疾患Q&A  肺結核
 
 過去の病気と思われがちな結核。しかし現在でも、年間およそ3万人が新たに発症し、約7万人の罹患者がいる、主要な感染症のひとつです。
 そこで今回は、結核罹患者の多くを占める肺結核について、わたしたちがお答えします。
 

肺結核とは?
Q1 肺結核って何ですか?
肺結核は、結核菌という細菌を原因とした感染症です。結核菌が体内に入り、肺で増殖することによって起こります。
Q2 結核菌には、どのように感染するのですか?
いわゆる飛沫感染です。肺結核を患っている方のせきやくしゃみなどから排出された結核菌を吸い込んでしまい、肺にまで菌が及ぶと、感染してしまいます。
Q3 感染したら、絶対に肺結核になってしまうのですか?
感染者のうち、肺結核を発症してしまうのは10人に1人か2人くらいです。これは体内の免疫機能が、結核菌を封じ込めてくれるからです(図参照)。
Q4 免疫によって結核菌を退治できますか? 
免疫によって結核菌の活動は停止しますが、死滅せず、そのまま体内にとどまっているケースが多くあります。
この、体内に残った結核菌は、身体の免疫力が低下すると、再び活発化し、肺結核を発症させてしまうことがあります。これを既感染発病といいます。
Q5 肺結核になると、必ず人にうつしてしまうのですか?
多くの場合、病状が悪化し、たんから結核菌が検出されるようになった患者さんのみが、せきやくしゃみなどで結核菌を外へ排出してしまいます。
 
肺結核の予防
Q6 肺結核を発症しないためには、どうしたらよいのですか?
体質などにもよりますが、結核菌は免疫によって制御できます。ですから、免疫力を高めておけば、感染しても、発症しにくくなります。睡眠をしっかりとり、栄養バランスのよい食生活を心がけ、適度に運動するようにしましょう。
また、学校や職場、地域などで実施されている健康診断をきちんと受けることも重要です。
【肺結核に注意したほうがよい方】
糖尿病など、免疫力が低下してしまう疾患がある方
大きな手術をされた方
70歳以上の方
睡眠や食生活など、生活習慣のリズムが乱れている方
学校の先生やサービス業従事者など、人と接する機会が多い方など
Q7 肺結核に注意しなければならない人はいますか?
免疫力が低下してしまう疾患がある方や、お年寄りなどは注意が必要です。とくにお年寄りは、若い頃に感染していることが多く、その菌が再び活発化してしまうことも少なくありませんので、充分に気をつけてください(Q4参照)。
また、多くの人々と接する職業に就かれている方は、感染する確率も高く、また、人にうつしてしまうようになると、集団感染の原因ともなってしまいます。日々の生活で免疫力を高め、肺結核を発症しないように心がけましょう。
肺結核の症状と治療
Q8 肺結核の症状を教えてください
肺結核を発症すると、せきとたんがでて、微熱が続きます。また、息苦しい、胸が痛い、食欲がないなどの症状も現れます。
このように、症状がかぜに似ているため、そのまま放置してしまい、重症(Q5参照)になってから、初めて受診される方も少なくありません。せきや微熱が2週間以上続く場合には、自己判断せず、かかりつけ医にご相談ください。 
【肺結核の症状】
せき、たんが出る
微熱が続く
胸が痛い
全身がだるい
息がきれる、息苦しい
食欲がなくなる
体重減少
血痰、喀血など
Q9 肺結核の治療法は?
現在、肺結核の治療は、そのほとんどが薬物療法です。3〜4種類の薬剤を併用して服用します。服用期間は、症状にもよりますが、およそ6ヶ月〜1年です。
Q10 入院しなければならないのですか?
たんに結核菌が認められる、免疫力が著しく低下しているなど、入院治療が必要な場合もありますが、近年は通院で治療するケースも増えてきています。
Q11 症状が治まれば、自主的に薬の服用をやめてもよいですか?
治療薬を自己判断で中止してしまうと、菌が変異し、薬の効かない菌(多剤耐性結核菌)になってしまう恐れがあります。また、症状が治まっても、結核菌は生き残っているケースがありますので、服用は必ず医師の指示にしたがってください。
Q12 子どもの肺結核は怖いと聞きました。どうしてですか?
子ども、とくに乳幼児は免疫力が低いので、肺結核に感染すると発症しやすく、悪化しやすいからです。このため、予防接種(BCG)を生後6ヶ月までに実施することになっています。

 肺結核は感染しても、バランスのよい食事や充分な休養、適度な運動を心がけていれば発症しにくくなります。また発症しても、適切な治療を行えば治る病気です。
 しかし近年、肺結核に対する危機感の薄さから、集団感染の報告が多くあります。「ただのかぜだと思っていたら、肺結核だった。気がついたときには、周囲の人に結核菌を感染させていた」ということにならないよう、早めに医師の診察を受けてくださいね。
 

:メディカル・ライフ教育出版 より転載

一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属 総合南東北病院
−すぐに役立つ暮らしの健康情報− こんにちわ 2006年5月号


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