気管支喘息Q&A
 気管支喘息の患者さんは、現在大人も子どもも増加傾向にあるといいます。皆さんの周りでも、患者さんがいらっしゃるのではないでしょうか。この病気のことをより知っていただくために、今回はQ&A方式で、気管支喘息を解説します。
Q1.気管支喘息ってどんな病気?
気管支は、私たちが呼吸をする際、空気の通り道になる器官です。気管支喘息(以降、喘息と表記)の患者さんの場合、その気管支に慢性の炎症が起きているため、刺激に対してとても敏感になっています。そして、何らかの刺激となるものを吸い込むと、刺激に対抗するためさまざまな反応が起こります。
その結果、気管支の粘膜が腫れたり、大量の痰がたまるなどして、気管支の内側が狭まり、呼吸が困難な状態に陥ります。これが喘息発作といわれるものです。喘息の患者さんの多くは、アレルギー体質であり、その人により、発作の原因となるもの=アレルゲンがあります。
Q2.アレルゲンにはどんなものがあるの?
アレルゲンは人によって異なりますが、アレルゲンになりやすいものには、次のようなものがあります。
・ハウスダスト(ほこり・ダニなど)
・花粉  ・卵  ・牛乳  ・大豆  ・小麦
・そば  ・動物の毛など
また、喘息の発作は、アレルゲン以外のきっかけで引き起こされることもあります(表1)。
例えば、気圧や気温、湿度の変動は発作と深い関わりがあります。とくに梅雨どきや、台風の発生する秋口は、具合の悪さを感じる患者さんが多く、喘息の好発時期といわれています。

気管支喘息の発作の誘因となるもの (表1)
・気候(気圧、湿度、温度)の変化
・かぜなどの感染症  ・ストレス
・喫煙、受動喫煙  ・香水などの強い香り
・運動  ・アスピリンなどの薬物
・過労
 
Q3.気管支喘息の症状は?
喘息の症状には、咳や痰のほか、呼吸をするときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音がする喘鳴があります。また、症状がひどくなると、気管支の内側が狭まってしまい、呼吸が困難になる「発作」が起こります。
喘息の発作は夜間や明け方に起こることが多く、昼間になると自然に治まる傾向にあります。
発作は、重症化すると死に至ることもあり、処方された薬で発作が治まらない場合は、直ちに病医院を受診する必要があります。

発作の程度と症状  (表2)
喘鳴・息苦しい 小発作 中発作
・横になれる
・会話は普通にできる
・急ぐと苦しいが歩ける
・苦しいが横になれる
・会話はほぼ普通にできる
・急ぐと苦しいが歩ける
・苦しくて横になれない
・会話はやや困難
(※単語を区切りながらなら可能)
・かろうじて歩ける
大発作 重篤な発作
・苦しくて横になれない
・会話困難
・歩行不能
・呼吸困難
・チアノーゼ
(※血液が酸素不足となり、
皮膚などが青みを帯びること)
協和企画/監修・宮本昭正東京大学名誉教授/
「EBMに基づいた患者と医療スタッフのパートナーシップのための喘息診療ガイドライン2004(成人編)」
22ぺ−ジ表より一部抜粋 (※)内は補足
  
Q4.どんな検査や治療が行われますか?
検査
喘息の疑いがある場合は、血液検査で、アレルギー体質の有無や、アレルゲンが何なのかを調べます。また、呼吸機能の測定なども行われます。
治療
喘息の治療では、一般に服薬や、吸入を用いる薬物療法が行われます。
かつては対症療法中心でしたが、現在は、「気管支の炎症を抑え、発作の起こらない状態が持続すること」を目指す、予防に重きをおいた治療が行われています。予防薬が効果を現わすまでには長期的な服薬管理が必要となります。しかし、こうした治療により発作の回数が減っていけば、日常生活への支障も少なくなり、患者さんのQOL(生活の質)を上げることにつながります。
また、発作が起きた場合は、早めの段階(発作の兆しがある、喘鳴があるなど)で、薬の服用や、吸入を行うことで、重度の発作への移行を防ぐことができるといわれています。
このように、喘息の治療は、「発作の予防を目的とした長期的な治療」と、「起きてしまった発作をおさえる治療」の2本柱で行われます。
患者さんにより治療が異なりますので、薬の服用方法などは必ず医師の指示にしたがってください。
 
Q5.気管支喘息にならないためにはどうすればよいですか?
原因はよくわかっていませんが、喘息を発病する人は、大人も子どもも増える傾向にあります。
喘息の患者さんのうち、大人は半数以上、子どもはほとんどがアレルギー性の喘息であるといわれています。何らかのアレルギー疾患の方が身内にいる場合は、遺伝的にアレルギー体質を引継いでいる可能性があります。そうした方も含め、喘息にならないための一次予防として、次のようなことを心がけるとよいでしょう。
ほこりやダニなどのハウスダストは、気管支喘息のアレルゲンとなりやすい。普段から、こまめに室内の掃除を行う。
タバコは吸わない。また、子どもや妊娠中の人に、タバコの煙を吸わせないようにする。
実際にアレルギー反応を起こしていないのに、Q2であげた食べ物を避けるのはよくありません。栄養の偏りを招く原因となります。
 
Q6.発作を予防するにはどうすればよいですか?
喘息の発作を起こさないためには、まず、アレルゲンを身の周りから除去する必要があります。
また、過去に発作を起こした状況を思いだし、アレルゲン以外で自分が発作を起こしやすいのはどんなもの、あるいはときだったかを把握しましょう。予想がつくものに関しては、なるべく避けるようにし、また、季節的なものであれば、その時季は無理をしないように心がけることが大切です。
喘息は、長期の治療が必要な病気ですが、自己判断で治療を中断しないようにしてください。不安や疑問は、かかりつけの医師とよく話し合い、根気よく治療を続けていくことが発作の予防につながるのです。
コラム・喘息のアレルゲンが食物である場合
 喘息のアレルゲンの検査をした結果、食物がアレルゲンであるというケースも少なくありません。
 その場合、発作を防ぐために、その食物は一切摂取しないようにします。しかし、子どもの場合、身体の発育において欠かせない栄養素があります。アレルギーのことを考えて、アレルゲンの食物を食事から外した場合、栄養的な偏りが生じることもあるのです。そうした場合、摂取することができない食物に含まれる栄養素を他の食品で補なう必要があります。
 保護者の方は、かかりつけ医や、栄養士と相談した上で、代替食を考え、栄養が偏らないよう気をつける必要があるのです。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2007年10月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
トップページへ戻る