激しい膝の痛み
変形性膝関節症

へん けい せい しつ かん せつ しょう
 どんなものでも、長い年月使用していると、動きが悪くなったり、何らかの不調がでてきます。
 私たちの身体も例外ではなく、新陳代謝が行われ、骨でさえも常に成分が入れ代わっているとはいえ、歳をとるにしたがい、その新陳代謝も緩やかになっていきます。その結果、様々な器官に、長年の酷使の影響が及んだり、機能低下がみられるようになるのです。
 変形性膝関節症も、膝への長年の酷使から引き起こされるもので、中高年での発症が非常に多い疾患です。
膝のしくみ
 膝関節は、歩く、走る、ジャンプするといった複雑な動作を行いながら、体重を支えなくてはいけません。そのため、膝には常に大きな負担がかかっています。
 関節は、骨と骨の間に入って「曲げる」「伸ばす」などの動作をコントロールしています。こうした関節の一般的な働きに加え、膝関節は、立っているときや歩行時に「体重を支える」という、非常に重要な役割をもっています。
 変形性膝関節症という疾患を知るために、図1の「膝のしくみ」を見ていきましょう。
《膝関節の要!関節軟骨は、骨と骨の仲裁役》
 膝関節には、身体のなかで最も長い「大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)」と、2番目に長い「脛骨(けいこつ:すねの骨)」、俗にお皿とよばれる「膝蓋骨(しつがいこつ)」という3つの骨があります。
 そして、これらの接触面をきれいに覆っているのが「関節軟骨(かんせつなんこつ)」です。
 関節軟骨は、豊富な水分と、ヒアルロン酸などの潤い成分を含んだ弾力性のある構造をしています。関節軟骨があることにより、骨同士に摩擦が起こらずにすみ、膝が滑らかに動くことができるのです。
 また、接触面の摩擦を軽減するため、膝関節が動くたびに滑膜(かつまく)から関節液が分泌され、関節軟骨をうるおしています。
 その他、膝関節は骨同士のぶつかる衝撃を吸収する半月板やじん帯、膝を支える大腿四頭筋(だいたいしとうきん)などから構成されています。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症の発症が中高年に多いのは、長年の酷使に対して、膝がその負担に耐えきれなくなることが原因として考えられます。変形性膝関節症は、図2のようなタイプの方に多いとされています。
《変形性膝関節症の症状》
 変形性膝関節症の始まりは、骨の接触面を包む関節軟骨の磨耗です。これが、膝関節内部に様々な影響を及ぼし、図3・4のような症状を起こすことになります。
●初期には…
 膝に負担がかかり、関節軟骨が次第に磨耗していく。関節軟骨のかけらが滑膜を刺激して炎症が起こり、痛みが引き起こされる。炎症した滑膜は腫れて厚くなる。
●進行すると…
 炎症によって滑膜から関節液が大量に分泌され、関節周辺にたまってしまう(俗にいう、膝に水がたまる状態)。関節軟骨がさらにすりへって、失われてしまった部分は、骨と骨が直接こすれあうようになり、激しい痛みが起こる。骨が変形してとげのような形(骨棘:こっきょく)になる。半月板も磨耗し、骨と骨の間が狭まってくるなど、関節自体が変形してしまう。
 このような変化が進むにつれて、痛みなどの症状も強まってきます。また、膝周辺が強ばって曲げ伸ばしがしにくくなり、普通に歩行することが困難になります。
変形性膝関節症の治療
 変形性膝関節症の症状に似ている疾患もあるため、変形性膝関節症の診断には、医師の問診・視診・触診・X線検査などが行われます。
 変形性膝関節症と診断された場合、進行度によって治療が異なりますが、いずれにも必要な治療の基礎となるのは、
◎膝の負担を減らすための体重コントロール(減量)
◎膝を支える大腿四頭筋の強化です(図5参照)。
 その他の治療は、手術を行わない保存療法と、手術療法にわけられます。
《保存療法》
@ 薬物療法
内服薬では消炎鎮痛薬が用いられるが、副作用で胃や十二指腸に潰瘍が生じることがあるため、予防として、消化性潰療治療薬が合わせて処方されることもある。
外用薬では、消炎鎮痛効果のある湿布やぬり薬が用いられる。また、痛みの強いときに限り、副腎皮質ステロイド薬を注射することがある。
A 物理療法
患部を温めて血行をよくし、痛みを軽減させる「温熱療法」、患部を冷やして腫れや熱を冷ます「寒冷療法」が行われる。
B 運動療法
膝の周りの筋肉を鍛えることで、膝の負担を減らし、痛みを軽くする効果がある。
C 装具療法
保温効果のあるサポーターや、足の外側を高くしてO脚を矯正する足底板などの装具を用いて、膝の痛みや負担を軽減する。
《手術療法》
 変形性膝関節症が重症になった場合は、患者さんの足の状態に応じて、手術療法が行われる場合があります。
●滑膜切除術(かつまくせつじょじゅつ)
  関節液がたまる原因となるため、肥厚した滑膜を切除するもの。
●高位脛骨骨きり術(こういけいこつほねきりじゅつ)
  脛骨の上部を切除し、膝の内側にかかる負担の軽減をはかるもの。
●人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)
  すりへった関節軟骨の代わりに、人工の軟骨を挿入するもの。
最後に…
 変形性膝関節症の初期症状は、朝起きて歩きだしたときに感じる膝の違和感だといわれています。また、長時間歩いた後に膝が痛むなど、何らかの膝の痛みを感じるようになったら、注意が必要です。早めに病医院を受診するようにしましょう。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2008年2月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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