子どもの予防接種あれこれ
 子どもは多くの予防接種を受けます。それらをいつごろ受けさせればよいかすべてを把握しておくのは大変です。また、副反応の問題などで、受けさせるべきか悩んでしまう予防接種もあります。
 そこで今回は、子どもの予防接種についてご紹介します。
定期接種と任意接種 
 予防接種には「定期接種」「任意接種」という2つの種類があります。
 定期接種は、国が病気の種類や接種時期を決めている予防接種のこと。「勧奨する予防接種」とされており、費用は基本的に公費負担、つまり無料です。ただし義務ではなく、国や自治体が公表する情報をもとにして、子どもに接種を受けさせるかどうか、保護者が判断できます。
 任意接種は、定期接種ではない予防接種のこと。インフルエンザの予防接種はこれにあたります。費用は自己負担で、接種時期も保護者の判断に任せられています。ですから、定期接種の日程や子どもの体調などを考慮しながら、接種を受けさせることができるのです。
 
予防接種の意義
 予防接種で予防する病気には、あまり聞き慣れないものがあります。それこそ、現在国内において発症数が非常に少ない病気も含まれています。そのような珍しい病気の予防を行なうのは、なぜでしょう。それは、
@もし発症した場合、神経麻痺や呼吸困難などの重篤な症状を引き起こす危険性がある
A病気の病原体は国内でも多く確認されている
B海外では未だに発症者がいる、などの理由からです。

 また予防接種には、万が一、病気にかかったとしても重症化を防ぐ、という効果もあります。
 これらの点から、何か特別な理由がない限り、予防接種は受けたほうがよいと考えられています。
 
予防接種の副反応
 近年、日本脳炎ワクチンの副反応が問題となりました。では、他の予防接種でも副反応は起こるのでしょうか。
 結論からいえば、多くの予防接種で副反応は起こり得ます。ただ、大半は発熱や発疹、接種局所の腫れなど症状が軽く、数日で治ります。
 しかし、なかには医者の診察を受けるべきものもあります。高熱やけいれん、接種局所のひどい腫れなどが、それにあたります。また、脳炎や脊髄炎、神経麻痺といった重篤な副反応が起こる予防接種もあります。ただし、重篤な副反応はまれなケースです(予防接種の種類により数字は異なりますが、例えば、日本脳炎ワクチンによる重篤な副反応は、およそ70万〜200万人に1人です)。
しかも、ワクチンは改良が重ねられており、副反応が起こる割合は減少しています。例えば、百日ぜきのワクチンは、以前、副反応の問題で接種が中止されましたが、現在は改良され、副反応も少なくなっています。
 
予防接種を受けるときには
予防接種を受ける際には、次のことに注意しましょう。
熱を測る、顔色を見るなど、その日の体調をしっかり確認。
身体を清潔にさせる。衣服もきれいなものを着用する。
母子手帳を忘れずにもっていく。
アレルギーの有無など、接種の際に気になる点は医師に伝える。
 また、予防する病気や予防接種の効果、副反応などに対するご質問がありましたら、お気軽にかかりつけ医までご相談ください。お子さんに予防接種を受けさせるかどうかの最終判断は、保護者の方が行います。不安な点、疑問点を解消して、お子さんの健康を守っていきましょう。
 
【コラム】
大人も受けておきたい予防接種
 予防接種は子どもだけが受けるものではありません。大人も受けたほうがよい予防接種もあります。
 その代表例がインフルエンザの予防接種。インフルエンザウイルスは毎年変化していますから、予防接種も毎年受けたほうがよいのです。とくにお子さんがいる方は、自分が感染源にならないために受けておきましょう。
 また、子どもの頃に麻疹や風疹の予防接種を受けていない方は、接種することをお勧めします。
 なお、1975〜77(昭和50〜52)年に生まれた方は、ポリオのウイルスに対する免疫が弱いとされています。このため、ポリオの予防接種をしたお子さんの排泄物に含まれるウイルスから感染する危険性があります。予防接種を受けておきましょう。
 この他、お年寄りが受けておくべきものや、海外に行く際に受けるものなどもあります。詳しくは、かかりつけ医にご相談ください。
 
定期接種一覧                                                    (表)
ワクチン名(病名) 標準的な接種時期と注意点
BCG(結核) 生後3か月以降6か月末満に1回行う。接種後、10日以内に針の跡が赤く腫れたり盛りあがってきた場合、副反応ではないがすでに結核菌に感染している可能性があるので受診する(通常は接種後2〜4週間で赤く腫れ、盛りあがってくる)。
ポリオ 生後3〜18か月の間に2回、6週間の間隔をあけて飲ませる。経口接種なので、飲んだワクチンを吐きださないよう、接種の前後30分は授乳や食事をひかえる。
三種混合
(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)
生後3〜12か月に3回の接種を3〜8週間の間隔をあけて行う。その後、12か月以上経ってから追加接種を行う(接種局所が破傷風)硬くなることがあるので、左右の腕へ交互に接種する)。小学校6年生時に、ジフテリアと破傷風のワクチンを接種する。
MRニ種混合
(麻疹、風疹)
1歳時の早い時期と小学校就学前の1年間(4月〜3月)に1回ずつの接種を行う。なお、麻疹の予防接種は2008年から、13歳時と18歳時に追加して1回ずつ受けられるようになる。
日本脳炎 3歳時に1〜4週の間隔をあけて2回の接種を受け、1年後に1回、追加接種をする。
また、9〜12歳のときに再度、接種を受ける。現在、日本脳炎の予防接種は「積極的勧奨は行なわない」とされているが、日本脳炎の病原体であるウイルスは国内でも確認されてあり、海外ではいまだに発症報告がある。かかりつけ医などと相談して、接種の判断をしたほうがよい(接種する場合は定期接種として受けられる)。
この他、任意接種としてインフルエンザ、水ぼうそう、おたふくかぜ、A型・B型肝炎、肺炎球菌などの予防接種もあります。また、予防接種は、医師が認めた場合に限り、複数を同時に受けることもできます

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2007年9月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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