病変の治療は、まず原因の除去が重要です。軽症の場合はこれに加えて内服薬を服用し、経過観察します。
比較的重症と判断された場合は入院して食事制限を行ない、点滴などの治療をします。患者さんの状態に合わせて薬物療法を行ないます。消化性潰瘍の治療に準じて胃液中の酸の分泌を抑える薬や胃の粘膜を酸から守る薬などが使われます。
出血をともなっている場合は状態に応じて止血する治療が行われます。
日常生活では、ストレスを溜めないこと、薬剤をはじめとする化学物質の使用、喫煙、刺激のある飲食物の摂取などを避けることが予防になります。胃の調子が悪いと感じたときは、消化の良い物を食べるようにしましょう。
急性胃潰瘍を発症した人が、いったん治癒したあとも原因を排除しない生活を続けていると再発することが多く、慢性に移行することもあるため、適切な治療と予防が重要になります。
急性胃炎では、腹痛が起きてから一日は絶食し、その後流動食から徐々に普通の食事に戻していきますが、普通の食事に戻して2〜3日は消化のよい食事にする必要があります。
消化のよい食べ物は、消化液と混ざりやすく、胃に残る時間が短くてすみます。脂肪分が多いほど消化が悪くなるので、脂肪分の多い肉などは回復してからにしましょう。
胃酸過多による胃液や胃潰瘍の人は温めた牛乳がおすすめです。牛乳のたんぱく質は良質で傷付いた胃の修復に働きます。
乳脂肪は胃粘膜を保護し、刺激物から守ります。また、胃粘膜を強くするために、ビタミンA、B2、C、E、U、の補給も必要です。