広報誌 健康倶楽部/2012年7月号

40歳以上になると増えてくる腸の病気

ストレス社会の中で働いている、特に40歳以上の人に多いのが過敏性腸症候群などの腸にくる病気です。

腸の不調が続く場合はぜひ検査を受けてほしいと思います。

過敏性腸症候群

仕事上のプレッシャーや会社、友人などの人間関係の悩み、家庭不和など精神的なストレスが影響して起こります。

それらの精神的ストレスにより、腸が過敏な状態になり、便秘や下痢、腹痛を長期間繰り返してしまいます。

男性に多いのが下痢型で、朝の通勤電車の中で急に腹痛が起こり、途中下車をしてトイレに駆け込むなど大変な思いをすることもあるようです。この病気の治療はまず、ストレスを取り除く必要があるのですが、それに伴い、下痢や便秘を抑える対症療法のほかに、消化管の運動を調整する薬剤や腸内の水分を吸収する薬剤、精神的な安定をはかるための薬などが投与されることがあります。それにはまず、医師の診断を受けて、自分に合った薬を服用しなければなりません。

大腸ポリープ

大腸の粘膜にできたイボやこぶのような腫瘍でほとんどが良性ですが、何らかの刺激により、腫瘍細胞に異変が生じると最初は良性であっても、その後ガンになる可能性はゼロではないのです。大腸ポリープもやはり働き盛りの40代から増え始め、年齢が上がるほどできやすくなります。

大腸検診で内視鏡検査を受けて発見されることが多く、ポリープの形態の様子を見て、その後ガン化しやすいものは切除することになるでしょう。この病気も早期発見がカギとなりますので、腸の検査は重要です。

大腸ガン

大腸ガンの発生が近年大幅に増えています。日本では毎年約6万人に大腸ガンが発生しているといわれ、原因がたんぱく質や脂質のとりすぎと、食物繊維の摂取が減っていることにより、腸内の悪玉菌の作用で発ガン物質をつくってしまうからと言われています。

早期の大腸ガンは、ほとんど自覚症状がないため、大腸検診で見つかれば完治する確率も非常に高く、早期発見することが重要です。大腸ガンは進行すると腹痛や下痢、便秘などの症状や便に血や粘液がまじることもあります。このような症状に気づいたら、すぐに病院で詳しい検査をして下さい。

<腸の検査って何をするの?>

腸の検査と聞くとみなさん二の足を踏むことが多いですが、検査の種類とその方法を知り、安心して医師に検査をしてもらい、重症にならないことが一番です。

問診、腹部の診察、必要に応じて直腸内触診、便潜血反応検査、下部消化管内視鏡検査などがあります。直腸内触診というのは、患者さんの肛門に医師が指を直接挿入し、肛門や直腸下部の病変を探る検査です。新鮮血の下血の場合、直腸ガンや直腸ポリープ、内痔核が多いので、肛門からの直腸の病変を見つけるためにする検査です。便潜血反応というのは、大便を採取して、それに血が混じっているかどうか調べる検査です。肉眼ではわからない便中の潜血を試薬を用いてチェックします。

便に血が混じっているときに考えられる病気

便に赤黒い血が混じる

上部大腸ガン、潰瘍性大腸炎、ポリープ 等

黒いタール状の便

食道ガン、胃ガン、胃潰瘍、十二指腸潰瘍 等

潜血が出る

便に潜血がつく

痔、下部大腸ガン、ポリープ 等

<下部消化管内視鏡検査について>

この検査は肛門から内視鏡を挿入し、直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸へと順に奥へ進ませながら病変を直接観察する検査で、同時に生検用の組織を採取したり、ポリープを切除したりすることも可能です。

この検査を行うには、腸をきれいにしなければなりません。大便が残っている状態では診断できないので、下剤をかけて腸内をきれいにしてから内視鏡を入れます。いずれにしても、検査内容に不安があれば医師や看護師に相談して不安を取り除くことです。

<腸を健康にする食生活>

腸を健康な状態に保つには、食生活が基本になります。腸が老化したり免疫力を低下させる原因は、肉類中心の食事と野菜不足です。食生活が欧米化している(特に都会人)人は要注意です。畑で野菜をつくっている田舎の人は、食事も野菜中心で、腸が健康な人が多いです。

野菜の主成分の食物繊維は、腸内の老廃物や有害物質を吸着して体外に排泄する働きがあります。

それに加えて、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を食生活に取り入れると、善玉菌を効率よく増やすことができます。

特におすすめしたいのがヨーグルトで、牛乳を乳酸菌で発酵させた発酵乳です。腸の働きを活性化させ、便秘を解消させ、腸内の有害な菌の繁殖を抑えて免疫力を高めるすばらしい働きをします。

ヨーグルトは毎日食べてほしい食品ですが、それが無理なら2日に1回でもかまいません。なぜなら腸内環境は3日ぐらいで元に戻ってしまうことと、現代人の食生活が肉類が多い食事にかたよってしまうので腸内はあまり良い状態とはいえないからです。

<自律神経に左右されやすい「腸」ストレスをためないで>

自律神経の乱れによって、いろいろな臓器に影響があらわれます。特に「腸」は影響されやすい臓器です。

たとえば、ストレスで精神的にバランスがくずれた状態や緊張した状態が続くと腸の働きも乱れます。

「これから会社で大事なプレゼンテーションがあります」そんな時に限っておなかの調子が悪くなるなどの経験はありませんか?

もともと腸が弱い人や、仕事上のプレッシャー、人間関係の悩みなどで腸の機能がうまく働かないと、便秘や下痢、腹痛を起こしてしまいます。腸を強化するには、栄養のバランスが良い食事とストレスをため込まない、そして運動です。1日30分はかならず歩くこと。歩くことに加え、軽く腹筋運動をすることも良いでしょう。

便秘になっている人のほとんどは、運動不足が原因のひとつとなっています。運動はストレス解消にもなり、腸が元気になる習慣としてぜひ生活に取り入れて下さい。

おならの話

おならには、発酵型と腐敗型の二種類があるといわれています。発酵型のおならは大腸で善玉菌が炭水化物を分解し、ガスとなって排出されるもので、こうしたものは臭いもなく、腸管を刺激し腸の働きを促進してくれます。

一方、腐敗型のおならは、大腸で悪玉菌が未消化のたんぱく質を腐敗させて作りだすもので、肉料理などを食べた翌日はこうしたおならが出やすくなります。このおならは臭いもきつく、腸に悪玉菌が多い状態といえます。

おならの臭いがきつい人は腸内環境をよくするための食生活を心がけましょう。

 

 

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