広報誌 健康倶楽部/2012年7月号

中高年の男性におこる前立腺肥大症

前立腺は、膀胱のすぐ下にあり、精液をつくる働きをしている臓器で、その中を尿道が通っています。前立腺肥大症は、この前立腺が尿道を圧迫するように大きくなり、尿の通りが悪くなって、頻尿や残尿などの排尿障害を起こす病気です。

前立腺肥大症は尿道に近い組織が瘤のように大きくなりますが、この瘤は良性で、前立腺がんの腫瘍とは違います。

前立腺肥大症の瘤は中高年のほとんどの男性にみられます。瘤の大きさの程度は個人差があり、症状がでるほど大きくならない人も多くいます。また、その瘤が尿道のどの部分を圧迫するかでも症状が出たり出なかったりします。小さい瘤でも膀胱の出口付近を圧迫すると症状が強くでますし、大きな瘤でも尿道と反対側のほうに押し出していれば症状は軽くすみます。

前立腺肥大は50歳頃からみられ、高齢になるにつれ、ほとんどの男性におこります。50歳頃から男性ホルモンの産生がだんだん少なくなるのに対して男性にもわずかにある女性ホルモンの量はあまり変わらず、そのアンバランスが関係しているといわれていますが、前立腺の炎症や遺伝的体質も関係しているようです。

前立腺肥大症は、排尿の時に症状が起こります。尿の流れが妨害されたり、尿線が細くなったりするので、尿に勢いがなくなったり、出始めが遅くなったり、下腹に力を入れないと尿が出なかったりします。また、瘤が前立腺や尿道の神経を刺激して過活動膀胱(頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁)になります。さらに尿が全部でないで膀胱に残り、残尿感も現れます。このような症状により、夜中のトイレの回数が増えたり、我慢がきかなくなるなど生活に支障がでる人もいます。

残尿や膀胱の負担が長期間に及ぶと、膀胱の筋肉は過敏な状態から疲労した状態になり、筋力が低下してますます尿が残るようになります。

残った尿の中では細菌が増殖しやすくなり、結石ができたりしやすく、膀胱炎や膀胱結石の原因となります。ひどくなるとほとんど尿が出なくなる尿閉をおこすこともあります。尿閉は急におこる場合と徐々におこってくる場合とがあり、急におこるのは、強い緊張や寒さ、お酒、刺激物を食べた、風邪薬やおなかの痛み止めを飲んだといったときです。非常に辛いので、病院へ転がり込むことになります。尿閉がゆっくりおこった場合は、特に症状は変わることがないまま、膀胱の中の尿の圧力がだんだんと上がってきます。そうなると、腎臓から流れてきた尿が膀胱の中へ入れなくなり、腎臓に尿がたまって水腎症になり、最悪の場合は、腎不全や尿毒症となって生命を脅かすことになります。

前立腺肥大症におこる症状は、前立腺肥大以外の原因でもおこります。安易に年だからと放っておくと危険です。医療機関で検査をすることをおすすめします。

前立腺の検査

症状にはいろいろなものがあるので、その症状についての不満の程度を表現するために、点数表がつくられています。その結果に基づいて症状の程度を出します。診察では直腸診といって、肛門から指を入れ、前立腺の大きさや形、かたさを見ます。より確実な検査としては、超音波検査を行います。さらに、尿の勢いを数値で表す尿流検査、残尿の量を見る残尿測定も行ないます。もちろん、尿検査は必ず行われますし、その他必要に応じた検査が追加されます。

治療

前立腺肥大症と診断された場合の治療法は症状によって異なります。日常生活上、支障がない場合は経過観察を行うにとどまる場合もありますし、症状がひどい場合は、薬を用いた治療では、前立腺の中にある平滑筋の緊張を取る薬や、肥大した前立腺を縮小させる抗男性ホルモン剤などが用いられたり、漢方薬なども使われる場合があります。また、手術が検討されることもあります。

 

 

前立腺がん

前立腺がんば、前立腺に発生する悪性腫瘍です。尿道から離れた前立腺の辺縁部に発生することか多く、そのため、腫瘍がある程度大きくならないと尿道を圧迫することはなく、排尿障害などの症状を起こしません。症状が出る状態になると、がんがある程度進行している可能性が高いと言えます。

原因はまだはっきりとはしませんが、老齢になるに従って、男性ホルモンの分泌が少なくなり、性ホルモンの不均衡がおこるためと考えられています。

前立腺がんは初期にはほとんど症状がありませんが、ある程度がんが大きくなると尿道を圧迫するようになり、前立腺肥大症と同じような排尿障害が出現し、さらに進行すると、リンパ節中骨に転移し痛みをともなうようになります。排尿障害がある場合は早期に医療機関を受診し、検査を行うことが重要です。

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