キョウコ 「先生、こんにちは…」
養護教諭 「あら、キョウコさん、浮かない顔してどうしたの?」
キョウコ 「それが…。今朝登校するときに、すぐそこの交差点で、私と白い杖をもった人と中学生の男の子が、信号待ちをしていたんです。青に変わって、私はすぐに歩き始めたんですけど、男の子が杖をもった人に『青になりましたよ』と声をかけていたんです」
養護教諭 「その杖をもった人は視覚障害者の人だったのね」
キョウコ 「ええ、あそこの信号は音楽も鳴らないし、車の音がうるさいでしょ?もし男の子がいなかったら、あの人は信号が青になったことに気づけなかったかもと思うと、さっさと歩きだした自分が恥ずかしくなって…」
養護教諭 「確かにそうね。でもこれでキョウコさんは、自分が普段問題なく利用している場所でも、実は不自由さや不安を感じている人がいるということに気づけたわけよね」
キョウコ 「はい」
養護教諭 「何でも『知る・気づく』ことから始まるの。次からは、キョウコさんも男の子と同じ行動をとれるはずよ。そんな風に、1人ひとりが、自分だけでなく周りの人にも意識を向けられるようになれば、誰もが気持ちよく過ごせる社会になると思わない」
キョウコ 「そうですね!私にできる身近な心くばりをもっと知りたいわ」
養護教諭 「それじゃあ、公共の場所で私たちができることを一緒に考えてみましょう」

※バリアフリーとは
障害のある人が社会生活を送る上で、建物の構造などの物理的障壁だけでなく、社会的・制度的・心理的障壁をとりのぞくという意味
◆視覚に障害がある人へのサポート
もしも視覚障害者の人が道に迷っていたり、困った様子が見られたら、次のような手引きの方法があります。まずは、「どちらまで行かれますか?」や、「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけてみましょう。
白杖をもつ手の反対側に立つ。ひじを軽くつかむか、
肩に手を置いてもらい、1歩前を歩いて手引きをする

※手引きの際、白杖や衣服を引っ張ったり、
  視覚障害者の身体を後ろから押すなどはしないでください。
盲導犬を同伴している場合、盲導犬とは反対側の後方に立ち、
質問などに答える。
歩行を援助する場合は、盲導犬の反対側に立ち、
左のイラストと同じ方法で手引きをする

※引き具(ハーネス)をつけている盲導犬は「仕事中」です。
  触ったり、えさを与えたりしないようにしましょう。
 
視覚障害者が外出する際、大切な役割を担っているもの
●白杖
歩行の際に、周囲の情報を得るためのもの。また携帯することで、視覚障害者であることを周囲に知らせる
●点字ブロック
歩道や駅のホームなどに敷設されていて、視覚障害者に、進行方向や危険を知らせる
●盲導犬
視覚障害者が目的地まで移動する際、障害物や危険を知らせ、安全に歩行できるようサポートする
●点字
突起した点の組み合わせから成る、視覚障害者用の記号文字。
指先で触れて認識する
◆聴覚に障害がある人へのサポート
キョウコ 「聴覚に障害がある人が外出時に困ることは何かしら…?」
養護教諭 「車のクラクションや、自転車からの注意を促すベルの音、それから鉄道トラブルが起きたときなどに車内のアナウンスが聞こえなかったら、どうかしら?」
キョウコ 「あっ…」
養護教諭 「屋外では、音によって注意を喚起されることも多いの。そうしたときに、周囲の状況がすぐに把握できないのは、とても不安なことなのよ」
例えば車内で
困っている様子に気づいたり、状況をたずねられたときには
●筆談で
※筆記用具がないときは携帯電話の画面に文字を表示しても会話の手段になる
●はっきりした口調で
補聴器を使用している人には、会話の際、相手の顔を見ながら、ゆっくりと文節毎に区切って話す
●その他
互いに手話ができれば、手話で。
相手が読話(口の動きで言葉を読み取る)をする場合は、はっきりと口を動かす
◆あなたの心はバリアフリー?
養護教諭 「この絵で問題があるところはどこかしら?」
キョウコ 「え〜と、これは優先席ですね。男の人が荷物をひざに乗せれば、立っている妊婦さんが座れるわ。それから、携帯電話でメールをしている女性。確か、車内での通話は避け、優先席のエリアでは、携帯電話の電源を切るようアナウンスがされていますよね」
養護教諭 「その通り。優先席は、高齢者や妊婦、乳幼児を連れた人、ケガをしている人、ペースメーカー使用者などが、優先的に座れるよう設けられた座席よ。席がすいていれば、誰が座ってもかまわないのだけれど、席を必要とする人がいつ乗車してきてもいいように、必要以上に場所をとらないこと」
キョウコ 「優先席のエリア内では、どうして携帯電話の電源を切らなければならないのですか?」
養護教諭 「ペースメーカーなどの医療機器に影響を与える可能性があるからよ。下の図をみて」
キョウコ 「これがペースメーカー。初めて見ました」
養護教諭 「ペースメーカーは、心臓が正常に鼓動しているときは、作動しないものなの。使用者の鼓動が乱れたときや途切れたときに、電気信号を送って心臓を正しく鼓動させるものなのよ」
キョウコ 「そうなんですか。知らなかったわ」
養護教諭 「だから、外部から電磁波などのノイズが伝わると、正しく鼓動しているのにペースメーカーから電気信号を送ってしまったり、反対に鼓動が途切れていても、電磁波を鼓動と勘違いをして、電気信号を送れないといった誤作動を起こす危険性もあるの。携帯電話はペースメーカーの埋め込み部から22cm離せば、誤作動の心配はないとされているけれど、心臓は命に関わる大切な臓器。乗り物内では優先席のエリアが、ペースメーカー使用者にとって安心して過ごせる場所であるよう、携帯電話の電源はOFFにしましょう」
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2007年11月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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